フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊の紹介:2021年アメリカ映画。舞台は20世紀フランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部。米国新聞社の支社が発行する雑誌で、アメリカ人編集長が集めた一癖も二癖もある個性豊かな天才記者たちが活躍している。様々なジャンルの記事を扱い、50か国50万人の購読者がいる人気雑誌だ。ところが、編集長が仕事中に心臓まひで急死。「フレンチ・ディスパッチ」は彼の遺言により廃刊を迎えることになる。編集長の追悼号にして最終号の1つのレポートと3つのストーリー。おかしくも泣けるその全貌とは。
監督:ウェス・アンダーソン 出演:ビル・マーレイ(アーサー・ハウイッツァー・Jr)、オーウェン・ウィルソン(エルブサン・サゼラック)、ティルダ・スウィントン(J.K.L.ベレンセン)、ベニチオ・デル・トロ(モーゼス・ローゼンターラー)、エイドリアン・ブロディ(ジュリアン・カダージオ)、レア・セドゥ(シモーヌ)、フランシス・マクドーマンド(ルシンダ・クレメンツ)、ティモシー・シャラメ(セフィレッリ・B)、リナ・クードリ(ジュリエット)、ジェフリー・ライト(ローバック・ライト)、マチュー・アマルリック(アンニュイ警察署長)、スティーヴン・パーク(ネスカフィエ)、エリザベス・モス(コビー・エディター)、グリフィン・ダン(法務顧問)、ジェイソン・シュワルツマン(風刺漫画家)、フィッシャー・スティーヴンス(ストーリー・エディター)、ボブ・バラバン(ニックおじさん)、ヘンリー・ウィンクラー(ジョーおじさん)、クリストフ・ヴァルツ(ポール・デュヴァル)、ルパート・フレンド(練兵軍曹)、ロイス・スミス(アップシャー・モー・クランペット)、トニー・レヴォロリ(青年時代のローゼンターラー)、ウィレム・デフォー(会計士アバカス)、エドワード・ノートン(運転手ジョー)、シアーシャ・ローナン(ショーガール)、リーヴ・シュレイバー(トークショー司会者)ほか
映画「フレンチ・ディスパッチ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「フレンチ・ディスパッチ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
フレンチ・ディスパッチの予告編 動画
映画「フレンチ・ディスパッチ」解説
この解説記事には映画「フレンチ・ディスパッチ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
フレンチ・ディスパッチのネタバレあらすじ:起
アメリカの新聞「カンザス・イヴニング・サン」の別冊で、フランスの街アンニュイ=シュール=ブラゼに編集部を構える雑誌「フレンチ・ディスパッチ」。国際問題、政治、アート、ファッションに美食と、才能あるジャーナリストたちによるオリジナリティあふれる記事を誇り、購読者は50か国50万人を突破している人気雑誌です。
ところが、創刊者にして編集長のアーサー・ハウイッツァー・Jrが心臓まひで急死。彼の遺言に従って「フレンチ・ディスパッチ」は廃刊が決まりました。
編集長の追悼号となる最終号には、1つのレポートと3つのストーリーが掲載されることとなりました。
IN BRIEF:自転車レポーター
勇敢な記者エルブサン・サゼラックによる、編集長が愛した街アンニュイ=シュール=ブラゼを自転車で巡り紹介するレポート。
アンニュイ=シュール=ブラゼは丘陵にある古い街で元々は職人たちの街でした。ブラゼ川が流れ、古代の大聖堂や古びた石造りの建物が並んでいます。しかし、どんな街にも裏の顔があります。果敢にもサゼラックは、歓楽街や闇社会もあり、夕暮れ時に売春婦や男娼が現れる最も怪しい地区に迫ります。
“泣かない”がモットーですが実は人情派という編集長。悲観的なワードが並ぶサゼラックの記事に一瞬難色を示しますが、彼の体を張ったレポートに信頼も寄せていました。
フレンチ・ディスパッチのネタバレあらすじ:承・STORY #1 コンクリートの確固たる名作
美術界の表も裏も知り尽くすJ.K.L.ベレンセンによる、“画家と絵画の肖像”の記事。
フレンチ・スプラッター派アクション絵画の先駆者、モーゼス・ローゼンターラー。彼は裕福な生まれでしたが、殺人を犯して50年の刑に服していました。そして服役11年目、突然絵筆を取った彼は、看守のシモーヌをモデルに絵画を描き始めました。
