ネコナデの紹介:2008年日本映画。亀井亨の人気動物TVドラマ『ネコナデ』を再構成した作品で、会社人間の男が一匹の子猫との出会いから次第に変わっていく姿をコミカルに描いたハートフルドラマです。「こんな子ねこにであったら、人生がちょっとだけ変わるかも。」というキャッチコピーで、主演は「300の顔を持つ男」と呼ばれ2018年急逝した名脇役・大杉漣です。
監督:大森美香 出演:大杉漣(鬼塚太郎)、青山倫子(君島凛子)、黒川芽以(田中亜里沙)、入山法子(久我珠代)、立花彩野(長島道子)、桜井聖(鈴木一郎)、海東健(西条康文)、小林且弥(山下カズキ)、EMI(益田トモヨ)、六角精児(大野恵輔)、ほか
映画「ネコナデ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ネコナデ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ネコナデの予告編 動画
映画「ネコナデ」解説
この解説記事には映画「ネコナデ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ネコナデのネタバレあらすじ:1.鬼塚、猫と出会う
「いい名前なのにねえ…。」鬼塚太郎はリストラ対象者の鈴木一郎にこう切り出しました。「いい迷惑です」と鈴木は答えました。鬼塚は静かに鈴木の言葉を聞くと、徐に「君をスズキイチローとダブらせてるのは、君だけだよ」と言い、紙袋を出してきました。「これ、君の退職セット。確認してね。有給は取って辞めてね。換金できないから」と、鬼塚は事務的に鈴木に告げました。「そんな!何の説明もなしに!納得できませんよ!」と鈴木は立ち上がり、憤りを鬼塚にぶつけました。「そうか。それなら弁護士か、労働基準局だね」と、鬼塚は全く動じませんでした。
IT企業・デジタルドラゴンでは、辰美孝四郎社長の方針の下、大規模なリストラが行われていました。無表情で解雇通告をする人事部長の鬼塚は、冷酷無比な人間と罵られていました。鬼塚も実は心を痛め、胃も痛めていました。人事部ではリストラと並行して第二新卒を募集していました。人を切る一方で人を採用するという矛盾に、鬼塚は疑念を抱いていましたが、会社人間の鬼塚が言い出すことなどできませんでした。鬼塚ができるのは、精々帰宅途中に公園のベンチで胃薬を飲むことぐらいでした。
第二新卒の研修を翌日に控えた夜、鬼塚がいつもの公園のベンチで一休みしていると、一組のカップルがはしゃぐ声が聞こえてきました。ふと見ると、どうも捨て猫をあやしているようでした。鬼塚はそのカップルの所に駆け寄りました。「君たち!飼えないなら、ちょっかいかけるんじゃない!」と鬼塚が言うと、若者たちは鬼塚に反抗するように「飼いますよ。あなたも一匹ぐらい救ってあげたらどうですか」と言い放ち、猫を一匹抱きかかえ、立ち去って行きました。一人残された鬼塚は、視線を下に向けました。するとそこには子猫が三匹、段ボール箱に入っていました。その愛らしい姿に、鬼塚は目を奪われました。子猫のか細い声に、鬼塚は心を動かされそうになりました。しかし、思い直した鬼塚は「ネコナデ声はやめろ」と呟き、家路を急ぎました。
ネコナデのネタバレあらすじ:2.鬼塚、猫を飼う
第二新卒の研修が始まりました。鬼塚のサポート役は優秀な部下・君島凛子です。鬼塚は新人たちに厳しい言葉を浴びせ、初日からスパルタ振りを見せつけました。田中亜里沙、久我珠代、長島道子ら新人たちは、その指導に強烈な違和感を覚えます。研修中、3人を含む新人は研修社員用に借りたウィークリーマンションに宿泊します。
研修初日の夜、鬼塚はいつものベンチに向かいました。前日捨てられていた子猫たちが気になって仕方がない鬼塚は、当たりを探しましたが、既に子猫たちの姿はありませんでした。鬼塚は深くため息をつきました。その時、微かに子猫の鳴き声が聞こえてきました。再度当たりを探していると、か細く鳴きながら、一匹の子猫が鬼塚の足元に姿を現しました。子猫は震えながら、鬼塚の目をじっと見つめてきました。その濁りのない丸々とした可愛い瞳に、鬼塚は釘づけになりました。気が付くと鬼塚はその可愛い子猫を抱き、家の前に立っていました。
