七つの会議の紹介:2018年日本映画。池井戸潤原作の社会派エンターテインメント映画「空飛ぶタイヤ」に続く第2弾です。ぐうたら社員からのパワハラ告発をきっかけに社内に思わぬ波乱が巻き起こる。その先で待っていたのは巨大企業の深い闇だった…。野村萬斎、香川照之といった豪華実力派俳優が集結。会社や仕事の「正義」と、そこで働く「意義」とは何なのか、日本企業の在り方に問題提起をする「七つの会議」は、リコール隠しや内部告発をテーマにした、働く人全てに贈る究極の企業サスペンス映画です。
監督:服澤克雄 キャスト:野村萬斎(八角民夫)、香川照之(北川誠)、及川光博(原島万二)、片岡愛之助(坂戸宣彦)、音尾琢真(三沢逸郎)、藤森慎吾(新田雄介)、朝倉あき(浜本優衣)、岡田浩暉(佐野健一郎)、木下ほうか(田部)、吉田羊(淑子)、土屋太鳳(三沢奈々子)、小泉孝太郎(奈倉翔平)、溝端淳平(星野)、春風亭昇太(飯山孝実)、立川談春(江木恒彦)、勝村政信(加茂田久司)、世良公則(村西京助)、鹿賀丈史(梨田元就)、橋爪功(宮野和広)、北大路欣也(徳山郁夫)、ほか
映画「七つの会議」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「七つの会議」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「七つの会議」の予告編 動画
映画「七つの会議」解説
この解説記事には映画「七つの会議」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
映画「七つの会議」ネタバレあらすじ:パワハラと不可解な人事
飛行機や電車の椅子、パイプ椅子などを製造する都内にある中堅メーカー、東京建電の営業部では会議が行われていました。親会社ゼノックスの常務 梨田元就(鹿賀丈史)が背後で見守る中、東京建電営業部長の北川誠(香川照之)は今日も社員たちに檄を飛ばしていました。
花の一課と言われ東京建電の業績をけん引する営業一課の坂戸宣彦助課長(片岡愛之助)は、声高らかにノルマ達成の営業成績を報告していました。それに対して、営業二課の課長 原島万二(及川光博)は目標ノルマと営業成果を上げられず、北川から叱責を受けていました。
原島が北川から叱責を受けている最中、居眠りをしていたのが、営業一課の万年係長 八角民夫(野村萬斎)でした。通称「居眠り八角」とも呼ばれるぐうたら社員で、周りからはお荷物社員扱いされています。しかし北川は、居眠りをしていた八角を睨みつけるも、とがめることはありませんでした。八角はそれでも会社をクビにならない謎の男です。
会議でメンツをつぶされた坂戸はそれ以降、八角に対する風当たりが強くなっていきます。全くやる気のない八角に怒りを爆発させる坂戸。ある日、営業一課ではノルマ達成のため社員一丸で残業や休日出勤もしながら働こうという状況の中、八角が有給休暇を申請します。しかし坂戸がそれを拒否し罵る言葉を吐いたことで、八角はパワハラで訴えます。
トップセールスマンでもある坂戸への処分は大したことは無いと思われていたものの、パワハラ委員会での検討の結果、坂戸は人事部への左遷となってしまいます。それはパワハラの処分としては異例なほど重い不可解な人事でした。
坂戸に代わり、営業一課の課長に就任したのが原島でした。営業一課課長として営業部の会議に出た北川でしたが、坂戸の時のような営業成績は上げられず、北川から叱責されます。その叱責に怖じ気づいた原島が椅子に座った途端、パイプ椅子が壊れてしまいます。その様子を見た北川は、なぜか八角を睨んでいます。
営業一課の女子社員、浜本優衣は、社内環境改善のために、ドーナツの無人販売を企画し、創業1年のドーナツ屋から商品を仕入れて試験的に販売をしていました。しかし、売り上げの計算が合わない事があり、無銭飲食の犯人を八角だと疑っていました。そんな彼女には秘密があり、東京建電の経理部、課長代理の新田雄輔(藤森慎吾)と社内恋愛をしていました。浜本は近々「寿退社」の予定でしたがそれは建前上のことで、本当は新田との社内恋愛のもつれからだったのです。
