きみの瞳が問いかけているの紹介:2020年日本映画。盲目の柏木明香里と元キックボクサーの篠崎塁は、運命的な出会いを果たしながらも、それぞれ深い過去の傷を背負っていた。互いの関係が進展していく中で、知り合う前の記憶が蘇り、互いに共通する過去と対峙することになります。チャールズチャップリンの「街の灯」をリスペクトしたとされる韓国の映画作品「ただ君だけを」を原作にし、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」で知られる三木孝浩監督が手掛ける意欲作品。
監督:三木孝浩 出演:吉高由里子(柏木明香里)、横浜流星(篠崎塁)、やべきょうすけ(原田陣)、田山涼成(大内会長)、野間口徹(尾崎隆文)、岡田義徳(坂本晋)、奥野瑛太(久慈充)、般若(金井)、森矢カンナ(麻衣子)、三船海斗(レン)、坂ノ上茜(津ノ森恵子)、町田啓太(佐久間恭介)、風吹ジュン(大浦美恵子)、ほか
映画「きみの瞳が問いかけている」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「きみの瞳が問いかけている」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
きみの瞳が問いかけているの予告編 動画
映画「きみの瞳が問いかけている」解説
この解説記事には映画「きみの瞳が問いかけている」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
きみの瞳が問いかけているのネタバレあらすじ:起
自宅を出て、軽いフットワークでバイトの面接先へ向かう篠崎塁(横浜流星)でしたが、あいにくの雨に見舞われ、予定の時間を過ぎてしまいます。しかし親切な現場監督の甲斐あってか駐車場の警備を住み込みで任され、前住者が居たという部屋へ案内を受けます。
そこへ見知らぬ女性・柏木明香里(吉高由美子)が差し入れと共に訪ねてきますが、彼女はどうも盲目らしく、ここに以前いた老人とよくホームドラマを見るのが日課なんだと言います。また、事付けとしてキンモクセイの世話は欠かさぬよう言い残して去ろうとしますが、雨が強まってきており、塁と明香里は「Last Love」のドラマを見ることになります。
明香里はコールセンターの仕事をしています。塁はかつて所属していた大内キックボクシングジムの会長である大内(田山涼成)の元でキックボクサーへの復帰を目指していました。そして、明香里は休みの日に「椰子の実」を口ずさみくつろいでいると、浴室の排水溝のつまりで増水したタイルに足を滑らせ転倒してしまい足にダメージを負ってしまいます。
ドラマを見ていた塁と明香里。明香里は目が見えない分、鼻は効くようで、塁の運動量や靴の消耗具合を熱気で感じていました。ドラマに出演する麻衣子(森矢カンナ)、そしてレン(三船海斗)の劇中の会話"後悔しない”のセリフに「あなたを好きになれてよかった」と画面に向かって発する明香里。ドラマの登場人物についてイヤリングや服など装飾品の様子を塁から手ほどきを受けながら感情移入していくうち、塁のいで立ちや年齢について興味を持つようになり、「ネズミ年」との塁の返答に48歳か36歳だと思い込みます。
帰り際、塁は足を負傷して足取りの重い明香里を察しておぶって送ろうとするも「後悔するよ」と豪語する明香里をしょって歩き、彼女の住まい付近に到達すると、階段が入り組んだ先にマンションがありました。
きみの瞳が問いかけているのネタバレあらすじ:承
無事に玄関前まで見送った塁は、明香里からコンサートの付き添いを頼まれ、公演中のヴァイオリン奏者の様子や場内の雰囲気など、塁からの説明を聞きながら時間を過ごします。
次に、一度は行ってみたいという焼き肉店へ。塁から取り分けを受けるも盲目の明香里は受け損ね、服の胸元を汚してしまいます。話は弾むものの塁は過去については語りたがらない様子で「しゃべらなくても何食べたか分かるでしょ」との拒否反応の言葉に「私は今日食べたものがわかりますもんね」とトイレに駆け込む。そして、塁は帰り際にアントニオ・篠崎塁だと本名を明かし、本当の年齢は24歳だと言います。
明香里は自身が務めるコールセンターの上司から呼び出されて出向くと、アクセサリーをプレゼントされました。前回渡したコンサートチケットのプレゼントと合わせて食事でもしながら感想を聞かせて欲しいと、フレンチレストランへの誘いを受けます。
