川っぺりムコリッタの紹介:2021年日本映画。フィンランドのヘルシンキを舞台にした映画『かもめ食堂』で知られる荻上直子監督。彼女のオリジナル脚本(小説化もされている)による新しい「つながり」の映画がこの『川っぺりムコリッタ』だ。脚本にほれこんだという松山ケンイチが孤独な青年・山田を演じ、ちょっと迷惑な隣人にムロツヨシ、アパートの大家に満島ひかり、他にも吉岡秀隆や緒形直人、柄本佑、江口のりこらが脇を固める。また、薬師丸ひろ子が声だけの出演をしているのも話題だ。
監督・脚本:荻上直子 出演:松山ケンイチ(山田たけし)、ムロツヨシ(島田幸三)、満島ひかり(南詩織)、吉岡秀隆(溝口健一)、江口のりこ(中島)、柄本佑(堤下靖男)、田中美佐子(大橋)、緒形直人(沢田)ほか
映画「川っぺりムコリッタ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「川っぺりムコリッタ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「川っぺりムコリッタ」解説
この解説記事には映画「川っぺりムコリッタ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
川っぺりムコリッタのネタバレあらすじ:起
富山のとある海辺の町。前科者の山田は、イカの加工工場で働くためこの町へやってきました。社長の沢田は熱血漢で、あまり人と関わりたくない山田にとって苦手なタイプ。そんな社長に紹介されたアパートは築50年ほどのハイツムコリッタです。川辺にあるボロの平屋アパートで、南という女性が切り盛りしています。
風呂上がりに牛乳を飲むという至福の時間を過ごしていると、ドアがドンドンと叩かれ隣人の島田がやってきました。給湯器が壊れてしまい風呂を借りたいという島田を何とか押し返しますが前途は多難です。
アパートにはもう一組、溝口という父と息子が住んでいました。墓石の訪問販売員をしている溝口は、宗教の勧誘のような怪しい口上で息子と家々をまわり胡散臭がられています。
初月給まで金がなく、山田はおにぎりすら買うことができません。帰宅するとどこかの市役所から封書が届いており、幼いころに離婚して疎遠になった父親が死亡したので遺骨を引き取りに来てほしいとのことでした。自分の生活すらままならないのに…と山田は荒れ、その後はひたすら寝て空腹をやり過ごします。そこへ窓側から強引に島田が声を掛け、庭で栽培しているきゅうりとトマトを置いていきました。それにかぶりついて飢えをしのぐ山田。
待ちに待った給料日でしたが、中身はそれほど多くありません。社長から塩辛をもらい、山田は米と野菜を買って帰ります。風呂に入り牛乳を飲む。そして炊きあがった米の匂いをかぎ笑顔になる山田。ごはんと味噌汁、塩辛だけの食事をしようとしていると、島田が野菜を手に窓から入ってきました。野菜のお礼はお風呂でいいよ、と強引に風呂に入る島田に山田はなすすべもありません。
夏の暑さに耐えかねた山田が川辺を散歩していると、溝口少年が鍵盤ハーモニカを演奏しています。そこには電話などの廃品が積み上がっていて、山田はまだ使えそうな扇風機を拾って帰ります。毎日やってくるようになっていた島田は、山田に庭での野菜づくりを手伝わせます。
お金がないので自給自足をしているという島田の畑にはたまに無口な友だちのガンちゃんも手伝いにきています。ガンちゃんが近くの寺の坊主だと知ると、山田は父親の遺骨のことで悩んでいると島田に打ち明けます。「どんな人間でもいなかったことにしちゃいけない」と、島田は遺骨を引き取るようすすめるのでした。
川っぺりムコリッタのネタバレあらすじ:承
市役所社会福祉課の堤下は、引き取り手の来ない遺骨がたくさん置いてある部屋に山田を案内します。火葬に立ち会ったという彼は、遺体の状態が悪く表情などはわからなかったが喉仏が立派だったと言って見せてくれました。
遺骨を持ち帰った山田は、タバコを片手にアパートの花壇に水をやっているおばあさんと会話をします。南のところに家賃を払いに行った山田は、決められた日にきちんと払ったことを褒められお菓子をもらいました。
山田の家で島田は遺骨に手を合わせ、いつものようにごはんと塩辛を好きなように食べています。大家の南について山田がたずねると、5年位前に旦那さんをガンで亡くして以来、女手ひとつで娘を育てているといいます。いまだに死んだ旦那さんを一途に思っているからあのひとはダメだと島田は断言します。
その夜、山田は遺骨の箱が気になって眠れず、仕方なく父の遺品を取り出して眺め始めます。父の携帯電話の電源を入れると、同じ電話番号にばかり電話をかけていたことがわかりました。公衆電話ボックスに行きその番号にかけてみると、それは『いのちの電話』でした。山田はあわてて電話を切ります。
翌日、沢田社長に5年、10年コツコツ働こうと言われた山田は珍しく「意味あるんですか?」と口に出してしまいます。「それは10年やった人にしかわからない」と社長は答え、以前より高級な壺入りの塩辛を持たせてくれました。
