MONSOON/モンスーンの紹介:2020年イギリス,香港映画。ボートピープルとしてベトナムを離れた主人公が、30年振りに生まれ故郷を訪れるロードムービー『MONSOON/モンスーン』。監督・脚本は、自身も子どもの頃にベトナムからイギリスに移った経験をもつホン・カウだ。アイデンティティを探し求める男性・キットを演じるのは、イギリス人の父とマレーシア人の母を持つヘンリー・ゴールディング。彼と淡い恋愛関係となるアフリカ系アメリカ人男性ルイスを、父親がベトナム戦争に海軍として従軍した経験を持つパーカー・ソーヤーズが演じている。
監督・脚本:ホン・カウ キャスト:ヘンリー・ゴールディング(キット)、パーカー・ソーヤーズ(ルイス)、モリー・ハリス(リン)、デヴィッド・トラン(リー)ほか
映画「MONSOON/モンスーン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「MONSOON/モンスーン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
MONSOON/モンスーンの予告編 動画
映画「MONSOON/モンスーン」解説
この解説記事には映画「MONSOON/モンスーン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
MONSOON/モンスーンのネタバレあらすじ:起
サイゴン(現ホーチミン市)を訪れたキットは、車やバイクが行き交う騒々しい街に面食らいます。30年振りにベトナムを訪れたキットの目的は、両親の遺灰を散骨する場所を見つけることです。
翌日、いとこのリーの家を訪ねたキット。ベトナム語を覚えていないキットは、英語が話せるリーが頼りです。おみやげに英国王室御用達のビスケットやウィスキーを渡すとリーと母親は微笑みますが、水をろ過する水筒には困惑の表情を浮かべていました。
バスツアーに参加して市内を見て回るキットですが、経済が発展し大都会へと変貌したサイゴンの街に違和感をおぼえます。
その夜、キットはネットで知り合った男性・ルイスとバーで落ち合います。最低限のプロフィールを交換したふたりはその後、キットの部屋で一夜を共にします。
ある日、キットはリーの経営する携帯電話ショップを訪れます。リーは、キットの母親から借金をしていると話し、そのことを負い目に感じているようでした。キットは、後日兄が家族を連れてやってきて一緒に散骨すると話します。
そして話題はキットたち家族がベトナムを出国した当時のことになり、キットは自分だけ出国のことを知らされていなかったと振り返ります。ある日、目覚めたらボートで漂流しており、何日も海の上をさまよったと…。リーは、キットの父がひとりで逃げようとしてつかまり、結局家族で逃げるしかなかったのだと言いました。
夜、ホテルに戻ったキットは兄・ヘンリーとスカイプで通話します。サイゴンで自分は観光客のように浮いていること、リーに会った話などをして通話を終えると、ひとりバルコニーで街を眺めながらビールを飲むのでした。
MONSOON/モンスーンのネタバレあらすじ:承
ルイスに聞いたギャラリーにやってきたキットは、アートツアーを主催する女性・リンに誘われます。そこへルイスが現れ、キットは彼とギャラリーをあとにします。アパレル製造の仕事をしているルイスにキットが、労働力が安いから?と意地悪く質問すると、経済成長に貢献してるのさ、とルイスは笑います。
初対面のとき、ここには初めて来たとウソをついていたキットは、実はサイゴン生まれで6歳のときに離れたボート難民だったことを告白します。ルイスはアメリカ人で母親は今でも向こうにいると言い、キットの父親のことをたずねます。
キットの父は当時南の役人の下請け仕事をしており、再統一後に嫌疑をかけられこの国を出ざるを得なかったのだとルイスは理解しました。そして自分はベトナムに来るとき、アメリカ人であることを隠し、カナダ国旗のバッジをリュックにつけていたと言います。人々の目が怖かったと話すルイスでしたが、バッジはもう外したといいます。
その夜、ふたりは再びキットの部屋で愛し合います。ルイスが目に留めた木箱には、母の遺灰が入っているといいます。来週兄が父の遺灰を持ってやってくるので、この国のどこかで散骨するつもりだと言うキット。でも、親はベトナム時代のことを何も話さず、住んでいた家も解体されるのでこれから散骨場所を探さなければならない、とキットは困っていました。とりあえず、両親が生まれたハノイへ行ってくるとキットが言うと、ハノイは昔のままで美しいから家も残っているかも、とルイスは励ますのでした。
