多十郎殉愛記(たじゅうろうじゅんあいき)の紹介:2019年日本映画。無類の剣豪なのに無為に日々を過ごす長州脱藩者と彼を想う女。やがて二人の運命を変える出来事が。『木枯し紋次郎』等の中島貞夫監督が時代劇の成立と衰退と尽きせぬ魅力を描いたドキュメンタリー映画『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』(2015年)の監督を経て20年ぶりに手掛けた時代劇は『長恨』等の巨匠、伊藤大輔監督の霊に捧げられた。画一化された時代劇への危機感に突き動かされ、殺陣の魅力にこだわったこの作品のクライマックスは30分に及ぶ大立ち回り。
監督:中島貞夫 出演者:高良健吾(清川多十郎)、多部未華子(おとよ)、木村了(清川数馬)、寺島進(溝口蔵人)、永瀬正敏(桂小五郎)、栗塚旭(老僧)、ほか
映画「多十郎殉愛記」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「多十郎殉愛記」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
多十郎殉愛記の予告編 動画
映画「多十郎殉愛記」解説
この解説記事には映画「多十郎殉愛記」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
多十郎殉愛記のネタバレあらすじ:起・無為の浪人
幕末の京都。貧乏長屋に、親の代からの借金を逃れるために長州藩を脱藩し、今は無為に日々を過ごしている清川多十郎(高良健吾)を二人の長州藩脱藩浪人が訪れる。一人は多十郎と旧知の間柄の伊藤三左衛門である。桂小五郎(永瀬正敏)を護るために力を貸してほしいと言われるが、多十郎は金を要求する。浪人の一人がそれに腹を立てて多十郎を斬ろうとする。多十郎は近くの神社に彼を導いて、それを受けて立つが、かつて長州きっての剣の使い手だった多十郎の敵ではなく、多十郎は刀の柄で真剣を受け止める。
同じ長屋に住むおとよ(多部未華子)は、売れっ子の芸奴になると期待して養母が引き取った娘だったが、男と駆け落ちしたあげく、男と別れ、今は養母の小料理屋の女将をしている。多十郎は絵も描いてはいるが、夏ミカンの絵では友禅の図柄に採用してももらえず、おとよの店の用心棒をして収入を得ていた。そしておとよは、掃除をしたり褌を洗ったりと、何かと多十郎の世話を焼いていた。
ある日、多十郎の留守中に再び三左衛門が訪れ、小判と手紙を置いていった。手紙にはその晩、指定の場所に来てほしいということと、多十郎の腹違いの弟、数馬(木村了)が上京することとが書かれていた。広い世の中を見たいと願う数馬は2年半前、多十郎と共に脱藩したがったが、多十郎は母親の世話をするように言って、弟の脱藩を止めていた。
多十郎殉愛記のネタバレあらすじ:承・俺にかまうな
結局その夜、多十郎はある飲み屋で女たちをはべらせ、小判を全部使って客全員におごってしまう。そして多十郎を待った三左衛門は、帰宅時に新選組に襲われ、数馬に多十郎のことを託して息を引き取る。京都の街では新選組と見廻組が勤王の志士の探索・殺害を競っていた。
翌朝早く、酔っぱらってやっと帰ってきた多十郎をおとよが押し倒し、井戸からくんだ水を浴びせかける。なぜ俺にかまうのかと尋ねる多十郎におとよは、多十郎と一緒なら地獄に行ってもいいと言う。でも多十郎は、自分のような生きる値打ちのない男にかまうなと言う。そんなに生きる気がないのならと、おとよは多十郎の部屋に置いてあった刀をとりあげて多十郎の首につきつけるが、鞘の中にあるのは木刀であった。武士の魂は捨てたつもりだったが、おとよが部屋を飛び出した後、多十郎は隠していた真剣を取り出して見つめる。
多十郎殉愛記のネタバレあらすじ:転・多十郎剣を抜く
おとよの店で多十郎に痛い目にあわされた岡っ引の報告で、見廻組は多十郎の存在を知る。長屋に多十郎を訪れた数馬は三左衛門を見殺しにしてしまった多十郎を責めるが、そこに見廻組の精鋭部隊である抜刀隊の男たちが来る。数馬を逃がそうとして多十郎は真剣を手に戦うが、数馬が抜刀隊に目を傷つけられる。多十郎は後から必ず行くと言って、おとよに数馬をおとよの養母がかかっている眼医者に連れて行くように言う。
4人の隊士を多十郎に殺された見廻組抜刀隊隊長 溝口蔵人(寺島進)は、奉行所に道を封鎖させて多十郎を捜索する。眼医者の治療で数馬は一命を取り留めたが失明してしまった。約束通り現れた多十郎は、生きる望みを失いかけた弟に広い世の中を知るように諭し、自分がおとりになっている間に数馬を逃がすようにおとよに頼む。おとよと多十郎は口づけをして別れる。
多十郎殉愛記の結末
翌朝、多十郎は岡っ引きたちの前に姿を現す。その間におとよと数馬はおとよの生家のある高雄を目指して町を出る。多十郎は大勢の岡っ引きと奉行所の役人に取り囲まれる。やがて黒ずくめの見廻組が現れる。多十郎は町中を逃げ回った後、竹やぶに入って、そこで見廻組の男たちと斬り結ぶ。長い戦いの末、傷を負いながら、竹を切り倒して見廻組をまく。
見廻組は山中の寺に多十郎がいるのをつきとめるが、多十郎は寺の老僧とその女房のおはるという娘を人質にする。抜刀隊隊長溝口に一般人の犠牲者を出さないように言い渡されていた見廻組は手を出せない。おはるのおかげで僧は人間性を取り戻したと言う。かいがいしく家事をするおはるの姿を見て多十郎はおとよを思い出す。その頃、おとよは数馬を力づけながら逃亡を続けていたが、既に高雄に奉行所の者たちが来ていることを知る。
溝口が寺に到着し、多十郎に一対一の戦いを呼びかける。外に出てきた多十郎との戦いが始まる。勝ったのは溝口だった。投げ縄でとらえられた多十郎はおとよの名を叫ぶ。山中の道を逃げ続けるおとよは、一瞬自分の名を呼ぶ声がしたような気がするのだった。
以上、映画「多十郎殉愛記」のあらすじと結末でした。
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