さくらの紹介:2020年日本映画。「サラバ!」で第152回直木賞を受賞した西加奈子の「あおい」に続くデビュー2作目「さくら」。累計55万部超えのこのベストセラー小説が主演級の俳優を揃えた最強の布陣で満を持しての映画化。主人公のひとり、モノローグも担当する三兄妹の真ん中薫を演じるのは、この作品を含め2020年公開作品が5本にのぼる北村匠海。薫が憧れる人気者の長男一を吉沢亮、その長男を慕う末っ子で甘えん坊の美少女美貴を小松菜奈が演じ、確かな演技力と高い顔面偏差値で観客を魅了する。
監督:矢崎仁司 原作:西加奈子 主題歌:東京事変「青のID」 キャスト:北村匠海(長谷川薫)、小松菜奈(長谷川美貴)、吉沢亮(長谷川一)、寺島しのぶ(長谷川つぼみ)、永瀬正敏(長谷川昭夫)、小林由依(欅坂46)(大友カオル)、水谷果穂(矢嶋優子)、山谷花純(須々木原環)、加藤雅也(溝口先史)、趙珉和(フェラーリ)、ちえ(サクラ)ほか
映画「さくら」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「さくら」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
さくらの予告編 動画
映画「さくら」解説
この解説記事には映画「さくら」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
さくらのネタバレあらすじ:起
大学生の長谷川薫(北村匠海)は年末、大阪の実家に帰ってきました。2年前に出ていった父の昭夫(永瀬正敏)が久しぶりに戻ってきたというので帰ってきたのです。
母のつぼみ(寺島しのぶ)、妹の美貴(小松菜奈)と4人で晩ごはんを食べますが、ギクシャクして話は盛り上がりません。でも美貴が飼い犬のサクラを室内に入れると、家族は一気に笑顔になるのでした。
子どものころ、長谷川家の兄妹・一、薫、美貴の三人は薫の部屋の二段ベッドで寝ていました。ある夜、三人は母の喘ぐ声を聞いてしまいます。翌日、美貴は母に昨夜の変な声は何だったのか質問します。男たちはあわてますが、母はていねいに子どもができるということを説明し、美貴に「生まれてきてくれてありがとう」と微笑むのでした。
その美貴が生まれたとき、兄ふたりは妹にプレゼントするための花を探しにでかけ、いなくなったと大騒ぎになりパトカーに乗って帰ってきたことがありました。そのときの兄は、叱られても一切言い訳せずに黙っていました。
薫が帰省した翌日、長谷川家では恒例の餃子づくりが始まります。かつて父と母の初デートがうまいと評判の餃子屋で、緊張した母はそれに手をつけることができませんでした。一年後、できちゃった婚をすることになったふたりは同じ店を訪れ餃子を食べました。それ以来、長谷川家では大事な日に餃子をつくって食べるようになったのです。
今の家に引っ越してくる前、家族は別の家に住んでいました。近所には「フェラーリ」と呼ばれるちょっと頭のおかしい男(趙珉和)がいて、そいつをからかってギリギリまで近づくという度胸試しが流行っていました。ある日、幼い美貴がその男に狙われてしまい、一と薫は走ってきて美貴をかばいます。すると男は突然「思い出した」と言うと立ち去ってしまいました。その後、家族は高台にある今の一戸建てに引っ越したので二度とフェラーリの姿を見ることはありませんでした。
父は高給取りではありませんでしたが、三人の子どもにそれぞれ個室を用意しました。引っ越してきた日、一は美貴にくるみを渡して「今日からひとりで寝るんやで」と言いました。でも結局甘えん坊の美貴のため、薫の部屋に置かれた二段ベッドの下に薫、上に一と美貴が寝ていたのです。
飼い犬のサクラはそのころ長谷川家にやってきました。美貴と薫がもらいに行き、数匹の中から薫が選んだのです。その選択は間違っていなかったと、薫はいまでも思っています。
高校生になると、一は野球部で活躍し目立つ存在になっていました。地味な薫は兄宛てのプレゼントを渡されたりしますが兄に対する嫉妬はなく、ヒーローのように思っていました。
あるとき、一が家に彼女を連れてくると言い出しました。母は張り切って果物やアップルパイを用意しますが、やってきた彼女・矢嶋優子(水谷果穂)は派手で無愛想。母と美貴は案の定文句を言いまくっています。
一は薫に、優子が既に経験済みらしいと話し、どんな男が相手だったのか悶々としています。
それから優子はたびたびやってくるようになりましたが、そのたびに美貴はバスケットボールを壁にぶつけて音を出し、嫌がらせをするようになっていきました。
さくらのネタバレあらすじ:承
あるとき、父宛てに溝口サキコという名前で手紙が届きました。怒った母が問い詰めると相手は同級生だと父は言い、卒業アルバムで写真を指さします。「溝口先史」、写真の人物は男子でした。
家族は5人揃って、サキコ(加藤雅也)がオープンさせたオカマバーへやってきました。母は安心したのかすっかり上機嫌で父とダンスを踊り、子どもたちはサキコの話に耳を傾けます。「いつかウソをつくときは、愛のあるウソをつきなさい」そういうサキコの手を、美貴はそっと握るのでした。
家にやってくる優子は次第に穏やかな表情になり、薫は“恋”の力はすごいと思うようになっていました。一方、一のことが大好きな美貴の怒りは日増しに大きくなっていきます。
