ムーンライト・シャドウの紹介:2021年日本映画。吉本ばななが1988年に発表した連作短編集『キッチン』収録の同名短編小説を、主演に本作が長編映画初主演となる小松菜奈を迎えて映画化した作品です。恋人の突然の死と未だに向き合うことのできない主人公はえず、深い哀しみに打ちひしがれるさつきは、満月の夜の終わりに死者ともう一度会えるかもしれないという不思議な現象『月影現象』に惹かれていきます・・・。
監督:エドモンド・ヨウ 出演者:小松菜奈(さつき)、宮沢氷魚(等)、佐藤緋美(柊)、中原ナナ(ゆみこ)、吉倉あおい(蛍)、中野誠也(充)、臼田あさ美(麗)ほか
映画「ムーンライト・シャドウ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ムーンライト・シャドウ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ムーンライト・シャドウの予告編 動画
映画「ムーンライト・シャドウ」解説
この解説記事には映画「ムーンライト・シャドウ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ムーンライト・シャドウのネタバレあらすじ:起
ある秋の日。女子大生のさつき(小松菜奈)は、すすきが生える河原を歩いていました。時を同じくして、等(宮沢氷魚)という男もこの河原を歩いていました。等は枯れた枝に鈴がついているのを見つけ、それを手に取って再び歩き出しました。この鈴の音をさつきが聴いたことが、さつきと等の出逢いのきっかけでした。
さつきと等は瞬く間に恋に落ち、交際をスタートしました。等はさつきに拾った鈴をプレゼントしました。等はさつきに、高校生になる弟の柊(佐藤緋美)を紹介しました。柊はゆみこ(中原ナナ)という女性と交際しており、さつきら4人はすっかり意気投合して楽しい時を過ごしていました。
柊は料理を振る舞うのが好きで、さつきらに手作りのロールキャベツをご馳走してくれました。さつきがなぜ料理を作ってもてなしてくれるのか尋ねてみると、柊は「食べる姿を見ていると、その人がよく理解できる」と語りました。
さつきら4人は食卓を囲みながら、さつきと等が出逢った川について語り合いました。等が以前にかつて井戸掘りをしていた充(中野誠也)という老人から聞いた話として、さつきらの住む地域には地下に幾重もの川が張り巡らされており、地上の川はこの街の川のほんの一部に過ぎないということでした。
やがて柊はひとり眠りこけてしまい、等は柊は一度眠るとなかなか起きてくれないと、さつきらに語りました。
ムーンライト・シャドウのネタバレあらすじ:承
ゆみこはさつきに“月影現象”という不思議な現象について語り始めました。それは満月の夜の終わり頃、いくつかの条件が重なった時に死者に会うことができるかもしれないというものでした。
4人はもし“月影現象”が起きたら誰に会いたいかと語り合いました。等は中学生時代にお世話になった恩師、ゆみこは両親の結婚に反対していた母方の祖父母に会いたいと語り、柊はこの現象など信じていないとして「会いたい人はいない。目の前にいるから」と語りました。
ある時、さつきはゆみこと一緒に川を歩きました。ゆみこはセーラー服の襟を立て、耳をすまし始めました。ゆみこが言うには、襟を立てて耳をすませて音を聞くと周りの雑音がだんだん気にならなくなり、やがて身体の中に音の粒が溜まり、身体中は音で満たされていくとのことでした。
さつきら4人にとって、4人で過ごす時間はかけがえのない大切な時間でした。
ある日、さつきの大学での友人・蛍(吉倉あおい)が海外留学することになりました。蛍は自分が不在の間、住んでいるマンションを好きに使ってもいいと持ちかけました。さつきは等にこの部屋で一緒に暮らそうと呼びかけましたが、等は1年後にと断りました。
それから、さつきと等は川にかかる橋の上で別れましたが、さつきにとってこれが等と今生の別れになるとは夢にも思いませんでした。