新田という男は、常に営業部の粗探しをしています。元々、東京建電の経理部と営業部は犬猿の仲なのです。そのような背景から、新田は「ある疑惑」についてのネタを掴みます。その疑惑とは、八角が「ねじ六」という会社との飲食代に10万円以上使うという過剰接待をしていたことから、何か悪いことをしているのではないかと考えます。
映画「七つの会議」ネタバレあらすじ:ある疑惑
この「ねじ六」という会社は、その名の通りネジの製造をしている会社です。以前に、東京建電と取引をしていましたが、取引担当が坂戸に変わった際に、より単価の安いトーメイテック社製のネジに切り替えたため、ねじ六は契約を打ち切られていました。しかし坂戸が失脚し、八角が担当に変わると再び製造単価の高いねじ六と契約されていました。この単価上昇により、年間で1000万円を超えるコストアップとなっています。
この、不可解な契約を不審に思った新田は、上司である加茂田(勝村政信)に相談します。そこから、加茂田が上司である経理部長の飯山孝美(春風亭昇太)に、役員会で追求するように進言します。そして役員会で飯山がネジ六との不可解な契約の動きについて追求します。しかし、営業部長の北川に猛反発を受け、社長の宮野(橋爪巧)も不問とします。結局、飯山の意見は通らず、この責任を取らされる形で、新田は東北営業所に飛ばされることになります。無人販売のドーナツを無銭飲食していたのも新田だったことがその後明らかになりました。
東京建電カスタマー室長の佐野健一郎(岡田浩暉)という男がいました。佐野はかつて営業一課にいましたが、北川に気に入られなかったために、出世できずカスタマー室に異動させられていました。この経緯から、佐野は北川に強い恨みを抱いていました。佐野は顧客からのクレームが多く発生する椅子に関して、あるリストを作成していました。
坂戸のパワハラによる人事部への左遷、新田の東北営業所への異動に不審を抱いた原島と浜本は、社内に潜んでいる闇について調べ始めます。この際、カスタマー室長の佐野にも協力してもらおうとしている矢先、佐野も不可解な事情で小倉営業所へ飛ばされてしまっていたことを知ります。
映画「七つの会議」ネタバレあらすじ:八角の怪しい行動
浜本と原島は、これらの出来事に八角が関わっているのではないかという推測を立て、八角の行動を探り始めます。そして、八角のある事実を突き止めます。現在は、怠けてばかりいるお荷物社員として扱われている八角ですが、実は八角は北川と同期の仲でもあり、20年前までは評価の高い優秀な営業マンだったのです。
そんな八角の本当の姿を探ろうと、ある日、八角を尾行します。しかし、見知らぬ女性に会って何かを手渡していた以外に特に不審な行動は無く、住んでいる家もボロボロなアパートでした。八角とねじ六との癒着を疑っていた原島と浜本でしたが、何も出てこないことに悩みます。
そんな時、原島は、八角によってネジ製造の契約先がねじ六に戻されていたことを知り、さらに、営業会議中に壊れたパイプ椅子の事を思い出します。その椅子に使われていたネジに何か秘密があり、そしてそれはトーメイテック社製であることを突きとめたのです。そこで、坂戸が営業一課の課長になった際に取引を開始した「トーメイテック」製のネジについて調査することにしました。調べてみると、ネジの強度は基準値の半分しかなく、明らかな欠陥品であることが判明します。すると、ネジの強度検証現場に八角が現れます。
映画「七つの会議」ネタバレあらすじ:八角の正体と目的
実は八角は、この事実を公表してリコールをかけるために動いていた事を明かします。この計画の実行者は八角と、東京検電社長の宮野和宏、上司の北川たちでした。
ネジの原価を下げて営業成績を上げるために、欠陥品のネジを製造していたトーメイテックとの契約をした元営業一課課長の坂戸に責任を取らせる形で、パワハラという別の理由で異動させたり、ネジ製造の契約を追求しようとしていた新田を排除したり、顧客からのクレームによってネジに疑念を抱いていたカスタマー室長の佐野も異動させたりと、一連の不可解な出来事はすべて八角たちが動いていたものでした。社内の実態やリコールによる影響を把握した後に、今回の事件を世間に公表し、リコールの発表に繋げるというのが八角の狙いでした。