そんなある日、薫は同じ学年の須々木原環(山谷花純)に声を掛けられ彼女の部屋へついていきます。帰国子女で奔放な環はすぐに薫を誘惑し、初めて薫はセックスしました。
そのことを報告すると一は祝福してくれますが、優子が九州に引っ越すことになったと落ち込んでいました。
一と薫は引っ越しを手伝い、去っていく優子を見送ります。いつか必ず結婚しようと誓い合うふたりの別れを間近でみた薫は、自分は環のことを好きかどうかわからないと思っていました。
どこか晴れ晴れとしている美貴には、初めて仲の良い友だちができました。大友カオル(小林由依)は同じバスケ部で、大家族のためか美貴の家で夕食を食べることが多くなっていました。他人を寄せ付けないようなふたりの態度が気に入らないのか、不良っぽい女子グループにからまれますが、美貴とカオルは怯むことなく反撃し相手を退けます。
大学生になり家を出ていた兄が夏休み、久しぶりに帰ってきました。優子からの手紙が途絶えて思い悩んだ一はサキコに相談し、バイトして自分のお金で九州へ会いにいく決意を固めていました。しかしその夜、コンビニに行くと家を出た一を悲劇が襲ったのです。
さくらのネタバレあらすじ:転
交通事故に遭ってしまった一は下半身が動かせなくなり、顔の右半分の表情を失ってしまいました。家族が沈鬱な表情になる中、なぜか美貴は子どものようにはしゃぎ一を苛立たせます。そんな折、薫は環と別れていました。環に好きな人ができたそうです。
車イスで帰宅すると、玄関への長い階段が一に立ちふさがります。おしりと両手を使って一段一段登っていきますが、途中で天を仰ぎ一は泣くのでした。
それからというもの、一は暗くふさぎ込み、突然怒り出し、家の中の雰囲気は最悪でした。それでも、変わらず接してくるサクラといるときだけは穏やかな顔を見せていました。
美貴の卒業式の日、ちょっとした事件がありました。卒業証書を受け取ったあと、カオルがマイクを奪って大暴れし、「長谷川美貴が好きです」と宣言したのです。他の人がどう思おうと、美貴だけはカオルの気持ちを否定せずに受け入れてくれた、と。そして、自分のような人間が世の中にはいる、それがおかしくない時がくる、だからその時のために努力すると話し、颯爽と席へ戻りました。その姿を見て美貴は微笑んでいました。
そんな美貴は進学せず、家で一の世話をしていました。公園で、子どもたちが自分の顔を見て逃げ出してしまったことを受け、まるで「フェラーリ」みたいだと一は話します。そして神様は、以前は気持ちいい直球を投げてきていたのに最近は打てない悪送球しか投げてこないと言って涙をこぼします。たまらず薫は「泣くな!」と叫び、ヒーローだった兄のこんな姿は見たくないと感情を爆発させますが、それを父が止めるのでした。
薫が部屋で勉強していると、赤いランドセルを持って美貴が入ってきました。それをひっくり返すと中から、きれいな色の封筒が大量に出てきました。それは優子から一への手紙でした。すべて美貴が隠していたのです。しかも一の筆跡を真似て絶縁の返事まで出していました。美貴はボロボロと涙をこぼしながら暗記しているその文面を語り続け、苦しむ優子や一の気持ちが痛いほど心に刺さった薫は、血が飛び散るほど美貴を殴りつけるのでした。
一は自ら命を絶ちました。残されたメモには「この体でまた年を越すのは辛いです。ギブアップ!」と書かれていました。葬儀会場で美貴は童女のように振る舞い、参列していたサキコにそっと連れ出されます。
その後姿を消した父は、勤めていた運送会社も辞めていましたが、毎月定期的にお金を振り込んできていました。美貴は一を思い、大量の手紙に埋もれくるみを体に這わせ自らを慰めるのでした。
薫は一浪して東京の大学へ。それを見送るのは母つぼみ、妹美貴、サキコ、そしてサクラでした。
さくらの結末
大晦日。4人揃って一の墓参りをしたあと帰宅すると、サクラの様子がおかしいことに美貴が気づきます。
こんな日にやっている動物病院があるのかわからないまま4人は車に乗り込み、あちこちの病院を訪ねますがどこも開いていません。
ずいぶん遠くまでやってきました。
車内では美貴が、「好きな人ができたら好きやって言う。子供ができたらその子に、好きな人ができたら好きって言いなさいって言う」と話しています。「お兄ちゃんみたいにどっか行ってしまうかもしれへんから」と。そして、「お兄ちゃんは死んだけど、やっぱり生まれてきてくれてありがとう、そう思ったやろ」と両親に問いかけます。
薫は、ボールを投げていたのは神様ではなく僕らだったのだと気づきます。何かあるたびにボールを投げ続け、それを兄は全部受け止めた。恥ずかしいけどそれが愛なのだと…。
そうこうするうちに車はパトカーに止められ、怪しむ警察官に「病人がいるんです」と家族は訴えます。
ブウゥ~!
すごい音とともにサクラは美貴の手のひらに脱糞しました。サクラは元気になり、薫たちはパトカーで送ってもらうことに。するといつの間にか年は明け、窓の外には美しい初日の出が見えていました。
新年を迎えた長谷川家では楽しそうに餃子を食べています。
そして薫は思うのです。世界中のあらゆる場所にボールを待っている誰かがいる。どんな悪送球でも受け止めてしまう、そんなあなたの愛は僕を世界の高みに連れていってくれるのだと。
以上、映画「さくら」のあらすじと結末でした。
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