翌日、リーに昔住んでいた解体中の家に連れて行ってもらったキットは、過去の記憶を探っています。昔の写真を父に燃やされてしまったキットは、リーに自分たちの写真を見せてほしいと頼みます。母にきいてみる、と答えたリーは、そのあとよくお参りした寺院にキットを連れていきます。ここだけはあのときのままだと言うリーによると、ここに祀られているのは船の女神だそうです。
そして、なぜ長い間戻って来なかったのかとキットにたずねます。親に敬意を払っていたと答えたキットにリーは、「親孝行だな」と言うのでした。
ハノイに行くキットを駅まで送ったルイスは、「誤解してほしくない」と声を掛けます。自分は戦争に勝って威張っている“ヤンキー”とは違うと言うと、キットは微笑んで応えるのでした。
MONSOON/モンスーンのネタバレあらすじ:転
サイゴンから列車で38時間かけてハノイへ向かったキットでしたが、親がかつて住んでいた家を訪れても(ここだ)という気持ちになれませんでした。夜、ホテルの部屋でキットは兄と通話します。ハノイに来ていることを伝え、疲れたと訴えるキット。そして、親のおかげで兄弟ふたりとも大学に行かせてもらったのに、兄貴はラップにハマってしまったと笑います。
翌日、リンのアートツアーに参加したキットは、彼女と夕食を共にします。彼女の実家はハノイで蓮茶の工房を営んでおり、彼女に跡を継がせたがっているといいます。次の日、リンと工房を訪れたキットは、彼女の家族に混じって作業を体験します。
輪になって座る彼らの中にはたくさんの美しい蓮の花が置かれ、皆せっせとおしべを取っていきます。手を動かしながら、キットはなぜ移住先にイギリスを選んだのか質問されます。母が上品な女王陛下のことが好きだったから、と答えリンが通訳すると、皆が笑って和みました。
作業を終えて工房を出たキットに、「ご両親は帰りたかったはずよ」とリンが言います。高級品である蓮茶を持たせてくれたリンは、自分の教育のために親に負担を掛けてしまったこともあり、自身のキャリアについて悩んでいると話すのでした。
サイゴンに戻ってきたキットは、ライトアップされた都会の夜景を眺めながらホテルに帰り、ソファに横たわりました。
MONSOON/モンスーンの結末
キットはルイスの部屋をたずねます。中に招き入れられたキットはリンにもらった蓮茶を渡し、ハノイでは特に成果がなかったこと、そしてベトナムに来る前に仕事をやめてヒップホップのダンス教室に通ったことなどを話します。するとルイスが、父親が銃で自死した話を始めました。
戦争でベトナムに来ていたルイスの父親は、帰国後に医師のカウンセリングを受け、人を殺したいと思うかという質問にNoと答えて除隊し、普通の生活に戻ったのだといいます。でも3年5ヶ月前に死んでしまった…。ルイス自身は今、首のあたりの痛みに悩まされているらしく、キットはこの国の湿気のせいだと答えるのでした。
別の日。リーと待ち合わせたキットは、彼から子どもの頃の写真を受け取ります。その中には、先日一緒に行った寺院で撮ったものもありました。あとでゆっくり見ると言って写真をしまうと、リーは浮かない顔をしています。そして意を決したように、今は借りたお金を返せない…と口にします。
母が貸したお金であの店を開店させたことを知り、キットは返さなくていいと言います。「じゃあ、いいのか?」と反応するリー。そして、あの頃はいつどこに移住できるか全くわからなかった、と言います。自分たちはキットの家族の直系ではなかったので移住が認められなかった。だからお金の力で、リーはキットの兄に、リーの母は伯母になりすまそうとしたと言うのです。
でもそれは叶わず、代わりに店を手に入れたということのようでした。ハノイで家は見つかったがそこは散骨の地ではないというキットに、「君は辛そうだ」とリーは言います。そしてこう続けました。「命をかけて逃げた親を 君は連れ戻した」
ひとり、ホテルの部屋に戻ったキット。外は雨が降っており、窓を開けると雷鳴のような音が響きます。
後日、空港にて兄ヘンリーの家族を出迎えるキット。甥っ子ふたりは元気いっぱいです。
夜。キットはルイスとクラブに来ています。フロアで踊ったあと、キットは飲み物を注文しにカウンターへ向かい、ビールが出てくる間、力なくうつむいていました。やがてルイスがやってきてビールを受け取ると、その場でふたりはキスをし、それから階段を上がって屋上へと向かいます。サイゴンの夜景を見ながら微笑み合うふたりは、そこでビールを飲むのでした。
以上、映画「MONSOON/モンスーン」のあらすじと結末でした。
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