ステキな金縛りの紹介:2010年日本映画。失敗続きの弁護士エミに最後のチャンスとしてやってきたのはある殺人事件の弁護だった。弁護する容疑者は妻殺しで逮捕された男。しかし男は断固として無罪を主張する。彼にはアリバイがあった。事件の起こった夜男はある宿に泊まっていた。そしてそこで一晩中金縛りにあっていたという。事件を調べるべくその宿へ行くエミの前にその渦中の人物が現れる。「有頂天ホテル」などのヒットメーカーとして人気の三谷幸喜監督映画作品。
監督・脚本:三谷幸喜 出演:深津絵里、西田敏行、阿部寛、竹内結子、浅野忠信、ほか
映画「ステキな金縛り」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ステキな金縛り」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ステキな金縛りの予告編 動画
映画「ステキな金縛り」解説
この解説記事には映画「ステキな金縛り」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ステキな金縛りのネタバレあらすじ:起
ある晩、大きな洋館で、双子の妹・鈴子(竹内結子)と夫(KAN)の不倫現場を目撃した女主人・日野風子(竹内結子)は、妹ともみ合ううちに転落死してしまいました…。
所変わって、何をしても失敗続きの若手弁護士、宝生エミ(深津絵里)。優秀な弁護士だった亡くなった父の輝夫(草なぎ剛)に少しでも近づこうと奮闘するものの、なかなかうまくいきません。裁判に遅刻し弁論もしくじり、ついには依頼人から解雇されてしまいます。
弁護士業に自信を失くしかけたエミに、上司の速水(阿部寛)が最後のチャンスとして担当させることにした仕事は、妻の殺害容疑で逮捕された矢部五郎(KAN)という男の弁護でした。別居中の妻、鈴子は転落死でしたが、争った形跡があり、彼女の部屋にはボタンがひとつ落ちていました。そして矢部の部屋からはボタンの取れた服が見つかります。
状況はほぼ矢部が犯人であると確信させるようなものでしたが、自分は絶対に妻を殺してはいないと主張する矢部。何か確固とした証拠となるようなアリバイなどは無いのかと言うエミに、矢部は重い口を開きます。
妻が死んだ時、自殺しようとしていた自分はとある山奥の宿に宿泊していて、実はそこで幽霊を見たと。金縛りになった状態の自分の前に落武者の霊が現れて、朝まで苦しめられたという矢部の証言を信じたわけではないものの、調査のためにエミは奥多摩の旅館「しかばね荘」を訪れました。
陰気な雰囲気に包まれたしかばね荘で聞き込みをするものの、はかばかしい成果は上がらず帰途につこうとしたエミですが、天候の悪化でやむ無くしかばね荘に宿泊することになりました。
そして夜、彼女の前には髪を振り乱した落武者の霊(西田敏行)が現れました。北条氏の侍大将であった更級六兵衛と名乗る霊。裏切り者の汚名を着せられて処刑されたという六兵衛はエミの説得によって、自分と同じように無実の罪で裁かれようとしている矢部のために証言台に立つことを決意します。
タクシーやファミレスでちょっとした騒動を巻き起こしつつ、エミは六兵衛を東京へ連れ帰りました。
ステキな金縛りのネタバレあらすじ:承
しかし、事務所にいた速水には六兵衛の姿は見えず、エミは不審な目で見られてしまいます。エミは六兵衛の協力で速水が秘密でタップダンスの練習をしていることや、医者に止められている甘いものをこっそり食べていることなどを言い当て、速水は幽霊の存在を信じざるを得なくなりました。
エミが同棲している恋人の万亀夫(木下隆行)にも同じく六兵衛が見えませんが、彼は持ち前のおおらかさで落武者の霊がいると言うエミの話を受け入れてくれます。
いよいよ六兵衛を裁判で証言させるというプロジェクトが動き出しました。
証人として出廷する代わりに自分の名誉回復と慰霊碑の建立を望んでいる六兵衛。まずは六兵衛のことを調べようと歴史研究家の木戸(浅野忠信)を訪ねます。話を聞いてみると実は六兵衛の子孫で、六兵衛の無実を信じて研究に勤しんでいると言います。
六兵衛は彼の姿に感動しますが木戸には六兵衛が見えません。しかしエミの「六兵衛さんはここにいます」という言葉に、見えない先祖とその子孫は手を取り合って涙をこぼしました。
ステキな金縛りのネタバレあらすじ:転
