海街diary(海街ダイアリー)の紹介:2015年日本映画。吉田秋生のベストセラーコミック「海街diary」を是枝裕和監督が実写映画化。14年前に家を出ていった父が残した娘すず。鎌倉に暮らす三姉妹は父と母が家を出て行ってから祖母と3人で暮らしてきたが、父の葬式でもう一人の妹すずに出会う。そして3人ではなく4人になった姉妹の新たな生活が始まり、家族の絆を深めていく姿を描く。2016年の第39回日本アカデミー賞では最優秀作品賞を含めて4つの最優秀賞と、12の優秀賞を受賞した。
監督:是枝裕和 キャスト:綾瀬はるか(香田幸)、長澤まさみ(香田佳乃)、夏帆(香田千佳)、広瀬すず(浅野すず)、加瀬亮(坂下美海)、鈴木亮平(井上泰之)、池田貴史(浜田三蔵)、坂口健太郎(藤井朋章)、
樹木希林(菊池史代)、リリー・フランキー(福田仙一)、風吹ジュン(二ノ宮さち子)、堤真一(椎名和也)、大竹しのぶ(佐々木都)、ほか
映画「海街diary」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「海街diary」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
海街diaryの予告編 動画
映画「海街diary」解説
この解説記事には映画「海街diary」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
海街diaryのネタバレあらすじ:起
三姉妹の長女・幸(綾瀬はるか)、次女・佳乃(長澤まさみ)、三女・千佳(夏帆)は、鎌倉で古い2階建ての家に暮らしています。ある日、15年前に家族を捨てて家を出ていた父が亡くなったという知らせをもらう三姉妹。幸は仕事があるため、佳乃と千佳の二人で葬儀へ行くこととになりました。
15年前に会ったきりの父親の葬式に行くことに後ろ向きな二人。電車に乗り、父親がいた頃の話をする佳乃ですが、まだ幼かった千佳は覚えていません。電車を降りた二人は、あまりの田舎に驚きます。腹違いの妹・すず(広瀬すず)が駅まで迎えに来てくれて、旅館まで連れて行ってくれました。
翌日、葬式には出席できないと思っていた夜勤明けの幸が駆けつけます。すずは父が15年前に浮気をして家を出ていたときに再婚した、2回目の妻との間で生まれた女の子です。しかし葬式にいた妻は2回目の妻ではなく、すでに2回目の妻と別れていて再婚した3回目の妻でした。
火葬が終わり、煙突から出る煙を見てあっけらかんとしている幸たち姉妹。父の葬式にはたくさんの人が訪れていたことから、父親が幸せに暮らしていたのだろうと三姉妹は考えました。かつての父は、友人の借金の保証人となり、しかも女性関係に甘く、そんな父親をいまだに許せない幸。
葬式を終えて帰ろうとする三姉妹を、すずが走って追いかけてきます。そして、父親の机に入っていた三姉妹が子供の頃の写真を届けてくれました。帰る電車まで時間が少しある幸は、すずに「ここで一番好きな場所に連れて行ってほしい」と頼みます。
すずは三姉妹を山の頂上に連れて行き、父親とよく山に登ったことを話てくれました。中学生としては大人しく、落ち着いているすずを見たときに、幸はすずが昔の自分と似ていると感じます。そして看護師をしている幸はすずを見て、父の世話をしてきたのは3回目の妻ではなく、すずだったことに気がつき、感謝の気持ちを伝えました。
父が亡くなってすずはその3回目の妻と一緒に暮らすしかない状況になってしまい、それが気になった幸は別れ際に、鎌倉で自分たち三姉妹と一緒に暮らすことをすずに提案します。それを横で聞いていた佳乃や千佳も賛成し、すずは一瞬戸惑いましたが、すぐに「いきます」と、一緒に暮らすことを決意するのでした。
そうやって三姉妹から四姉妹での生活が始まりました。
海街diaryのネタバレあらすじ:承
引っ越しも済んで、新しい中学に転校してきたすずは、すぐにクラスに馴染み、サッカー部に入って友達ともすぐに仲良くなります。すずは姉たちが好きで新しく始まった生活が楽しくて幸せだと思いながら、次第に3人の姉妹にとって自分の存在自体が傷ではないかと不安に思いはじめることとなります。
亡くなった幸たちの祖母の妹(樹木希林)は、すずを引き取ったことを心配します。そして、「これでまた嫁に行くのが遅れるわ…」と、嘆きます。父が家を出ていってからすぐに母の都(大竹しのぶ)も家を出て行ってしまったので、祖母と暮らしていた三姉妹。祖母が亡くなってからは、三姉妹だけの生活をしています。
幸は母と父の役割をして、佳乃と千佳を育てました。妹たちに対して両親のような責任感を持っている幸ですが、父が浮気して自分たちを捨てて家を出て行ってしまったという過去があるにもかかわらず、看護師として働く幸も、妻がいる医師・椎名和也(堤真一)と恋愛をしていました。椎名の妻は心の病気でずっと床にふせているため、なかなか離婚することを決められない椎名。しかし幸は彼に、文句を言うことなく付き合い続けています。
