容疑者Xの献身(ようぎしゃえっくすのけんしん)の紹介:2008年日本映画。東野圭吾原作ガリレオシリーズ初の長編を映画化した作品。第134回直木賞受賞した作品でもあります。ガリレオシリーズは2007年からテレビドラマ化し、主人公の物理学者、湯川学を福山雅治が演じました。「容疑者Xの献身」では、かつての大学の同級生、天才数学者の石神と頭脳戦を繰り広げることになります。
監督:西谷弘 出演者:福山雅治(湯川学)、柴咲コウ(内海薫)、北村一輝(草薙俊平)、松雪泰子(花岡靖子)、堤真一(石神哲哉)、ダンカン(工藤邦明)、長塚圭史(富樫慎二)、金澤美穂(花岡美里)、渡辺いっけい(栗林宏美)、品川祐(弓削志郎)、真矢みき(城ノ内桜子)、ほか
映画「容疑者Xの献身」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「容疑者Xの献身」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ガリレオ 容疑者Xの献身の予告編動画
映画「容疑者Xの献身」解説
この解説記事には映画「容疑者Xの献身」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
容疑者Xの献身のネタバレあらすじ:起
元ホステスの花岡靖子(松雪泰子)は、娘の美里(金澤美穂)と二人きりで暮らしています。お弁当屋の仕事をしながらの暮らしは、裕福ではないものの、毎日笑いの絶えない穏やかな日常でした。しかし、この日常が一変する出来事が起こります。
靖子の元夫・富樫慎二(長塚圭史)が二人が住むアパートを訪ねてきました。富樫から逃げるため、これまでに何度も引越しを繰り返していますが、そのたびに富樫が二人の前に現れては、お金の無心をして去って行きます。富樫と言い争いになり、はずみで靖子と美里は富樫を殺してしまいます。
富樫の死体を前にして二人が呆然としていると、玄関のチャイムが鳴り響きました。隣に住む石神哲哉(堤真一)が奇妙な物音に心配して様子を見に来たのです。あまりに二人の様子がおかしいので、石神は靖子の静止を振り切り、部屋の様子を伺って富樫の死体を発見します。明らかに殺されたばかりの様子に動揺するものの、すぐに死体を隠蔽し、二人が逮捕されないようにと動き出します。
高校で数学の教師をしている石神は、本来は数学を極めるはずでした。家の事情で自分の道を進めず、一人暮らしていた時に靖子と美里に会い、生きる勇気を得ました。靖子の仕事先である弁当屋にお弁当を買いに行ったりと、靖子に密かに想いを寄せています。石神は靖子と美里のことを大切に考えていました。それから細かく二人に今後のことを話します。靖子と美里は動揺するものの、的確な石神の指示に従います。
容疑者Xの献身のネタバレあらすじ:承
成人男性の死体が、旧江戸川で発見されます。発見された死体は、全裸で上顔が潰され指紋まで焼かれていました。身元を明らかにするのは難航するかと思いきや、ほどなくして富樫慎二の死体だとわかります。なぜなら、最後に宿泊していた旅館から盗難届けがあったからです。
旅館から採取した毛髪のDNA、死体発見現場に乗り捨てられた自転車から採取した指紋などから、一つひとつ追っていきます。死亡推定時刻も解剖の結果、明らかになりました。捜査を進めるうえで浮上するのは、元妻の靖子と娘の美里の存在。元夫である富樫とのトラブルを疑います。
当たり前のように話を聞きに訪れ、警察は靖子と美里のアリバイ確認も行います。二人は確実にアリバイがとれるよう、石神の指示に従い、映画館で映画を観ていたと話しました。死亡推定時刻に富樫とは会っていないことになります。映画の半券まであるので二人は事件と関りがないと認めざるを得ません。
捜査にあたっていた内海薫(柴咲コウ)は違和感を覚え、相棒の草薙(北村一輝)が帝都大学理工学部、准教授の湯川学(福山雅治)に捜査協力を依頼しました。
靖子と美里は石神の指示通りにすることで、自分たちの平穏な生活を手放さずにすみました。ですが、靖子には罪の意識があり、さらに石神に弱みを握られているような状態でもあります。犯罪を共有してしまったことに、靖子は次第に恐れるようになります。