さつきが等の訃報を知ったのは、柊からかかってきた電話でした。ゆみこが等の家を訪れた際、柊が眠りこけてしまったため、等が柊の代わりにゆみこを送ることにしたのです。そして等とゆみこは交通事故に遭ったのです。さつきと柊はあまりの突然の別れを受け入れることはできませんでした。
ムーンライト・シャドウのネタバレあらすじ:転
この頃からさつきは「息の仕方」が分からなくなり、川のそばをジョギングするようになりました。そんな時、さつきは河原で黒い服を着た謎の女・麗(臼田あさ美)と遭遇しました。
一方の柊はゆみこの着ていたセーラー服を身にまとい、ゆみこが生前していたように襟を立てて耳をすまし、音を身体に取り込もうと試みていました。さつきは息の仕方を取り戻すべく、柊と共に充に会いに行くことにしました。
この街はかつて戦争があった頃、井戸水が燃え出すということがありました。人々は石油が湧いたとぬか喜びしましたが、実際は軍の飛行場から燃料が漏れだして井戸水を汚染していたのでした。充は汚染されていない水を得るために更に深く井戸を掘ったことを回想しました。この充の会話を、あの麗が録音していました。
麗は「声を集めている」といい、さつきにも何か声を出してみないか、何を話してもいいし話さなくてもいいから自分の声に従ってと語りかけました。さつきはマイクに向かって「鈴の音が耳を離れないんです。鈴がすべての始まりで。だから、あの音には等と過ごした私たちの時間が全部詰まっている。すべての昼と夜、晴れも雨もくもりも雪も…」と語りました。
柊はさつきに、両親がさつきに会いたがっていることを伝えました。さつきは気が向いたらと答えました。
ムーンライト・シャドウの結末
さつきと柊は麗こそが“月影現象”へといざなう“案内人”なのではと思い、彼女の元へと向かいました。すると麗は明後日の朝、陽が上るまでの時間に“月影現象”が起こるだろうと語りました。柊は等とゆみこの死の原因は自分にあるとして消極的でしたが、麗は「会いたいなら来るしかない」と呼びかけました。
やがて柊はひとり先に帰り、さつきは麗と会話を交わしました。さつきは等のことについては全部分かったつもりでしたが、等がいなくなってから改めてまだまだ知らないことが多かったことに気付いていました。
あの日、等がさつきとの同棲を断ったのは、かねてから柊が心のバランスを崩しており、彼を気遣ってのことでした。柊がゆみこと付き合うようになってから、少しずつ柊も調子が良くなりつつあったのです。
さつきはもっと等と一緒にいたかったと考えながらジョギングをしていました。ところが、帰宅すると等の形見の鈴がいずこへと消えていました。
その直後、さつきは高熱を出して倒れました。すると麗から電話があり、「もしかして風邪引いてる?」と声をかけられました。その直後、さつきの部屋に麗が上がり込み、体調が辛くてももしっかりしていれば大丈夫だと励ましました。
一方、ゆみこのセーラー服を洗濯していた柊は、いつの間にかセーラー服がなくなっていることに気付きました。そして迎えた“月影現象”の時間。体調の未だすぐれないさつきは麗と共に河原に向かいました。河原には柊の姿もありました。
そして遂にその時が訪れ、柊はセーラー服を着ているゆみこと再会を果たしました。柊はしばしの間ゆみこと楽しいひと時を過ごし、彼女が去っていくのを見守っていました。一方、さつきの耳元にはあの鈴の音が鳴っていました…。
…気が付くと既に朝を迎えていました。気が付いたさつきと柊は朝食を摂りに行き、そして別れました。麗はいつの間にか姿を消していました。さつきは今でも等のことを想いながらも、これからは前を向いて生きていこうという気持ちになりました。
さつきは二人の出逢いの場となった河原であの鈴の音を聴きました。明け方を迎える時、さつきは等との再会を果たしていました。さつきは等のことを思い出しながら、少し悲し気ながらも微笑んでみせました。
以上、映画「ムーンライト・シャドウ」のあらすじと結末でした。
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