定食屋で沈黙が続いている大内会長、コーチと塁の3人。コーチの尾崎隆文(野間口徹)が我慢大会じゃないぞと口を開くと、塁は、実は以前地下格闘場で活動をしていて、闇金の取り立てとして雇われているときに検挙されたことを告白し、表舞台での挑戦に専念することを誓います。
明香里が自宅の玄関前に到着すると上司が待ち伏せており、仕事の相談について自室でもみ合いになりますが塁によって阻まれ、その後いい雰囲気になる2人。塁はたびたび明香里のもとを訪れるようになり、塁お手製の日曜大工によって入り口付近の段差は解消され、日避けのシートも光が差し込む透明感のあるものへと改修されます。
明香里の部屋の机に、点字で刻まれた「ロミオとジュリエット」のセリフ”きみの瞳が問いかけている”の名のもと、”私の瞳をよく見て”と両手で塁の顔の感触を確かめる明香里は、採光に包まれながら塁とキスを交わすのでした。
きみの瞳が問いかけているのネタバレあらすじ:転
キックボクシングの試合が終わると、控室へと続く通路付近には幼馴染で半グレ集団のリーダー佐久間恭介(町田啓太)が、出所してまもない塁に会いに来ており、地下格闘に誘いますが、塁は「過去には戻れない」と断ると「またな」と言って去っていきます。
自宅にいる明香里は点字で書かれたマニュアルを広げ、日々のトレーニングで疲労した塁にマッサージをすることに。退職後の次の職にもなるとの意気込みに、塁は「ファイトマネーを稼いで、足りない分は配達のバイトで何とかするから、テラスでくつろいだり趣味に没頭していていい」と抱き寄せます。
塁は、いっそうキックボクシングの道に打ち込み、配達の仕事も、時折通る明香里のマンション付近の階段もトレーニングの一環になっていきます。そして、明香里の部屋に子犬を招き一人の時間も実りのあるものに。子犬は、すくすく育って欲しいという想いから"スク”と名付けられます。
ある日、塁が引き取られて育った修道院を訪れ、母との最初の記憶で最後になったという浜辺で”自分だけが生き残ってしまった”という悔みに、シスターの大浦恵美子(風吹ジュン)から「過去の身は清められた」という祝福を受けます。そして修道院の子供たちが作ったというポプリの袋を渡されます。
明香里は喪服のような全身黒ずくめの姿で「特別な場所へ案内する」と言って出掛けます。バスや電車で「椰子の実」を口ずさむ明香里に、塁も同行し、明香里の両親の墓がある霊園へと到着します。明香里は以前話した”大切な人が出来ればここに連れてくる”という約束のもと、塁を両親に紹介します。そして塁は、亡くなった両親の死因を尋ねます。
それは、4年前のクリスマスの日。家族を乗せて明香里が車を運転していると、ビルの隙間から火だるまになって身投げする人間に気をとられます。それを避けようとした前方の車と接触し、明香里の車は横転。それが原因で視力を失ったとのことでした。
そして塁が墓標の日付けを見ると、それと同じ日の出来事を思い出します。それは、借金取り立てのボディガード時代に、家族の安否を気遣いガソリンをかぶって身投げした債務者の坂本普(岡田義徳)のことでした。塁は自分のせいで明香里が視覚を失ったと苛み、薄暗いトレーニングジムでサンドバックに打ち込み、途方に暮れます。
明香里もまた自炊の最中に立ち眩みで病院に搬送され、診断結果は網膜剥離とのことで、消灯した自室で瞳に電灯をあてがい途方に暮れるのでした。治療について明香里は受け入れることが出来ませんでした。
そして、塁は玄関ドアに佐久間恭介率いる半グレ集団「ウロボロス」のマークがスプレーで描かれていたこともあり、手術代を稼ぐために、一度だけ出場して欲しいという恭介の申し出のもと、地下格闘技への参加を決意します。そして、夜道を歩いていると、徐行しながら近づいてくる乗用車のフロントガラスにはサングラス越しに素顔が見え隠れする恭介の姿がありました。
きみの瞳が問いかけているの結末
塁は、過去との決別について修道院のシスターに尋ねると「以前、浄化されたはずですよ」との答えに「全然できていないんです」と会話を交わし、過去は変えられないけれど大切な人のために自らを捧げることが出来ればと、奮起を促されます。そして、修道院の子供たちが作っているというマリア像のレリーフが掘られたオルゴールの制作に乗り出しているとの吉報をシスターから聞かされます。明香里も、手術が成功して瞳が完治すれば塁の姿が分かると自分に言い聞かせ、院内の車いす生活でも看護師の呼びかけにも協力的です。