仕事帰り、川辺に座っていた山田に自転車で通りかかった南が話しかけます。ふたりでアイスを食べながら彼女は「妊婦を見ると蹴りたくなる」と物騒な話をします。でもギリギリ保ってる、と言うだけ言って去っていく南。
その日、山田が島田に先日会ったおばあさんの話をすると、その人は以前住んでいたオカモトさんでもう亡くなっていると言って震え上がります。夜、遺骨の箱が光る気がして怖くなった山田は、それを持って川に向かい遺骨を捨てようとします。でも背後に怖い顔をしたガンちゃんが立っていて、山田はあわててそれを持って帰ります。
翌日その話を島田にすると、砕いて粉にすれば犯罪にならないと教えてくれました。すると突然「いいにおい!」と言って島田は溝口家に入っていきます。そこでは溝口父子が高級な肉を使ったすき焼きを食べようとしていました。即座にマイ箸を取り出して食べようとする島田。一旦立ち去ったものの自室から椀と箸を持ってきた山田。
そこへ今度は南と娘のカヨコもやってきて「家賃6ヶ月滞納してる溝口さんがすき焼きねー」と言いながら食事に合流します。溝口はあきらめ、結局6人は楽しそうに食卓を囲み、山田が会ったオカモトさんの話で盛り上がるのでした。
川っぺりムコリッタのネタバレあらすじ:転
その日、いつもごはん時にやってくる島田が来ません。翌日畑仕事をしている島田に話しかけると、彼は山田の前科のことを聞いてしまい、何をしたのか山田に聞いてきました。人をだましてお金をとったと答え、山田はそっとその場を立ち去ります。
職場で具合が悪くなった山田を社長が心配して飲み物を持ってきてくれました。前科のことを気にしていると話すと「いま辞めんな。辞めたらふりだしに戻っちまう。絶対いま辞めたらダメだ。これは社長命令だ」と熱く励ますのでした。
父親が自殺だったのか気になった山田は『いのちの電話』に電話してみます。その答えは出ませんでしたが、電話の向こうの女性は、子どものころ空中を漂う金魚を見た、それは空に昇っていったので魂だったのかもしれない、と話してくれました。
今度は火葬場で仕事中の堤下をたずねます。彼は山田を父親が亡くなったアパートに案内し、ていねいに暮らしていたようで自殺ではないと思います、と言い、飲みかけの牛乳が置いてあったそうで風呂上りだったのでしょうか、と付け加えました。それを聞いた山田は「やっぱり父でした」と納得します。
帰宅した山田に南が「もう帰ってこないかと思いました」と声を掛けると、「ここしか帰るところないし」と山田は答えます。
深夜に大きな地震が起き、骨壺が落ちて割れてしまいました。あわてて骨を拾うと、ちょうど洗って干してあった高級塩辛が入っていた壺にとりあえず入れておきました。
ある日山田が帰宅すると、死んだ金魚の入った金魚鉢を持ってカヨコが座っていました。溝口父子と4人で川原に金魚を埋めてお墓をつくっていると、金魚が宙を泳いでいる、死んだ魂は金魚の姿で泳いでいくと溝口が話します。すると急に廃品の電話が鳴りました。溝口少年が急いで受話器を取ると空を指さします。
その方向には巨大なイカのバルーンが浮かんでいました。以前からカヨコとそこで宇宙人を呼んでいた溝口少年。ふたりはそれを宇宙人だと思っているようです。とそこへ突然島田がやってきて、イカに向かって「連れてってくれー、オレも連れて行ってくれー」と叫び泣き崩れます。
川っぺりムコリッタの結末
後日、山田の入浴中に何事もなかったかのように島田が入ってきます。扉の向こうで謝る島田。彼にも話したくない過去があるようです。山田は島田を受け入れ、先にごはんを食べててくださいと声を掛けると島田はうれしそうにひとりでごはんをよそいます。しかし、塩辛の壺に入っていた骨を見て叫び、その声を聞いた山田はおかしくなって笑うのでした。
ある日、町を台風が襲います。山田たちは土のうを積んだりして備えますが、島田は怖がって山田の部屋で縮こまっています。川原のホームレスを心配しながら一夜を過ごす山田と島田。怖いときは九九の七の段を逆から唱えると怖くなくなるんだ、と山田は教えますが島田はうまく言えません。
朝になり嵐は過ぎ去っていましたが、畑の作物は倒れてしまっていました。
山田は思い立って、川原で遺骨を砕き始めます。そこにやってきた南に、自分は幸せを感じてもいいのかと山田はつぶやき、やがて泣いてしまいます。南は「いいんだよ」とそっと山田を抱きしめ、「お葬式をしましょう。お父さんの」と言ってくれました。
溝口から借りた黒のスーツを着た山田は、ハイツムコリッタの人々と住職姿のガンちゃん、そして台風を生き延びたホームレスの男性とともに夕暮れの川辺を練り歩きます。溝口少年の鍵盤ハーモニカとホームレスのウクレレの演奏に乗って、山田は遺骨を砕いた粉をまいていくのでした。
以上、映画「川っぺりムコリッタ」のあらすじと結末でした。
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