HOKUSAIの紹介:2020年日本映画。世界中の画家やアーティストに影響を与えたといわれる絵師・葛飾北斎。90年の生涯で三万点もの作品を残した北斎の若き日は謎に包まれている。この作品では北斎の青年期を「誰も知らない」でカンヌ国際映画祭の男優賞を史上最年少で受賞した柳楽優弥が、その老年期を国際的なダンサーとして知られる田中泯が演じている。ラストの北斎の制作シーンは圧巻だが、歌麿の美人画を描く様子(部屋も含めて)や彗星のごとく現れる写楽の才能など美しく刺激的な要素が満載だ。
監督:橋本一 キャスト:柳楽優弥(葛飾北斎:青年期)、田中泯(葛飾北斎:老年期)、阿部寛(蔦屋重三郎)、永山瑛太(柳亭種彦)、玉木宏(喜多川歌麿)、瀧本美織(コト)、青木崇高(高井鴻山)ほか
映画「HOKUSAI」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「HOKUSAI」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
HOKUSAIの予告編 動画
映画「HOKUSAI」解説
この解説記事には映画「HOKUSAI」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
HOKUSAIのネタバレあらすじ:壱の章
江戸で評判の版元・耕書堂。洒落本や浮世絵は世の風紀を乱すという幕府の方針によって取り締まりにあい、主要な商品や看板を燃やされてしまいます。しかし店主の蔦屋重三郎(阿部寛)はかえって箔がつくと転んでもただでは起きない様子。
蔦屋は吉原に人気絵師・喜多川歌麿(玉木宏)を住まわせており、歌麿が描きたいと言った人気の花魁・麻雪(芋生悠)を連れてきます。その際、麻雪から聞いた型破りな絵師・勝山春朗、のちの葛飾北斎(柳楽優弥)に興味を持った蔦屋は、北斎をその場に呼び寄せます。歌麿に作品を批判された北斎は、後日新たに描いた美人画を数枚蔦屋のもとに持ち込みますが、全く相手にしてもらえません。
そんなある日。蔦屋は斬新な役者絵を描く新しい才能を見つけます。道楽で描いたという天才肌のその若者は東洲斎写楽(浦上晟周)といいました。蔦屋のアイデアで派手な色合いで刷られた写楽の作品は飛ぶように売れ、吉原で祝宴が催されました。
そこへ連れてこられた北斎は肩身が狭く、蔦屋に煽られて写楽に暴言を吐いて出ていってしまいます。蔦屋の店で働く瑣吉、のちの滝沢馬琴(辻本祐樹)が家に様子を見に行きますが、そこに北斎の姿はありませんでした。
旅に出て山や森の中をさまよう北斎。何が描きたいのか、なぜ描くのか。人の才能をうらやみ、自分を卑下しながら旅するうちに北斎は海へとたどり着きます。迷わず進んでいく北斎。海中に入り、波を感じ、何かをつかんだ北斎は一心不乱に波打ち際の砂に絵を描いていくのでした。
江戸に戻った北斎が耕書堂を訪れると、蔦屋は重い病いを患っていました。それでも北斎の描いた波の絵に驚き、ようやく北斎が描きたいものを見つけたのだと喜びました。
北斎の絵が完成し、上機嫌の蔦屋は酒の飲めない北斎と祝杯をあげようとしています。そのとき蔦屋は大切にしていた世界地図を北斎に見せ、見たこともない外国で自分の目利きでたくさんのいい絵を売るのが夢だと語ります。しかし、ほどなくして蔦屋は亡くなってしまいました。
HOKUSAIのネタバレあらすじ:弐の章
コト(瀧本美織)という妻をめとり、数人の弟子を抱えるようになった北斎。ふらっとでかけた先は滝沢馬琴の仕事場でした。売れっ子の読本作者となっていた馬琴の本に北斎は挿し絵を描いていたのです。そのままそこで描き始め、帰宅が深夜になることもしばしばでしたが、コトは文句も言わず明るく北斎を支えていました。
北斎と馬琴は挿し絵をめぐってよく対立しました。情景が浮かぶといって馬琴の意図とは異なる絵を北斎が勝手に描いてしまうのです。書き直すことを北斎は受け入れず、怒った馬琴が文章を書き直すこともありました。
ある日、北斎は新たな仕事の依頼を受けます。柳亭種彦という戯作者の妖怪話でした。それを読み始めた北斎はたちまち作品に惚れ込み、寝食を忘れる勢いで読みふけるのでした。
そんな折、馬琴と参加していた百物語(暗い部屋でたくさんのロウソクを灯し、ひとりずつ怪談を話してはロウソクを一本ずつ消していくという肝だめしのようなもの)の会場に、喜多川歌麿がつかまったという報せが入ります。参加者たちはあわてて帰っていきますが、残された北斎と馬琴は「変えるんだ、世の中を」と決意していました。そして、こんな日に絵を描くのか?と問う馬琴に北斎は、「こんな日だからさ」と答えるのでした。
その夜、コトから「子どもができた」と聞かされた北斎は素直に喜ぶことができませんでした。こんな世の中に生まれてきて幸せなのか、とつぶやく北斎にコトは「笑ってくださいませんか」と言い、自分たちが喜んであげなくてどうするんです!と口づけをしました。「この子の声が聞こえましたか?」と言われうなずく北斎。静かにコトのおなかに手をあてました。
無事に子どもが生まれ、家で仕事をしながら二人は幸せそうに子育てをしていました。
HOKUSAIのネタバレあらすじ:参の章
