ヤクザと家族 The Familyの紹介:2021年日本映画。日本アカデミー賞など数々の映画賞に輝いた『新聞記者』(2019年)の藤井道人監督とスタッフが贈る、ヤクザの世界に足を踏み入れた孤独な若者と父親代わりとなったヤクザ組長との絆を、1999年・2005年・2019年の3つの時代に分けて描いたヒューマンドラマです。綾野剛と舘ひろしがダブル主演を務め、綾野剛は19歳時から39歳時までの全ての年代の主人公を一人で演じ切っています。
監督:藤井道人 出演者:綾野剛(山本賢治)、舘ひろし(柴咲博)、尾野真千子(工藤由香)、北村有起哉(中村努)、市原隼人(細野竜太)、磯村勇斗(木村翼)、菅田俊(竹田誠)、康すおん(豊島徹也)、小宮山莉渚(工藤彩)、二ノ宮隆太郎(大原幸平)、駿河太郎(川山礼二)、岩松了(大迫和彦)、豊原功補(加藤雅敏)、寺島しのぶ(木村愛子)ほか
映画「ヤクザと家族 The Family」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ヤクザと家族 The Family」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ヤクザと家族 The Familyの予告編 動画
映画「ヤクザと家族 The Family」解説
この解説記事には映画「ヤクザと家族 The Family」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ヤクザと家族 The Familyのネタバレあらすじ:第1章:1999年 出会い
19歳の山本賢治(綾野剛)は金髪に白い上下で身を固め、その暴力的な性格でチンピラとして地元で暴れまわっていました。山本は幼い頃に母を亡くし、証券マンだった父はバブル崩壊後に手を出した覚醒剤が元で命を落としていました。
天涯孤独となった山本は父の葬式の席で静岡県警刑事の大迫和彦(岩松了)に父を侮辱され、あげくに覚醒剤使用を疑われて検査を受けさせられることになりました。自暴自棄になった山本は偶然出くわした覚醒剤の売人を殴り、金と覚醒剤を奪って逃走すると、覚醒剤を海に投げ捨てました。
山本は悪友の細野竜太(市原隼人)や大原幸平(二ノ宮隆太郎)とつるんではその日暮らしを送っていました。ある日、山本は細野と大原を連れ、行きつけの食堂で飲んでいました。食堂を営む木村愛子(寺島しのぶ)はまるで母親のように山本に接してくれているのです。
そこに現れたのは暴力団「柴咲組」組長の柴咲博(舘ひろし)でした。実は愛子の亡き夫は柴咲組の若頭であり、敵対する「侠葉会」との抗争で命を落としていました。柴咲は愛子のことを気にかけていたのです。そんな時、突然拳銃を持った何者かが柴咲を襲撃してきました。山本は食事を邪魔されたことに腹を立て、その襲撃者を叩きのめして柴咲の危機を救いました。これが山本と柴咲の出会いでした。
後日、山本は柴咲の部下・中村努(北村有起哉)に連れられ、柴咲組の事務所を訪れました。柴咲は身寄りのない山本を組に誘おうとしましたが、かねてから父に覚醒剤を売りつけたヤクザに憎しみを抱いている山本はこれを拒否しました。それでも山本は柴咲の名刺だけは受け取り、その場を後にしましたが、その直後に山本は侠葉会の組員によって拉致されました。
実は山本が先日海に捨てた覚醒剤は侠葉会のものであり、山本は捕らえられていた細野や大原と共に、侠葉会の若頭・加藤雅敏(豊原功補)と若頭補佐・川山礼二(駿河太郎)らから凄惨なリンチを受けました。加藤は山本らを香港に連れて行き、臓器を売りさばこうとしましたが、たまたま山本のポケットに入っていた柴咲の名刺を見つけました。柴咲組と侠葉会は一度手打ちになっており、迂闊に手を出すのは危険と判断した加藤らは柴咲組に連絡を入れました。
山本たちは中村に迎えられ、柴咲組の事務所に入りました。自分のことを“ケン坊”と呼んで迎え入れてくれた柴咲の人間性に魅了された山本は柴咲組に入る決断をし、柴咲と父子の盃を交わしました。
ヤクザと家族 The Familyのネタバレあらすじ:第2章:2005年 誇りを賭けた闘い
6年後。柴咲組の一員となった山本は髪を黒に戻し、黒いスーツに身を固め、背中に修羅蔵の刺青を入れていました。山本は細野や大原と共に街の顔役となっていましたが、柴咲組は未だに加藤が組を仕切るようになった侠葉会との対立状態に置かれていました。
ある時、山本はキャバクラで川山と鉢合わせました。川山に柴咲を侮辱された山本は腹を立て、瓶で山本の頭を殴りました。その際、手に傷を負った山本の手当てをしてくれたのがホステスの工藤由香(尾野真千子)でした。山本は自分と同じく家族のいない由香を気に入り、また柴咲からも家族を持つよう促されていたことから強引に由香を抱こうとしましたが、気の強い由香に拒絶されてしまいます。それでも山本は何とか由香の電話番号だけは聞き出しました。
翌日、山本が川山に暴行した件が引き金となり、柴咲組と侠葉会は一触即発の事態に陥りました。柴咲は直接加藤の元に出向いて手打ちしようとしましたが、一歩も引くつもりのない加藤は柴咲が大事にしている義理と人情はもう古いと柴咲を挑発しました。柴咲は加藤に「そこまで言うなら俺の命を取ってみろ!」と啖呵を切りました。
その一方、山本は由香に心の安らぎを感じるようになっていきましたが、未だに由香は山本になびいてはくれませんでした。山本は柴咲と釣りに向かう車内で由香のことを相談しましたが、その直後に車は侠葉会の組員に襲撃され、車を運転していた大原が身代わりとなって命を落としました。