何とか六兵衛は裁判に証人として出廷することになりましたが、まず日が落ちないと出て来られない六兵衛のため、エミと速水は必死で裁判を引き伸ばします。日没を迎えた後も、大多数の人の目に見えず、声も聞こえない六兵衛に証言させるのは至難の技。
凄腕検事の小佐野(中井貴一)の厳しい追及もあって、なかなか状況を好転させることができません。大がかりな装置を使っても、息を吹き掛けることだけは出来ると言う六兵衛に、笛キャンディを吹かせてみても、科学的な証明にはならないと一蹴されてしまいます。
しかし、一方で六兵衛が見える人がいるという事実もわかってきました。法廷画家は六兵衛の姿をはっきりと描いていたのです。そしてなんと、頑なに六兵衛の存在を否定している小佐野にも実は六兵衛が見えていたことに六兵衛自身が気がつきました。
「幽霊が見える人の共通点はなんだろう?」エミは六兵衛が見えた人々を集めて話を聞くうちに、皆が「最近あまりいいことがなく、死を身近に感じる体験をしていて、シナモンが好物である」ということに気がつきました。
一方で、真っ向から霊の存在を否定し続ける小佐野は、六兵衛が霊界から連れてきた死んだ愛犬との再会で態度を軟化させ、法廷で六兵衛の霊の存在を認めて議論することに同意し、その上、六兵衛を霊界に強制送還するべくやって来た霊界の公安局員の段田(小日向文世)を追い返してくれました。
エミ達にチャンスが訪れたように思われたのもつかの間、法廷で小佐野は「反逆者として処刑された六兵衛の証言はあてにならない」と反駁し、その弁舌にエミも証人として出廷していた木戸も歯が立ちません。エミは万亀夫にイライラをぶつけ、ついには万亀夫も家を出て行きます。
プライベートも仕事もうまくいかない中、裁判自体は「幽霊裁判」としてマスコミを通じて大きな話題になりました。しかし六兵衛ばかりが注目される状況と、思わしくない裁判の進展に被告人の矢部は苛立ち、どうせなら殺された鈴子の霊を連れてきてくれとエミをなじります。
霊界で鈴子を探し回る六兵衛ですが、見つけることができないまま、彼が地上にいられるタイムリミットが近づいてきました。そして、建設中の慰霊碑の前で、ついに念願が叶ったと涙を流す六兵衛に別れを告げます。
ステキな金縛りの結末
エミは被害者の姉・風子と夫に疑惑を抱きます。日野邸を訪れたエミは二人の不自然な言動から、実は死んだのは鈴子ではなく風子であり、二人が入れ替わったのではないかと気がつきました。
エミは糖尿病が悪化して危篤になった速水に、霊界から段田を連れて来るように頼みます。エミの前に現れた段田に、彼の好きな映画であり、エミの亡き父も愛した「素晴らしき哉、人生」を見せるかわりに風子に会いたいと頼みこみました。
そして裁判の日、風子と鈴子が入れ替わったのではないかと問い詰めるエミに、あくまでシラを切る「日野風子」ですが、エミが「風子」にシナモンパウダーを振りかけると、彼女の前に死んだはずの姉、本物の風子が姿を現します。
自分は妹と夫に殺されたのであり、法廷に立っているのは鈴子であるという本物の風子の霊の証言により、裁判は大逆転。エミは矢部の無実を勝ち取りました。
裁判の終わった薄暗い法廷で独り佇むエミ。そこに裁判の勝利を祝福すべく六兵衛がエミの父を連れてきました。しかし彼女にはもう彼らの姿を見ることができなくなっていました。やむ無くハーモニカを吹いて自分たちの存在をエミに知らせる二人。エミも彼らの存在を感じ取り、笑顔になるのでした。
以上、映画「ステキな金縛り」のあらすじと結末でした。
映画 ステキな金縛りのレビュー・感想
ステキな金縛りは三谷作品ですので期待を裏切りません。ちょっと無理矢理な設定もありますが、そこを飲み込んでしまえば存分に楽しめます。ステキな金縛りは最初から最後まで笑いっ放しです。
仕事を続けられるかどうかの瀬戸際に立たされた三流弁護士の宝生エミ(深津絵里)。最後のチャンスと与えられた仕事が妻殺しの容疑者の弁護。彼にはアリバイがあるのですが、それを証言出来るのはただひとり。犯行時間に容疑者に金縛りをかけていた落ち武者の幽霊(西田敏行)です。
ステキな金縛りが他の監督作品だったら観に行かないストーリーかもしれませんが、三谷幸喜監督作品ですから。しかも落ち武者の幽霊を演じるのが西田敏行さん。この2つの要素だけで劇場に足を運ぶ理由としては充分です。スクリーンに姿が映るだけで観客が笑顔になれる。西田さんはそんな類い稀なる存在の役者だと思います。