しかし、社長の宮野は今回の件を隠蔽しようとしていました。八角も騙されていたのです。社長としての責任を追及されることや、会社の存続に関わる重大な事件でもあるため、リコールはせず、ヤミ改修を行う計画だったのです。それに反発する八角でしたが意見が通ることはありませんでした。
この事実を知らない人間が一人いました。村西京助、親会社である「ゼノックス」から出向で来ている東京検電の副社長です。ある日、村西の元に差出人不明の内部告発文書が届きます。それは今回のネジ強度偽装のリコール隠しに関する暴露でした。村西は怒り、本社に正直に報告すると宮野たちに通告します。
映画「七つの会議」ネタバレあらすじ:御前会議と黒幕
東京検電の親会社「ゼノックス」の代表取締役の徳山郁夫(北大路欣也)。通称「御前様」が出席する会議を「御前会議」と呼んでおり、今回のネジの強度偽装とリコール隠しの一件を、徳山や梨田常務たちのいる前で説明にすることになりました。その、御前会議に呼ばれた八角は、直接的な関係者として元営業一課課長の坂戸も出席させて、これまでの経緯を説明します。そこで八角は、東京建電の隠蔽体質は20年前から続いていると言い、その黒幕は現ゼノックス常務取締役の梨田元就であることを明かします。
20年前、梨田は東京建設電の営業部長をしていました。そこで梨田は、まだ若かった八角と北川に、ゼノックスの型落ち製品を売るように指示します。その結果、八角は過度な押し売り営業を行ったため、ある家族を不幸にしてしまいました。さらに梨田は、製品データの改ざんをしてでも売るようにと指示を出していました。この指示に抵抗した八角に対して、北川は断り切れずに受けてしまいます。
この時から八角は、北川との出世争いに負け、会社の強引なやり方に不信感を抱くようになり、お荷物扱いされるぐうたら社員となっていったのです。八角は不幸にしてしまった家庭の墓参りのために有給休暇を使っていたことや、離婚した元妻に慰謝料を払い続けていたのです。原島たちが八角を尾行したときに会っていた女性は元妻でした。
梨田によって作られた東京建電の隠蔽体質は今回のネジ強度偽装にも影響していました。実はネジの発注先をトーメイテックに切り替えるように仕向けていたのは社長の宮野でした。北川に指示し、作成した発注先リストに載せていた「トーメイテック」との契約がうまくいくように根回ししたうえで、坂戸に契約させていたのです。
一連の話を黙って聞いていた徳山は、今回の件は自分が預かると言い、席を立ちます。八角は事実をいつ公表するのか問いますが、徳山は「公表するとは言っていない」と、事実を隠蔽する決断を出すのでした。
映画「七つの会議」の結末
その後、東京建電では今回の隠ぺいに関する資料や証拠となるものは、すべてゼノックスによって持っていかれました。ひと気のないオフィスで北川は八角とドーナツを食べながら、これまでの反省と会社への想いを語ります。そして北川は、今回の偽装問題に関して唯一残っていた証拠であるトーメイテック製のネジを八角に託します。
そして八角は、隠蔽の事実を各メディアにリークします。東京建電と親会社であるゼノックスのデータ偽装が公になり、東京建電が製造していた椅子を使用していた交通機関は運航を停止するなど、社会に与えた影響は甚大でした。社長の宮野は失脚、後任には村西が就き、ゼノックスの梨田も失脚となります。
東京建電は残務整理のみの会社となりました。浜本は東京建設電を辞めてドーナツ屋に転身、北川も東京建電を辞めて実家のパラ農園で再スタートを切ります。原島は東京建電に残って残務整理にあたり、八角は幾つもの誘いの話を断って東京建電に残るのでした。
以上、映画「七つの会議」のあらすじと結末でした。
出演者が語る映画「七つの会議」の見どころ
ぐうたら社員でありながらある秘密を抱えていた八角(野村萬斎)。彼に関わった人間は次々と左遷されるが、八角は果たして善人なのか?悪人なのか?