山本は柴咲に仇を討たせてほしいと懇願しますが、大迫はこの件に手を出さないよう柴咲組に釘を刺してきました。大迫は、これからは社会でヤクザを裁くのは法や警察ではなく世の中全体であると説き、もはやヤクザの時代は終わろうとしていることを唱えました。
それでも引き下がることのできない山本は柴咲組を守るため、単身で加藤の元に乗り込みました。そして山本が川山に向けて銃の引き金を引こうとしたその時、柴咲組若頭となった中村が「ケン坊、親父のことを頼んだぞ」と駆け付け、包丁で川山を刺しました。
山本は柴咲組を守るには中村が必要と判断し、自ら罪を被って中村を逃がしました。山本は由香の部屋を訪れ、そのまま彼女と結ばれました。翌日、山本は川山殺害の罪で逮捕されました。
ヤクザと家族 The Familyのネタバレあらすじ:第3章:2019年 激変した世界
14年後。山本は刑期を終えて出所しました。中村に出迎えられ、14年ぶりに柴咲組に舞い戻った山本でしたが、今や柴咲組は山本の服役中に施行された「暴対法」の影響で大量の組員が辞めてしまっており、もはや残った組員はわずか6人という存続すら危ぶまれる状況に置かれていました。そして柴咲も癌ですっかり体が弱っており、山本は現実に衝撃を受けました。
細野は柴咲組を抜けて堅気の仕事に就いており、結婚して子供も生まれていました。山本は細野と再会を果たしましたが、暴対法には“5年ルール”があり、ヤクザから足を洗っても5年間は口座も保険も家も持てず、携帯電話すら持つことを許されないなど人間として扱われない現実を嫌というほど味わってきた細野は山本を避けるような態度を取りました。山本はそんな細野に飯を奢ろうとしましたが、細野は未だに“反社”である山本から金を受け取ることを頑なに拒絶しました。
一方、幼い頃から山本を慕っていた愛子の息子・翼(磯村勇斗)は22歳となっていました。暴対法の制約を受けない“半グレ”の世界に身を置く翼は山本と柴咲組を助けるため、柴咲組のシノギを手伝いながら山本の代わりに街を仕切っていました。かねてから翼に目を付けていた加藤は翼を侠葉会に誘いましたが、翼はこれを拒否しました。加藤は「親父と同じ目に遭わないといいな」と捨て台詞を吐きました。
山本は由香と14年ぶりに再会を果たしました。由香はホステスを辞めて市役所で働いており、山本との間に14歳になる娘・彩(小宮山莉渚)をもうけていました。柴咲は山本に、組を抜けて堅気の暮らしを送るよう勧めました。
ヤクザと家族 The Familyの結末
ヤクザの世界から足を洗った山本は、由香と彩の三人で新たな暮らしを始めました。生まれて初めて穏やかな日々を手にした山本は細野の紹介で、廃棄処分工場で働き始めましたが、そんな山本たちにはなお“元ヤクザ”という肩書きが重くのしかかっていました。
そんなある日、山本と細野は廃棄処分工場の同僚に過去を知られてしまい、それがSNS上で拡散してしまったことから山本と細野は工場に居られなくなってしまいました。そして由香も“元ヤクザで殺人犯”と同棲していることがバレてしまい、仕事をクビになったあげく社宅も追い出されてしまいました。山本は由香に詫びようとしましたが、由香は「あんたが来なければ、全部上手くいっていた」と拒絶しました。
全てを失った山本が向かったのは愛子の食堂でした。山本はそこで翼から「親父を殺した奴が分かった」と聞かされました。翼の目にかつての自分と同じような危ういものを感じ取った山本は翼を「お母さんを悲しませるな」と説得すると、自ら落とし前をつけるために食堂を飛び出していきました。父が加藤に殺されたと確信した翼は、仇を討つために復讐の為に加藤と大迫のいる中華店を襲撃しましたが、既に加藤と大迫は山本の手によって殺害された後でした。
全てを終えた山本は返り血を浴びたまま港の防波堤に座り、煙草をふかしていました。そこに細野が現れ、「お前さえ戻って来なければ」と山本を刺しました。仕事も家族も全てを失った細野は落とし前をつけるために山本を刺したのであり、全てを受け入れた山本は細野を笑顔で抱きしめると海の中へと落ちていきました…。
…数日後。翼と彩は山本の死んだ防波堤を訪れ、花束と山本の好きだった煙草を手向けました。父のことが知りたいという彩に、翼は笑顔を見せながら語り始めました。
以上、映画「ヤクザと家族 The Family」のあらすじと結末でした。
「ヤクザと家族 The Family」感想・レビュー
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裏社会の人への同情はしませんが、残された家族が哀れ。
ラストの「父さんって、どんな人だったの?」には、涙が流れている。
ヤクザの華やかな時代と暴力団対策法制定後の時代が対照的に描かれています。夜の店のボディガードなどで華やかに稼げていた時代のヤクザと、違法薬物の取引をしたり海産物の密漁で後ろめたい思いをしながら稼ぐヤクザたちが対照的です。暴対法後のヤクザへの対応は、本当に厳しいのことがわかります。口座が作れない・携帯電話の契約ができないなど、生活するのに必要なサービスすら使えません。元ヤクザとわかれば潮が引くように人が自分から去っていきます。更生できないつらさが染み渡る映画でした。あと、携帯電話の進化で時代がわかるのは、面白いところでした。