ゾッキの紹介:2020年日本映画。漫画家・大橋裕之の初期短編集の中から選りすぐられたエピソードを、俳優の竹中直人、山田孝之、斎藤工(『齊藤工』名義)がエピソードごとにメガホンを執って実写映画化したコメディ群像劇です。全てのロケを大橋裕之の出身地である愛知県蒲郡市で行い、それぞれに秘密を抱えた人々が織り成す人間模様を描いていきます。ちなみにタイトルの「ゾッキ」とは「ひとまとめ」「寄せ集め」を意味しています。
監督:竹中直人、山田孝之、齊藤工 出演者:吉岡里帆(前島りょうこ)、鈴木福(伊藤)、満島真之介(旅人)、柳ゆり菜(若い女)、南沙良(松原京子)、安藤政信(道場の師範代)、ピエール瀧(漁師の定男)、森優作(牧田)、九条ジョー(伴くん)、木竜麻生(本田さん)、倖田來未(足立の女房)、竹原ピストル(マサルの父)、潤浩(マサル)、松井玲奈(幽霊のような女)、渡辺佑太朗(二十代のマサル)、石坂浩二(りょうこの祖父)、松田龍平(藤村)、國村隼(漁師のヤスさん)、板垣李光人(コンビニ店員)ほか
映画「ゾッキ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ゾッキ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ゾッキの予告編 動画
映画「ゾッキ」解説
この解説記事には映画「ゾッキ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ゾッキのネタバレあらすじ:「秘密」(監督:竹中直人)
愛知県蒲郡市坂本町。離婚した前島りょうこ(吉岡里帆)は、故郷であるこの町に戻ってきていました。りょうこは実家で寝たきりの祖父(石坂浩二)と同居していました。
祖父は幼かった頃、何者かに夜道で誘拐されたことがあり、その際に犯人が祖父の口を抑えた手の石鹸の香りが今でも脳裏にこびりついて離れませんでした。祖父は石鹸で丁寧に手を洗いながら、もはやあの誘拐事件を知る者はみんな死んでしまい、今となっては自分だけの“秘密”になってしまったことに思いを馳せていました。
ある朝。りょうこが起きると家族は全員出払っており、祖父だけが残っていました。りょうこは祖父と朝食を食べていると、祖父は唐突に「お前には秘密はあるか?」とりょうこに問いかけてきました。
りょうこは自分の離婚した原因のことではないかと考えましたが、祖父は「人は秘密を抱えることで生き続けることができる。みんな全ての秘密を告白し終えて、秘密がなくなると死んだのと同じじゃないだろうか。だから秘密は大事にしろ」と語り続けました。
りょうこは祖父にどれぐらい秘密があるのか訊いてみると、祖父は「260個」と答えました。驚いたりょうこは口に含んでいた牛乳を吹き出しました。
ゾッキのネタバレあらすじ:「Winter Love」(監督:山田孝之)
ここは蒲郡市坂本町のとある古い安アパート。1階に住む伊藤(鈴木福)は隣人の藤村(松田龍平)が物音を立てているのに腹を立てて抗議しに来ました。藤村はただ窓を開け閉めしただけでしたが、このアパートがあまりにも古すぎて、ちょっとした振動でも大げさに伝わってしまうようです。
藤村は伊藤に「“あてがない”というあてを頼りに、あてのない旅に出る」と告げ、ママチャリに寝袋だけを積んで走り始めました。途中で藤村は道端に捨てられていたエロ本を拾い上げました。更に南に向かってママチャリを漕ぎ続ける藤村は、自分と同じように自転車を漕いでいる旅人(満島真之介)と遭遇しました。
旅人と競い合うかのようにママチャリを漕いでいた藤村は、危うく前方の車にぶつかってしまい、その際に藤村が落としたエロ本を旅人が拾ったことで二人は打ち解け合いました。旅人は藤村に一緒に旅をしようと持ちかけましたが、話題が噛み合わないと知るや、藤村を置き去りにして去っていきました。
藤村は立ち寄ったコンビニで、初恋の女性によく似た若い女(柳ゆり菜)と出くわしました。藤村は思わず女に見とれてしまい、気味悪がられました。その際、藤村は女性用の下着を買おうとしていた男子高生・牧田(森優作)とも出くわし、牧田は逃げるように店から走り去っていきました。