野村萬斎「会社に入るという意味で言うと、そこに従うというのが社会人としてのひとつのルールだと思う。でもその中にいた時に気が付くこともあるでしょうから、何に気が付くのか。また、そこから生き方が変わるということも当然あるんだろうなと思う。そのあたりが観てる方にとっても、会社に属してる意識がありますよね? 会社を時々疑うこともありますよね?その時に、気付いてしまったりとか、良い意味で気づくのか。個人にとって良いのか、会社にとって良いのか。善悪のありどころというのは本当に複雑ですよね。」
部下に厳しいノルマを課す鬼の営業部長の北川を演じた香川照之さん。その鬼っぷりが最大限に発揮される冒頭の営業会議シーンは、香川さんにとっても力の入った撮影だったそうです。
香川照之「あのシーンはオープニングの大事なシーンだと思っていたので、僕自身あのシーンが半分労力かけたいぐらいのところだったし、その間、萬斎さんは主役であるにもかかわらず、居眠りをしている役で、ひと言もお喋りにならないわけですよ。でも、私と言えばですね、セリフ セリフまたセリフでね。」
野村萬斎「普通居眠りはありえないでしょ?笑」
香川照之「あんだけ怒鳴ってたら起きますよ、普通」
映画「七つの会議」公開初日の舞台挨拶では会議シーンの撮影裏話も出ました。
香川照之「会議のシーンでは、セリフをどれだけ早く言うか、熱く言うかに8割がたかけてましたね。萬斎さんに安心して寝ていただけるように。」
野村萬斎「香川さんは、まぁ、ほんとに人のセリフを食いまくって喋るなぁと。笑」
及川光博「せっかく覚えてきたセリフなのに。笑」
香川照之「セリフは半分以上潰さなくちゃいけないんだよ。」
及川光博「それが本当に良かった。エンジンをかけていただきました。」
北川から怒られてばかりの原島を演じたのは及川光博さん、撮影の感想は?
及川光博「北川部長のそれは、現場でもお芝居だってわかっているんですけども、香川さんに睨まれ凄まれ怒鳴られるといった精神的にダメージを受けたという(笑)そんな思い出がありますね。」
男だらけの濃いメンバーの中で奮闘するのが女性社員の浜本優衣(朝倉あき)。原島と組んで八角の謎に迫っていく役どころ。
及川光博「原島と浜本のコンビネーションが楽しかったです。なんというか、迷うと書いて迷コンビ。濃いメンツの中で風通しが良い、ホッとする感じ。」
そんな浜本を演じるのは朝倉あきさん。営業部の仕事の傍ら、ドーナツの社内販売も手掛ける浜本。嫌がらせを受けながらも販売を続ける理由は、自分自身の働く意味を考えてのこと。
朝倉あき「自分のためではなくて’誰かのために働くこと’というのが浜本の中に生まれた正義なのかなと思いました。」
自分の居場所を見つけることに必死な浜本。そんな彼女が危険を冒してまで八角の謎を追っていく理由とは?
朝倉あき「正義感6割、好奇心4割かな。この謎を諦めないで追い続けていれば、自分のような思いをしている人たちの、良い見本になったりするんじゃないかなとか、何か自分を救う行為になるんじゃないかという考えのほうが大きかったのかなと思います。」
経理部の新田を演じるのは藤森慎吾さん。狂言師の萬斎さんをはじめ、伝統芸能、舞台俳優、ミュージシャン、お笑いなど様々なジャンルから豪華キャストが集まった映画「七つの会議」。出演オファーが来た時の感想は?
藤森慎吾「信じられなかったですよ。疑いましたよ、ドッキリだろ?と。これやっぱ芸人としてそういう企画なんだろうなと最初思いましたし、結構何度もマネージャーに確認したのを憶えてます。ようやく台本が届いた時に、あ、本当にお話いただいてるんだと思ったのを憶えてますね。」
そんな藤森さんが最もプレッシャーを感じたのが萬斎さんとのシーン(ねじ六への過剰接待を問い詰めるシーン)。
藤森慎吾「緊張感が半端なかったですね、やっぱあの野村萬斎さんと近い距離でね、いきなり声を張り上げて。気絶するかなというぐらい緊張して頭の仲が本当にボーっとしてた時間がありました。」
豪華キャストで贈る社会派エンターテインメント「七つの会議」。及川さんオススメの必見シーンとは?
及川光博「皆さんの演技バトルじゃないですかね。ド迫力ですよね。アクションシーンとか爆発シーンがあるわけじゃないのに迫力がすごい。皆さんの目力とか。緊迫感溢れるお芝居を観終わった後、ホッとすると思います。ホッとする。うん。」
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