少年Hの紹介:2012年日本映画。グラフィックデザイナーで舞台美術家、エッセイストでもある妹尾河童の自伝的小説が原作。洋服の仕立て屋の父を中心に、家族4人が戦争を生き抜く姿が描かれます。
監督:降旗康男 出演:水谷豊(妹尾盛夫)、伊藤蘭(妹尾敏子)、吉岡竜輝(妹尾肇(H))、花田優里音(妹尾好子)、小栗旬(うどん屋の兄ちゃん)、早乙女太一(オトコ姉ちゃん)、ほか
映画「少年H」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「少年H」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
少年Hの予告編 動画
映画「少年H」解説
この解説記事には映画「少年H」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
少年Hのネタバレあらすじ:起
1941年神戸。妹尾肇は着させられている「H.SENO」と書かれたセーターが嫌なので、新しいセーターを買ってもらいますが、そのセーターにも「H」と刺繍されてしまい、皆から「H」と呼ばれるようになります。肇と、洋服の仕立て屋を営む父の盛夫、母の敏子、2歳年下の妹、好子の4人家族はクリスチャンで、毎週教会に通っていましたが、ある日、宣教師ステープルス先生が母国アメリカに帰国してしまいます。開戦が近づいているからでした。
少年Hのネタバレあらすじ:承
肇はアメリカの100階建てのビルが描かれた絵葉書を貰います。ある日、肇は仲良くしている、近所のうどん屋の兄ちゃんに赤いラベルが貼られたレコードを聞かせてもらいます。赤いラベルのレコードは高級なので、肇は「今度から赤盤の兄ちゃんと呼ぶ。」と言って、うどん屋の兄ちゃんに怒られます。その後、その兄ちゃんがアカ(反政府主義)の人だったと分かり、警察に逮捕されました。盛夫は肇に、兄ちゃんと仲が良かった事は誰にも言わないように、言い聞かせます。
少年Hのネタバレあらすじ:転
肇が国民学校5年生の時、太平洋戦争が始まりました。赤紙が来た女形の旅芸人オトコ姉ちゃんが行方不明になり、憲兵たちが探しますが、首を吊っているのを肇が見つけてショックを受けます。仕立ての注文がなくなったので、消防手となっていた盛夫ですが、クリスチャンで、そのうえ外国人の洋服も仕立てていた事、肇の持っていたアメリカの絵葉書などから、スパイと疑われ、ある日突然、家に乗り込んで来た刑事に連行されます。一晩拘留され、帰ってきましたが、指を傷めていました。
少年Hの結末
中学生になり、肇は学校で軍事訓練、好子は学童疎開します。1945年3月、神戸を大空襲が襲います。火に取り囲まれる中、肇と敏子は盛夫の商売道具のミシンを2人で抱えて逃げようとしますが、火の勢いが強いうえ、ミシンは重すぎて運べず、断念してミシンを置いて逃げます。神戸は一面焼け野原となりましたが、家族は全員無事でした。8月、終戦を迎え、好子も帰ってきました。平和な生活ですが、貧乏なのに困っている人に米を分け与えてしまう敏子に怒った肇は、自殺する気で線路に寝転がりますが、死ねずに家に帰ります。家では、盛夫がミシンを修理していました。
「少年H」感想・レビュー
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伊藤蘭と少年Hのやりとりで伊藤蘭が涙を溜めながら困ってる人に白米を分け与えるシーンにこの映画の真髄を見た。苦労している人こそ人の心の痛み悲しみがわかるのだと信じたい…それをどんな障害があっても行動に移せる人でありたい
ごく慎ましく生きている人々の日々の営みが、戦争という抗えない力に巻き込まれた時のやるせなさや哀しみを、淡々と静かに語りかけてくる、妹尾河童さんの自伝的物語。両親役の水谷豊さんと伊藤蘭さんの、どんな時も誰に対しても誠実であろうとする姿勢に心を打たれ、また実のご夫婦としての重ねた年輪の味わいも加味され、更にじわじわと五臓六腑に染み渡る。
河童さんはその後、うどん屋の兄ちゃんにレコードを聴かせて貰った名歌手藤原義江とたまたま出会い、書生として住み込みつつ舞台美術への道を歩み始める事となった。まさに運命としか言いようがない。スコットランド人とのハーフだった藤原義江は軍歌も沢山吹き込んでいたようで、稀代の色男も戦時中を生き延びるのにご苦労されたのだなぁ、と何だか切なくなった。