いち早く彼の絵に目を付けたジュリアン・カダージオは鮮やかな手腕で、ローゼンターラーを瞬く間に美術界のスターへと導きました。
やがて期は熟し、カダージオはさらに金儲けをするためにベレンセン含む各界のセレブたちを刑務所で開かれるローゼンターラーの個展に招待することに。しかし、肝心なローゼンターラーはアイディアが浮かばず一向に筆が動きません。ついに自殺まで試みますが、シモーヌによってなだめられ再び作業に取り掛かりました。
セレブたちにお披露目されたローゼンターラー渾身の絵画は、なんと壁に描かれた10作品のフレスコ画。持ち出すことができないコンクリートの作品に、カダージオは怒りに震えましたが、モーが購入。シモーヌはモデル代として受け取った金で翌日には看守を辞め、家族と幸せに暮らし、二度と顔を見せませんでした。
フレンチ・ディスパッチのネタバレあらすじ:転・STORY #2 宣言書の改訂
ジャーナリスト魂を貫くルシンダ・クレメンツによる、“学生運動の日記”の記事。
アンニュイの街で学生運動が勃発。リーダーのゼフィレッリ・Bは両親の友人のルシンダに宣言書の校正を依頼しました。一方、ルシンダは学生の記事を書くために、ゼフィレッリを取材します。ゼフィレッリが運動を起こすきっかけとなったのが、兵役から脱走した友人のミッチ=ミッチの逮捕でした。知らせを聞き「若き理想主義者運動」を立ち上げ、大学と国を相手に大規模なストを扇動しました。
しかし、宣言書の改訂を巡って学生の間でも割れ、ゼフィレッリは対抗する派閥の気の強い会計係ジュリエットと言い争う場面も。そこで高潔なジャーナリストとして口を閉じていたルシンダがゼフィレッリとジュリエットの間に割ってくっつけ、2人は恋に落ちました。青春の激しさと甘さを謳歌していたゼフィレッリでしたが、ある夜、海賊電波塔で放送を開始しようとした矢先、感電して川に落ち命を落としてしまいます。
悲しみに暮れる両親でしたが、やがてゼフィレッリは学生革命家としてのアイコンとなり、多くの学生が、彼がプリントされたTシャツを着て、髪型を真似するなど、カリスマ的人気を集める存在になりました。
フレンチ・ディスパッチの結末:STORY #3 警察署長の食事室
祖国を追放された孤独な博識家ローバック・ライトによる、“名シェフの横顔”の記事。
ローバックはアンニュイ警察署長のお抱え天才シェフのネスカフィエを取材する予定でした。迷路のような署内を抜けて、やっとたどり着いた食事室。彼の母親や友人が同席するテーブルに着いた時、事件が起こりました。署長のひとり息子ジジが誘拐されてしまったのです。犯人は、3日前に逮捕されたギャング組織の悪徳会計士アバカスを釈放または処刑しなければジジを殺すと宣告しました。
主犯格は組織のボスに雇われた運転手のジョーでした。仲間のショーガールがジジを見張っています。一方、ジジは幼少期から警察署での英才教育で取得したモールス信号を使って、ネスカフィエを呼べとメッセージを送りました。知らせを受け取った署長はジョーに空腹の息子のためにシェフを食料と共に送らせてくれと頼みました。
こうして誘拐犯のアジトに送り込まれたネスカフィエは一世一代のディナーを振る舞います。犯人たちはこぞってネスカフィエの毒入り大根で死にましたが、大根嫌いはジジだけではなく、ジョーもまた口にしませんでした。生き残ったジョーはジジを連れて逃亡。しかしそれを追う署長の車にジジが飛び乗って助かり、ジョーは川に転落し死んでしまいました。
ここまで読んだ編集長は、ローバックに肝心なネスカフィエの話が十分ではないと言いました。ローバックは悲しい内容で省いたと言いながら、丸められた原稿を編集長に見せました。
そこには自らも毒を食らい瀕死の状態にありながらも「毒の味はどんな料理でも味わったことのない素晴らしい味がした」というネスカフィエについて書かれていました。編集長はこれを入れてくれと依頼しました。
そして、編集長はその後まもなくして急死しました。
ハウイッツァー編集長の手勢の編集部員
風刺漫画家、ストーリー・エディター、法務顧問、コピー・エディターたちが協力して死亡記事を書こうと編集長の遺体の周りで顔を突き合わせていました。部員たちは編集長が叱ったりなだめたりしながら天塩にかけて育て、仕事への献身と愛情を教え込んだ記者たちでした。
以上、映画「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する