無口な店員(板垣李光人)からカップラーメンとチューハイを買った藤村は、高校時代の初恋の女性・松原京子(南沙良)のことを思い出していました。
京子はある時、入院してしばらく学校を休んだ時期がありました。その時、藤村は同級生に冗談半分で「京子は屁が止まらない病気にかかった」と発言したところ、それが噂となって学校中に広がってしまいました。退院した京子は藤村に殴る蹴るの暴行を加え、藤村は今でもその時の光景が深く心に刻み込まれていました。
その夜、藤村は神社の敷地内で寝袋にくるまり、涙しながら眠りにつきました。
翌日、藤村は師範代(安藤政信)が営む道場の前を通り過ぎ、途中で通りかかった民家の男から、みかんを1個分けてもらいました。
港町に辿り着いた藤村は地元の漁師を仕切るヤスさん(國村隼)に声をかけられ、ヤスさんも昔バイクで旅をしていたことから意気投合しました。この日はちょうどヤスさんの誕生日であり、藤村は漁業組合の仲間たちが催したヤスさんの誕生会に招かれました。漁師たちは、仲間の漁師の妻が男と共に蒸発したとの話題で持ちきりになっていました。
その時、刑務所から出所してきた漁師仲間の定男(ピエール瀧)が誕生会の場にやってきました。定男は服役中に妻子と別れており、その妻子は藤村と同じ坂本町に住んでいることから、ヤスさんはもし妻子と会ったら定男の近況を伝えてほしいと藤村に頼みました。藤村は定男から妻子の住所が書かれたメモを受け取り、その日は漁業組合の事務所に泊めてもらうことにしました。翌
朝、藤村はお礼にとエロ本を事務所に置くと再び旅立っていきました。
ゾッキのネタバレあらすじ:「伴くん」(監督:齊藤工)
牧田の通う高校では、今年に入って窓ガラスが割られる事件が3件も発生していました。教師に疑われた牧田は居残りをさせられたところ、同級生の伴くん(九条ジョー)が「自殺するために窓ガラスを割った」と言い出してきました。これまで友達のいかなった牧田は、このことをきっかけに伴くんと仲良くなっていきました。
伴くんは時々「死にたい」と口走る癖があり、学校内では問題児扱いされていました。牧田はそんな伴くんの唯一の理解者となり、アイドルやプロレスなどの話題に花を咲かせていきました。
そんなある日、牧田は伴くんから「君の姉ちゃん、美人らしいな」と言われました。実は牧田には姉などいないのですが、その時は伴くんに話を合わせるために「姉はいる」と適当に嘘をつくしかありませんでした。ところが、伴くんは次第に牧田の姉への想いを募らせていき、会わせてほしいとまで頼むようになりました。
牧田は「姉は岡山の大学に進学している」と嘘をつくと、伴くんは何と姉のパンツを「5万円で売ってくれ」と頼んできました。牧田は仕方なく、近所のコンビニで女性用下着を買ってごまかそうとしましたが、その様子をたまたま客として居合わせた藤村に見られてしまい、慌てて逃げ出しました。
それでも牧田は町のゲームセンターのクレーンゲームで景品の女性用下着を手に入れ、それを洗って中古のように見せかけることにしました。
翌日、牧田から下着を受け取った伴くんは大満足でした。これで一件落着と思われましたが、この一件で伴くんの牧田の姉への想いは益々ヒートアップしてしまい、しまいには牧田の家に張り込むまでになりました。
困り果てた牧田は「姉は1週間前に交通事故に遭って死んだ」と嘘をつき、偽の仏壇まで用意しておきました。遺影には牧田が中学時代に好きだった女子・本田さんの写真を飾っておきました。深い哀しみに暮れた伴くんは事実を知らぬまま本田さんの写真を拝みました。
やがて時は流れ、高校を出た牧田は地元の大学に進学し、伴くんは別の県の会社に就職しました。このまま牧田と伴くんは疎遠になるものと思われましたが、何と伴くんは“牧田の姉にそっくりな”本田さん(木竜麻生)の居場所を突き止め、ストーカー紛いの執拗なアプローチを繰り返すようになりました。
