家族のレシピの紹介:2018年シンガポール,日本,フランス映画。シンガポール・日本・フランス合作による、「食と家族の絆」をテーマにした国際色豊かなヒューマンドラマです。ラーメン屋の息子である主人公(斎藤工)は店主だった父の死をきっかけに、亡き母の故郷であるシンガポールを訪れ、母のルーツを辿る旅に出る過程を描きます。
監督:エリック・クー 出演者:斎藤工(山本真人)、マーク・リー(ウィー)、ジネット・アウ(メイリアン)、伊原剛志(山本和男)、別所哲也(山本明男)、ビートリス・チャン(マダム・リー)、松田聖子(美樹)ほか
映画「家族のレシピ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「家族のレシピ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
家族のレシピの予告編 動画
映画「家族のレシピ」解説
この解説記事には映画「家族のレシピ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
家族のレシピのネタバレあらすじ:起
群馬県高崎市にあるラーメン屋「らーめん すえひろ」。山本真人(斎藤工)は父・和男(伊原剛志)とその弟で叔父の明男(別所哲也)が営むこの店で働いていました。店の定番料理である醤油ラーメンを食べに数多くの客が行列を作り、真人は黙々とラーメンに具材を乗せていました。
店の営業が終わると、和男はいつものように誰に何も告げずに店を出て、ひとりバーで酒をあおっていました。この日は約20年くらい前、真人が10歳の時に他界した和男の妻で真人の母・メイリアン(ジネット・アウ)の命日でした。
帰宅した真人は、ネットを介して知り合ったシンガポール在住の日本人女性フードブロガー・美樹(松田聖子)に取り寄せてもらった食材で中華スープを作り、美樹の動画ブログ「美樹のブログジャーニー」に目を通しました。しかし、真人は思うようなスープを作れずにいました。
和男は普段から口数が少なく、真人とはほとんど会話を交わすことはありません。この日も和男は朝食を終えると、ひとりで店に向かいました。真人と明男が遅れて店に着くと、和男は厨房で倒れていました。和男は病院に搬送されましたが、そのまま帰らぬ人となりました。
和男の葬儀から帰宅した真人は、幼い頃の自分が亡き母・メイリアンと一緒に写っている写真に目を通しました。メイリアンが遺した日記や手紙には真人への想いが綴られていました。
真人は「親父が石のような人間になったのは母さんのせいなのかな」と呟くと、明男は「そんなわけないだろ。兄貴にとってお前の母さんは観音様みたいなものだった。お前の母さんがいなかったらこのラーメン屋もここまで続かなかったかもしれない。兄貴とお前の母さん、二人で作った味がこの店に客を呼んだんだ」と諭しました。
改めて母の想いに触れた真人は、メイリアンの故郷であるシンガポールへと飛びました。
家族のレシピのネタバレあらすじ:承
シンガポールはかつて真人が10歳まで住んでいた地であり、両親が出逢った場所でもありました。真人はかつて両親と住んでいたアパート、両親が巡った思い出の地などを訪れた後、手紙に書かれていた住所を基にメイリアンの弟・ウィー(マーク・リー)が営んでいた料理屋を訪ねましたが、店は既に畳まれていました。
この店はメイリアンと和男の出逢いの場であり、日本がバブルだった頃にシンガポールを訪れた和男は、この店のバクテー(豚の骨付きあばら肉などをスパイスやハーブと一緒に煮込んだ薬膳料理)を食べ、その味に強い感銘を受けました。その後、メイリアンは和男が働いていた懐石料理屋を訪れ、初めて食べる日本食の美味さに舌鼓を打ちました。
元々ドラマ「おしん」がきっかけで日本に関心を抱いていたメイリアンと和男が惹かれ合うのには、時間はかかりませんでした。
真人はチキンライスの店で美樹と対面しました。美樹は日本人男性と結婚してこの地に移り住み、その後離婚してシングルマザーとなり、息子を育てながらバーで働いていました。真人は美樹から現地の味付けや食の文化について学び、チキンライスひとつとっても奥深いことに気づかされました。
その後、美樹は真人に現地でラーメンチェーン店を経営する竹田敬介(本人、本作の料理監修も担当)を紹介しました。元々フレンチシェフだった竹田は東京でラーメンチャンピオンになってからこの地で開業したという経歴の持ち主であり、開業当時の苦労話などを聞かせてくれました。
真人はメイリアンが遺した日記を持参していましたが、ほとんどが現地の言語マンダリンで書かれていたので、マンダリンが堪能な美樹がこの日記を訳してくれました。この日記はメイリアンが高崎に移り住んだ頃の心情が綴られており、自分の病気がわかってから真人へのメッセージを綴るようになったのです。