容疑者Xの献身のネタバレあらすじ:転
湯川は捜査に関わる内に、靖子と美里の隣に住んでいる石神に気がつき驚きます。帝都大学の同級生でしたが、石神も湯川も天才だったので通じ合うものがありました。湯川はどこか石神に親しむ気持ちがあり、石神の方でも湯川に対しては心を開くようなそぶりを見せていました。
靖子と美里を調べる内に、石神が二人を助けるために犯罪に手を染めたのではないかと疑い始めます。靖子は平穏な日常の中で石神の様子がおかしくなっていくことに気がつきます。靖子には付き合っている男性がいましたが、二人で食事をしている時、石神がじっと見ている様子に気づき驚くことがありました。まるでストーカーのような振る舞いをする石神に靖子は苦しむようになります。
湯川は靖子と美里のアリバイを見破り、一つひとつ真相に近づいていきます。湯川は靖子が犯人であることに確信を持ちました。さらに石神が二人のアリバイが確実になるよう、ホームレスを殺して顔を潰し指紋を焼いてから富樫の服を着せ、偽装したことを見破ります。
本物の富樫の死体は人知れず処理し、死亡推定時刻、日付を変え、犯行時刻そのものが変わりました。靖子と美里のアリバイが完璧になるための偽装工作です。そうこうしている内に石神は富樫を殺したと自首をしました。ホームレス殺しは二人のアリバイを成立させるためだけでなく、自分が本当に人を殺したと警察に信じてもらうためでもありました。石神は天才と言われるだけあり、警察のことも理解していました。長年現場で働いてきた刑事は、本当に人殺しをしたかどうか見抜くだろうと考えました。
容疑者Xの献身の結末
富樫の犯行に関して石神は話し、物証も全て石神の部屋の中から見つかります。何もかも素直に犯行を認めていく様子を黙って見ている湯川に、薫がこれで本当に良いのかと怒ります。石神は靖子と美里の罪を一切かぶり、その後、決して二人が疑われずに済むようにしました。石神の巧妙な作戦はまだあります。一事不再理という法律上の仕組みを利用したことです。
一事不再理とは、有罪無罪の判決もしくは免責が確定した場合、同一の事件について再び公訴を提起しない原則のこと。
逮捕された際に、靖子が好きだったため元夫が邪魔だったという偽の動機も語ります。この石神の発言は、靖子に対してストーカーのような言動をしたことから、周囲を納得させることができました。実際に人を殺した石神の言葉には重みがあり、物証も動機もそろっています。石神の作戦は見事成功するように思われました。ですが、全てを見抜いた湯川が靖子に石神のことを話し、自主を促します。
葛藤していた靖子ですが、ついには警察に足を運びました。石神は靖子の行動に驚きます。二人は顔を会わせ、靖子は石神に詫び、石神は靖子の言動に涙を流して「なぜだ」と問いかけます。事件は無事に解決することができましたが、湯川は友人のことを想い、落ち込んでいる所を薫が慰めるのでした。
以上、映画「容疑者Xの献身」のあらすじと結末でした。
この作品はなんと言っても、堤真一さんと松雪泰子さんの演技力に圧倒されます。物語は松雪さん演じる靖子が元夫を誤って殺害してしまい、それを靖子に恋している堤さん演じる高校の数学教師の石神がアリバイ工作をし、供述も裏で操ってその親子を助けようとするものです。石神は自分の人生に色をくれた靖子を助けるため、別の犯人像を作り出すのです。そこに大学の同期である湯川が現れ、事件の矛盾点に気づき、事件を調べ始めます。湯川にすべて暴いてもらい、自ら逮捕されるように仕向けた石神でしたが、警察署にすべてを話しにきた靖子と出会います。彼女を守るために自分を犠牲にした石神は、「どうして…どうして…」と泣き崩れ、靖子も「ごめんなさい…私のために、本当にごめんなさい…」と涙ながらに謝罪します。ここのシーンの2人の圧倒的な演技力にもらい泣きしました。そして、『容疑者Xの献身』というタイトルに感動しました。本当にその通りだなと。こんなにもタイトルがしっくりときて、素晴らしい作品に出会えて、よかったです。