猫を飼いたいと言う娘に「責任が取れない事を人はしちゃいかん」と諭した手前、鬼塚は子猫をコートに隠して連れ帰りました。しかし、家の中で飼うことができないと困った鬼塚は、子猫を社員用ウィークリーマンションの一室に匿い、そこで飼うことにしました。子猫を「トラ」と名付け、鬼塚は世話を始めますが、全く経験がないため四苦八苦します。そんなある日、マンションの部屋を掃除するという一報が入り、鬼塚は慌ててマンションに向かい、トラを隠しました。いつもと違う鬼塚の慌てぶりを見た凛子は、不審に思います。
ネコナデのネタバレあらすじ:3.変わっていく鬼塚
新人研修が進むにつれて、新人は脱落していきました。原因は、鬼塚の一風変わった新人研修の内容とその厳しさにありました。亜里沙、珠代、道子らの3人は、何とか喰いついていました。その中でも亜里沙は鬼塚の研修内容などを逐一、ブログにあげていました。ブログで鬼塚の研修は酷評を受けていました。
その頃、鬼塚は会社が開発した遠隔監視ロボットで、部屋にいるトラの様子を携帯電話で見ることができるようにしていました。それを利用して、鬼塚は研修中でも携帯で、こっそりトラの様子を見るようになっていました。亜里沙はそんな鬼塚の行動を見逃していませんでした。亜里沙は、鬼塚が自分たちの部屋を携帯で覗き見していると、社長宛てに手紙で訴えます。鬼塚は驚きますが、社長は不問に期しました。それは、大規模なリストラ計画も佳境に入ってきていたからでした。
新人研修で厳しく指導をしながら、リストラ社員に解雇通告するという役もこなし、鬼塚は身も心もすり減らしていました。そんな鬼塚にとって、トラは絶対的な癒しの存在となっていました。次第に鬼塚は人間らしい感情を取り戻していきました。
そして、鬼塚作詞の社歌(鬼塚曰く「作詞コンセプトは、歌っている奴がいかに間抜けに見えるか」という社歌)を一人で歌うという野外研修の日が来ました。鬼塚は新人たちに「本気で歌って、私を感動させてくれ」と要求しました。次々と鬼塚から不合格の×が出される中、珠代の番が来ました。衆人環視の中、珠代は大声で懸命に社歌を歌いました。その姿には恥ずかしいといった気配はなく、むしろ自信に満ちていました。笑みを浮かべて鬼塚は、その姿を見守りました。(もちろん「合格」)
その時、そこに最初にトラたちを見つけたカップルの男性が通りかかりました。それに気づいた鬼塚は、その若い男性のもとに駆け寄りました。徐に「トラを会わせたい」と切り出すと、男は「飼ってない」と言い出しました。意外な言葉に鬼塚は驚きました。実は男は、自分の身勝手な都合だけでその後、猫を捨ててしまったのでした。それを知った鬼塚は、思わず男を殴りつけました。事情を知らない凛子たちは、いつもは無表情な鬼塚の変化に驚きました。
ネコナデのネタバレあらすじ:4.本当の鬼塚
男に殴りかかったものの逆に殴られまくった鬼塚は、部屋で凛子がトラをあやしているのを見つけ、ビックリします。実は凛子は、鬼塚が密かにトラを飼っている事を合鍵で知って、裏でサポートをしていたのでした。
凛子は静かに鬼塚に切り出しました。「なんでこんな所で猫飼っているんです?」鬼塚は凛子の問いに本音を打ち明けませんでした。頑なに意地を張る鬼塚に、凛子は「千尋は…」と語り始めました。千尋とは新人・田中亜里沙のお姉さんでした。実は、凛子と同期入社の千尋は、鬼塚に片想いをした末に失恋し、思い悩み、自分から辞表を出そうとしたのでした。鬼塚はそんな千尋を庇うため、彼女を解雇して「冷たい男」という悪者の汚名を着ていたのでした。凛子は鬼塚のそんな優しさを見抜いていました。
ずっと姉・千尋の事を鬼塚のせいだと思い込んでいた亜里沙は、その事実を知り、研修最終日に鬼塚に謝罪しました。珠代たちも、鬼塚の厳格な指導で一回り大きくなれたと感謝しました。研修は無事、終わりました。また、リストラも佳境を迎え、鬼塚は身を切られながらも、同期の間島新次にリストラを告げました。申し訳なさそうにする鬼塚を、間島は慰めました。
ネコナデの結末:新たな人生へ
全てのリストラを終えた鬼塚は、社長・辰美に辞表を提出しました。「努力しましたが、どうしてもあなたが好きになれなかった。」「あったんだ…。好きとか嫌いとか。」「自分に自信がなかっただけです。」「ネコ被ってたな…。」
鬼塚はトラを抱いて、家に帰りました。妻・静子と娘は、鬼塚とトラを暖かく迎え入れました。
この映画の感想を投稿する