深津絵里さんのコメディアンヌぶりも楽しめました。「悪人」での切ない演技も良かったし、芸域の広い役者さんですね。演技の幅の広さが器用さに見えないところが良いです。
西田敏行さんは別格として、中井貴一さんがとても面白かったです。深津絵里さんと対決する凄腕検事役なのですが、多分、西田さんの次に笑ったのが中井さんの演技。アノ場面の目の演技に思わず「えっ!」と叫んでしまいました(「アノ場面」はご覧になってのお楽しみ)。
全編笑いに包まれたステキな金縛りを太い軸となるテーマが貫いています。それは「失われているものを得る事」だと思います。自信や名誉や絆など、登場人物それぞれです。ただただ笑うだけではなくて、時折ほろりとさせられるのはこれ故です。
ステキな金縛りは前作「ザ・マジックアワー」を観た方には嬉しいシーンもあって、三谷監督のサービス精神の旺盛さも感じました。サービス精神というよりも三谷さん本人が楽しんじゃっているのかもしれませんが。映画「ステキな金縛り」ぜひご覧ください。
映画 ステキな金縛りの豪華出演者
深津絵里(宝生エミ)、西田敏行(更科六兵衛)、阿部寛(速水悠)、竹内結子(日野風子/矢部鈴子)、浅野忠信(木戸健一)、草なぎ剛(宝生輝夫)、中井貴一(小佐野徹)、市村正親(阿倍つくつく)、小日向文世(段田譲治)、小林隆(管仁)、KAN(矢部五郎)、木下隆行(工藤万亀夫)、山本亘(日村たまる)、山本耕史(日野勉)、戸田恵子(猪瀬夫人)、浅野和之(猪瀬)、生瀬勝久(占部薫)、梶原善(伊勢谷)、佐藤浩市(村田大樹)、深田恭子(前田くま)、篠原涼子(悲鳴の女)、近藤芳正、唐沢寿明、大泉洋、ほか
「ステキな金縛り」感想・レビュー
-
子どもを寝かせた後、一人ワインを飲みながら映画をみました。殺人事件が発生し、ちょっと頼りない女性弁護士(深津絵里)と成仏できなかった幽霊(西田敏行)が、無罪を訴える弁護人を助けるべく、ほとんどの人から見えない、聞こえないことを前提に無実を証明しようと頭をしぼります。
金縛りをおこさせてホテルに泊まった人を怖がらせる心霊の性格は、とても親切で優しい人柄。本人も無罪を訴えながらも打ち首にされたお侍さんで、弁護人に同じ思いをさせないために、事件解決に奮闘します。西田敏行さんのやわらかい体つきと、落ち武者の恰好、設定されている性格、人情を大切にしたストーリー展開が、涙あり、笑いありで、疲れた心にしみました。一日の疲れがきれいに洗えた気がします。
さすが三谷幸喜さんの映画作品というだけあって、大物俳優が盛りだくさんで、豪華な気分を味わえます。たくさん笑って元気がでる映画だと思いました。 -
三谷幸喜監督の作品とくれば、面白い作品だろうと思い観ました。
予想通り楽しめる面白い作品でした。
クスリと笑う場面が多く、役者さんたちのコミカルな動きにも笑いました。
また、意外な犯人には驚きました。そして、最後はいい話で終わりました。 -
双子の入れ替わりって古畑任三郎の最終話とも似てるな
-
『ザ・マジックアワー』を観て、三谷幸喜さんの作品のファンになり、今作を観ました。期待通りに面白くて、ほっこりできる作品でした。出演者は毎度のこと豪華で、それだけでも観ていて楽しいのですが、なんといってもストーリーが最高です。ある殺人事件の容疑者にされた男性が、「その時刻は金縛りにあっていたから犯人じゃない」と供述しており、それを弁護士である主人公のエミが証明していくというお話で、エミは証人として、その金縛りを起こしていた落ち武者の幽霊を連れてきます。でも、その幽霊の姿を誰も見ることができず、苦戦してしまい、敵対する検事に追い込まれていきます。私が特に好きだったのは、中井貴一さん演じる検事が、実は幽霊が見えているのに見えないふりをするところです。だんだん見えていることがバレていくシーンは本当に面白くて、中井さんの演技が素晴らしかったです。検事の亡くなった愛犬を天国から連れてきて、検事に会わせるシーンは本当に面白く、一般の人には犬の幽霊が見えていない中、じゃれ合う中井さんのシーンは最高でした。ぜひ観てほしい作品です。
三谷映画の中でも群を抜いて面白いコメディ映画です。大好きで何度も見ています。三谷ファミリーで、どの作品でも癖のある役を演じている、西田敏行がこの映画では落ち武者の幽霊役という、見る前から絶対面白いだろー!な役で主役を演じています。その他のキャストもみなさん豪華です。特に、竹内結子演じる正反対な性格の双子の姉妹がツボでした。爆笑の中にもほろっとさせてくれる部分のある作品です。