塁はあと一試合でチャンピオンになれるというところで、原田コーチの説得も退け大内のジムを去ります。自宅の、スクと塁、明香里のみんなが写った思い出の写真を全て燃やし、地下の賭博場へと向かいます。
しかし、恭介の言っていた他連合との抗争というものはなく、より強い者を召集した闘技場の賭けの中で、塁は最初から敗者として選ばれた罠だったのです。さらに、対戦相手は当日になると急遽、屈強な外国人へと変更され、試合では苦戦を強いられますが、塁は見事勝利を収めるのでした。試合結果に自信のあった恭介は、予想外の展開に対戦相手のリーダーからも信頼を損ね孤立してしまいます。場内がどよめく中、赤札のハズレ券が宙に舞います。
塁は公衆電話から、ファイトマネーの半分を明香里の両親へ、残ったもう半分を債務者坂本の妻へ送ったとに告げ、ホッと胸をなでおろし外に出ると、すぐ背後から走ってきた乗用車の轢き逃げに遭います。そして車から降りてきた男に刃物で背中を数か所刺され、うつ伏せのまま重体で救急車で運ばれ、消息が掴めない行方不明の状態となるのでした。車の後部席には恭介の姿があり、薄ら笑みを浮かべていました。
明香里は入居期間を過ぎた今もマンションに住み続けましたが、塁宛てに修道院からの小包が届くのみで、彼が帰ってくる様子はありませんでした。そして、自然豊かな郊外のアトリエ風の住居へと移ることにします。そこで陶芸に打ち込み、塁との時間で手に入れた両手に残る素肌の感触を頼りに、男性の胸像を完成させます。
数か月後、明香里は配達業の傍ら、店長として雑貨店「SHOPアントニオ」をオープンし、犬のスクと共に愛車で行き来します。また、明香里はマッサージの技術も得たことで、療法士のボランティアとして診療所を訪問する中、病室で治療をしながら、お手製の茶器を贈ったりして老人の世話番をしていました。
明香里はその奥に新しい患者が搬送されていることに気付きマッサージを施しますが、その人物は衰弱して筋肉も衰えているようです。まだ目が完治していない明香里には、そこにいるのが塁だとは分かりませんでした。塁もまた、別れを決心しており、彼女に声をかける余地はありませんでした。
SHOPアントニオに入った塁は、店内の配列棚からキンモクセイの木を見つけ、店員の津ノ森恵子(坂ノ上茜)の手ほどきのもと購入します。津ノ森が梱包をしている間、塁はひとつの箱を発見します。そのマリア像のレリーフで掘られた箱を開けると「椰子の実」のオルゴールの音色が響き渡り、塁は店員の心配をよそに感慨にふけり、涙を流すも、しばらくして我に返ったのか、品物を受け取って店を出ていきます。
そして塁と明香里は、市街地の並木道ですれ違いざまにぶつかり、倒れた塁を彼と分からず起こす明香里でしたが、激しく吠え続ける犬のスクも顧みず店へと戻ります。先程、キンモクセイが売れたと報告する津ノ森。購入客が「椰子の実」の曲に涙を流していたという様子を知り、松葉杖ついていたか問いただした明香里は、あの時、療養所にいた人物が塁だということを確信し、後を追います。しかし、もうそこには塁の姿はなく、消息が途絶えたことに、オルゴールを抱えたまま並木道で立ちすくんでしまいます。
海辺で「椰子の実」を口づさみながら海水へと入っていく塁。そこへ塁の名前を叫ぶ声がして振り向くと、車から降りてきた明香里の姿が。そこには愛犬スクの姿もありました。光の差し込む明香里のほうへ歩み寄る塁に、「私の瞳をよく見て」と両手で顔を覆い「一緒に帰ろう」と言うのでした。
以上、映画「きみの瞳が問いかけている」のあらすじと結末でした。
「きみの瞳が問いかけている」感想・レビュー
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とても感動しました。何より吉高由里子さんの演技がすごく、とても見入ってしましました。痛めつけられるシーンもかなりありましたがとても心揺さぶられる映画でした。
勘違いから始まる出会いから良かった。言葉は少ないけれど好きな気持ちは伝わってくるし、途中、悪い仲間が出てきて目を背けたくなるようなシーンもありましたが、全体的によくできている映画でした。吉高由里子の演技がすごく自然でよかった。