更にこの日記には様々なシンガポール料理のレシピが書き残されており、その中には真人が幼い頃に好きだったスープのレシピもありました。そして日記には、メイリアンは真人の祖母と和解したがっていたことも綴られていました。
家族のレシピのネタバレあらすじ:転
真人は美樹から、シンガポールの食の歴史を教わりました。かつて船の荷の積み下ろしを請け負っていた労働者たちは肉が買えないほど貧しかったため、豚の骨を様々な漢方薬と一緒に煮て作ったのがバクテーの始まりだったのです。美樹は真人の叔父探しに協力することにしました。
翌日、真人は美樹に調味料専門店を案内してもらいました。バクテーは別名を肉骨茶といい、茶葉は入っていないのですが現地の人々はバクテーを食べた後にお茶を飲むことから、そう命名されたのだそうです。美樹は、バクテーにはお腹を満たすだけではなく、人と人との絆を深める役割も果たしていると説明しました。
この店の店主はウィーのことを知っていました。真人は美樹と共にレストランでバクテーを食べ、そこで働いているウィーと再会を果たしました。ウィーは真人の成長を喜び、自宅に招いて妻子を紹介しました。真人は幼い頃にウィーが作ってくれたバクテーの味が今でも忘れられず、ウィーから作り方を学びたいと考えていました。
その日から真人はウィーの家に居候し、ウィーから直接秘伝のスープ作りの伝授を受けていきました。真人は美樹の家に招かれて食事を振る舞われ、子供の頃からメイリアンと一緒に台所に立っていたことを振り返りました。
真人はメイリアンの母であり、母方の祖母にあたるマダム・リー(ビートリス・チャン)とは一度も会ったことがありませんでした。メイリアンとマダム・リーとの間に何があったのか気になる真人は、ウィーとその家族と共にマダム・リーの家に向かいました。
しかし、マダム・リーは真人がメイリアンの子であることを知るや部屋に閉じ籠り、真人との面会を拒んでしまいました。マダム・リーは古いアルバムの中から赤ん坊だった頃の真人の写真を手にしていました。
マダム・リーとメイリアンの確執の原因の答えは、第二次世界大戦時に日本軍がシンガポールを占領していた悲惨な歴史の数々が展示された軍事博物館にありました。博物館に出向いた真人は、今なおシンガポールに影を落とし続けている戦争の記憶を目の当たりにしました。
戦時中に日本兵に父を殺されたマダム・リーは、日本への憎しみを抱き続けており、メイリアンが日本人である和男と結婚することには強く反対していました。しかし、メイリアンは日本の文化に惹かれており、ウィーはそんなメイリアンの決断を尊重していました。
家族のレシピの結末
真人は美樹のバーで行き場のない悲しみを酒で紛らわせました。その後、真人はマダム・リーの家へメイリアンの日記を届けに向かい、日本語で「この日記には哀しみが詰まってる。母さんを苦しめて楽しかった? 父さんが日本人だろうが何人だろうが関係ないだろ? 二人は愛し合っていた。俺には何も残ってないんだよ」と想いをぶつけました。マダム・リーは日記を受け取ると、真人を追い返しました。
真人はマダム・リーのために料理を作ることを思いつきました。それは日本のラーメンとシンガポールのバクテーを合わせた「ラーメン・テー」でした。真人はウィーや竹田の協力を得て、納得のいく味に仕上げていきました。
そして真人は完成したラーメン・テーを早速マダム・リーの家に届けに出向きましたが、彼女は一向に出てきませんでした。真人は仕方なく、ラーメン・テーを玄関に置いて立ち去りました。
真人が引き上げた後、玄関でラーメン・テーを見つけたマダム・リーは試しに食べてみることにしました。その後、ウィーの自宅にいた真人の前にマダム・リーが現れ、親指を立ててグーサインを出しました。マダム・リーは自分の家系に脈々と受け継がれてきた味と、真人がもたらした味が融合した新しい味に深く感銘を受け、真人を認めることにしたのです。
マダム・リーは真人に、メイリアンが遺したレシピを伝授すると伝えました。それからというもの、真人はマダム・リーと共に台所に立ち、未完成だったスープをようやく完成させることができました。スープを飲んだ真人は、メイリアンのことを思い出しながら涙を流しました。
時は流れ、独り立ちした真人は、シンガポールで自分の店「拉麺茶」を開いていました。看板メニューのラーメン・テーを食べ求めに多くの客が行列を作っていました。真人は店を訪れた明男にもラーメン・テーを食べてもらい、明男は「美味い!」と甥の新たな門出を喜んで祝ってくれました。店には美樹も祝いに訪れ、真人は微笑み返しました。
店内に飾られた写真の和男とメイリアンは、いつまでも真人を見守っていました。
以上、映画「家族のレシピ」のあらすじと結末でした。
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