その甲斐あって、なんと本田さんは伴くんの告白を受け入れてしまい、そのまま伴くんと本田さんは結婚することとなってしまいました。二人の結婚式に招待された牧田は非常に気まずい思いをしていました。
ゾッキのネタバレあらすじ:「父」(監督:竹中直人)
小学生のマサル(潤浩)の父(竹原ピストル)はろくに働かず、女と遊んでばかりいるだらしない父親でした。マサルの父は漁師の足立の女房(倖田來未)と不倫関係にあり、運悪く二人でいるところを足立に見つかってしまいました。
ある日、マサルは父に遊園地に連れていってほしいとせがみましたが、父は家が貧乏なことを理由に拒みました。そんなある夜、マサルは父に連れられて、父の母校である高校に忍び込みました。高校時代にボクシング部だった父はこっそりと部室に潜入し、マサルに周囲の見張りをさせると、中にあったサンドバッグとエロ本を盗み出してしまいました。
その時、突然校舎の窓ガラスが割れ、マサルと父はまるで幽霊のような女(松井玲奈)を見て怯えてしまいました。実はこの高校は伴くんと牧田の母校でもあり、窓ガラスを割った真犯人はこの幽霊のような女だったのです。
父は恐怖のあまり、マサルを置き去りにして一人で逃げ去ってしまいました。
幽霊のような女はマサルを襲おうとはせず、ただ「夏の終わりは少し切ないですね」と声をかけてきました。女の正体ははかつてこの学校で自殺した女子生徒でした。
それから程なくして、父がマサルを迎えに戻ってきました。父はマサルをサンドバッグやエロ本を積んだリヤカーに乗せて学校を後にし、幽霊のような女は静かに消滅していきました。
マサルは帰る途中、エロ本を路上に投げ捨てました。このエロ本はのちに藤村に拾われることとなります。父が家にマサルと母とサンドバッグを残し、愛人と共に蒸発したのはそれから10日後のことでした。
10年後。成人したマサル(渡辺佑太朗)は今も父と暮らしたアパートに住んでいました。母は既に亡くなり、物干し竿にはサンドバッグがぶら下がったままでした。
サンドバッグが地面に落ちた日、マサルは近くの公園に出かけました。マサルの近くでは、牧田と伴くんが互いの近況を語り合っていました。伴くんはもうすぐ3人目の子どもが生まれるようで、伴くんは本田さんと出会うきっかけをくれた牧田に感謝していましたが、牧田はどうやらまだ良い出会いはないようでした。
マサルはそこで、愛人に捨てられた父と10年ぶりに再会を果たしました。マサルはただ「おかえり」と父を迎え入れました。
ゾッキの結末
伊藤はレンタルビデオ店でアルバイトをしながら、何の変哲もない日々を過ごしていました。そんなある日、伊藤は友人からのメールで、ある衝撃的なニュースが海の向こうで起こったことを知りました。
伊藤は衝撃のあまり、ついちょっとした振動にも八つ当たりするほどでしたが、それでも若い女性客がベビーカーを押しながら来店した時は、張り切って接客に応じました。
伴くんは結婚してからも、度々牧田の“姉”の命日に彼の家を訪れては線香をあげていました。牧田はこっそり遺影の写真を高校時代に2番目に好きだったりょうこのものにすり替えていましたが、伴くんはそのことに全く気付いていませんでした。
伴くんを駅まで見送った牧田は、帰り道でばったりとりょうこと再会を果たしました。りょうこは祖父のためにいなり寿司を作っていましたが、祖父は友人とカラオケに行ってしまったので、牧田にいなり寿司をあげることにしました。
牧田とりょうこは河原でいなり寿司を食べながら語り合いました。りょうこは牧田に秘密があるかと尋ねてみると、牧田は「墓場まで持ってく秘密が1個ある」と答えました。続けて牧田は「誰かが頑張って守ってくれている秘密のおかげで、世の中はうまく回ってるんじゃないのかな」と語り、りょうこは納得した様子で笑顔を見せました。
その時、牧田はりょうこが差し出したティッシュを思わず白いパンツであるかのように見間違えてしまいました。牧田とりょうこの近くを、藤村がママチャリであてもなく走っていました。
以上、映画「ゾッキ」のあらすじと結末でした。
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