老人となった北斎(田中泯)。コトはすでに亡くなり、娘のお栄(河原れん)と数人の弟子とともに生活しています。そんな北斎を朝早くから訪ねてくるのは武士でもある戯作者の柳亭種彦(永山瑛太)です。種彦は武士でありながら身分を隠して作品を発表しており、幕府による取り締まりには心を痛めています。北斎は種彦の屋敷に出入りし、共に仕事をしていますが「変わんねーなー、世の中は」と憂いています。
そんな北斎の創作意欲は老いてなお衰えることを知らず、あるときは町中を吹き荒れた突風に翻弄される人々を見るや、その場に座り込んで躍動的な絵を何枚も描きあげるのでした。
そんなある日、北斎は脳卒中で倒れてしまいます。右手が麻痺し、もう絵が描けなくなってしまった北斎のもとからは数人の弟子が去っていきました。しかし残った弟子の高井鴻山(青木崇高)やお栄の助けで、少しずつまた絵を描き始めていた北斎は、ひとりで旅に出ると言い出します。
今だから描けるものがきっとあるはず、まだまだ世の中と勝負していたいと言い、お栄はそんな北斎を送り出します。
山を越え水辺を進みながら自然の生命力を感じていく北斎。そして、かつて悩んでさまよった末にたどり着いた海へと再びやってきました。大事に持ってきたコトの位牌を浜に立て、山に登って北斎が見たのは、夕日に真っ赤に染まった富士山でした。
家に戻った北斎はある日、新しい青の絵の具を手にしました。その色合いに感動した北斎はそのまま雨の降る屋外に飛び出し、感情の赴くままに頭からその“青”を浴びるのでした。そしてその青い絵の具を使って描き上げた「冨嶽三十六景」は大人気となっていくのです。
HOKUSAIの結末:四の章
料亭で、故郷の小布施に戻る高山の送別の宴が開かれています。そっと席を外した種彦を追って外にでた北斎が「やめるのか?」とたずねると「迷ってます」と言う種彦。いつか人に指図されずに作品を作れる、そんな世の中が見たい、と二人の意見は一致しました。
後日、種彦は武家組合組頭の永井五右衛門(津田寛治)から、今なら見逃してやるから執筆をやめるよう命令されますが、種彦は頑なにそれを拒みます。永井はその場を離れ、代わりに四人の武士に囲まれた種彦は挿していた刀をはずして自ら床に落としました。
種彦が亡くなったとの報せを受けた北斎とお栄は走って屋敷にやってきました。奥方は、侍らしく自害したと話しましたが、遺体を見た北斎はそうではないと感じ「種彦ー!」と叫びました。
その夜、絵を描く準備をしている北斎にお栄は「こんな日にも絵を描くのか」とたずねますが、「こんな日だから描く」と北斎は答えます。そして心を落ち着かせると、目の前に4人の武士に殺される種彦の姿が生々しく展開され、北斎の目の前で無念の表情のまま斬首されます。
翌朝、うらめしそうな生首の絵を見たお栄は、こんな絵を描いたら北斎がつかまってしまう、と江戸を出ることを提案。二人は高山を頼って小布施へと向かいます。
快く迎えてくれた高山に生首の絵を預け、そこで北斎は絵が描きたいと頼みます。用意された部屋で静かに、そして次第に荒々しく波の絵を描いていく北斎。それは2枚連作で、いつしか今の北斎と若かりし北斎が二人で描いていました。同じように2本の筆を操り、指で絵の具を弾き飛ばし、竜のようにうねる「男浪」「女浪」が完成しました。
その絵を見つめる二人の北斎の耳には、波の音が響いていました。
以上、映画「HOKUSAI」のあらすじと結末でした。
【HOKUSAI】
エンドロールが流れてきた瞬間、『…ウソやん。。。』と、おもわず口走ってしまいました。
W主演。主要キャラも有名どころで固めた2時間枠映画という前情報の時点で、多少 悶々としながらの観賞だった事もあるのか個人的には、とても衝撃的な作品でした。
W主演と言うところで、勝手に”北斎の人生をまるっと描いてくれているのかな?(……2時間でおさまるんかな)”という期待値が高まってしまっていた結果、『え? ここでおしまいなん?!本当に?!』という(身勝手な)残念さが『ウソやん』に集約されたのだと思います。
限られた枠の中で、北斎の軌跡と内面描写、関わる人達との人間模様、作品制作描写、『今の時代にこそ… 』のメッセージを詰めこむにはこれは、尺が足りないと感じました(笑)
ともあれ、ざっくりしたスピード感ある痛快エンタメ作品にせず継ぎ接ぎ/ぶつ切りのふわっとしたヒューマンヒストリーにせず、安直な『”好き”/”己”を貫け!』系の啓蒙作品にもせず、2時間で 各々目一杯の”生きざま”を表している点は、本当に感動しましたが
…尺が、、あと30分あれば、、、田中さんの口から 北斎最晩年の名言や辞世の句が聞けたかもしれないという口惜しさが、丁寧に制作されていた分、どうしてもこみ上げてきてしまいました。
前編/後編の二部作品だったらよかったのに。。。実は、最晩年の部分も撮っていて、DVD化の際に”完全版”としてでてくるとか ないかなぁ。。。田中さんが猫描いて泣くシーンとか みてみたかったなぁ。。。等、せんないことを思わずにはいられませんでした。
あとは、淡々と過不足の無い様にお話が進んでいたのに、『この子は~…』『…私たちがよろこんでやらないでどうするんですか!!』のシーンで急に説明臭い感じ… この作品の最重要メッセージですよドヤ感が鼻についてモヤっとしてしまいました。。。いつの時代でも『こんな世の中』は不変テーマなのでしょうが、HOKUSAIでは だからこその”業もなにも清濁併せ呑んだ 没入への追求”をクローズアップさせて、もう少しだけ堪能したかったなと思いました。
多分 なんだかんだと言いながらおかわりで何回か観にいくだろう映画です(笑)