一方の佳乃は、信用金庫で働く、恋と酒が好きな女性です。いつもダメな男と恋愛ばかりして、最後には男に傷つけられてしまいます。この時は大学生の朋章(坂口健太郎)と付き合っていました。いつも佳乃が金を朋章に渡していたのですが、ある時、信用金庫の窓口に朋章が来て、「通帳を全額解約したい」と言います。その朋章の隣には強面の男性がいて、これまで朋章に貸していた金は、強面の男性に全部渡していたことを知る佳乃。留守番電話には朋章から「もう少しマシな男を見つけてください」とだけ伝言があり、佳乃はフラれたあげく貸した金も返してもらえず、酒を飲んで荒れるのでした。
そして三女の千佳はスポーツ店『スポーツマックス』で働いており、ちょっと変わった性格の彼女は、少し独特な浜田店長(池田貴史)と恋愛をしています。
三姉妹も新しく来たすずも、表現はしないだけで、心の中はいつも何か傷を抱えて生きていました。
ある日、サッカーでゴールをしたすずを祝うために、梅酒で乾杯をしようとした千佳。しかし梅酒に佳乃が焼酎を入れており、それを知らずに飲んだすずは酔っ払って荒れてしまいます。これまで溜まっていた愚痴をさらけ出すすず。そして横になって寝ているすずを、まじまじと見つめる幸たち。目を覚ましたすずに、「来年はすずのためにアルコール抜きの梅酒を作ってあげる」と幸は約束し、三人で庭の梅の木を眺めました。
それからも4人は本当の姉妹のように時を過ごし、ある日、すずを連れて三姉妹が一番好きな食堂・海猫食堂に行きます。3人の思い出が一番多い食堂で、二ノ宮おばさん(風吹ジュン)は三姉妹が子供の頃も全部覚えているほど仲がいいおばさんです。その食堂で定食を食べながら、思い出話をする4人。そうやってすずも、姉たちの思い出を一緒に共有するようになります。
海街diaryのネタバレあらすじ:転
庭の梅の木から実をとっていると、音信不通だった三姉妹の母で、今は札幌に住んでいる都が祖母の七回忌に来ると連絡があります。これまでまったく顔を見せなかった母親が、急に帰ってくることになり、嫌な予感がする幸。
七回忌当日、遅くにやってきた都は、始めて会うすずに「幸はしっかりしてててきついでしょ、私の分もしっかり者になっちゃったの。仲良くしてあげてね」と語りかけます。法要の後、突然四姉妹が住んでいる家を売りたいと言いだす都。これに幸は大反対して、「この家を売る権利なんかあなたにはない」と、強く言います。佳乃は二人を止めますが、結局喧嘩をして言い争いは止まらなくなります。
『自分が出ていったのは、女を見つけて出ていった父が原因で、自分が三姉妹を連れて出ていけなかったのは叔母さん(祖母の妹)に駄目だと言われたからだ』と話す都。叔母さんがけんかを仲裁するも、幸と都が仲直りをしないままこの日は過ぎていきました。このやり取りを聞いていたすずは、自分の母親が幸たちの父親を奪ったことを申し訳なく思います。
その晩、すずが幸とゴハンの準備をしているときに「ごめんない、うちのお母さんのこと。奥さんがいる人を好きになるなんてお母さん良くないよね。」と言います。幸は「ごめんね、私たちはすずを傷つけちゃったんだね、でもあれはどうすることもできないことで、誰のせいでもないんだよ」と返します。三姉妹の生活を壊してしまったのは、自分の母親のせいだと思っているすず。
次の朝、都が渡しそびれた土産を持って、四姉妹の家にやって来ます。祖母の墓参りに行く都を追いかけ、幸も付いていくことにしました。雨の中、傘をさして歩く二人。都は「叔母さんに怒られちゃった。あそこはもう姉妹の家だね。私にとっては息苦しい場所だったけど、あなたたちには大切な場所ね。」と話します。こうして墓参りをしながら仲直りできた二人。
都が札幌に帰る前、幸は祖母が亡くなる前に作っておいた梅酒を都に渡しました。その梅酒に喜ぶ都。母親に対して傷がある幸ですが、大事な祖母の最後の梅酒を渡して嬉しがる母を見て、安心するのでした。そして、「たまには鎌倉に帰っておいでよ」と幸は言い、二人は別れました。
海街diaryの結末
男に振られとことを忘れようと、これからは仕事に生きることを決めた佳乃は、これまでは信用金庫の窓口業務でしたが、課長について外回りの仕事を始めました。すると、海猫食堂の二ノ宮おばさんから、店のことについて相談されます。店を手放さずにこのまま商売を続けていく方法を相談されて、佳乃と上司がその報告をするために海猫食堂を訪れていたのですが、病気が進行したおばさんは店を手放すことを決めたことを伝えました。
おばさんが病気になり、やるせない思いの佳乃。すると上司から、自分たちにできることをこれからもサポートしてあげようと言われ、佳乃も気を持ち直します。
ある日、幸は付き合っている椎名から「アメリカに一緒に来てほしい。女房とは別れるから…」と言われます。幸は悩み、佳乃と千佳にその話をすることにしました。偶然その話を聞いてしまったすずは、以前幸に話した「奥さんがいる人を好きになるなんて良くない」と言ったことで、幸を傷付けてしまったのではないかと心配します。
翌朝、幸は祖母からもらった浴衣を、花火大会に行くすずにあげます。みんなの気持ちを知って気持ちの整理ができた幸は、椎名に「一緒には行けない」と伝えるのでした。
この日、すずは船の上から、そして佳乃は会社の屋上から同じ花火を見ます。花火を見た帰り、すずは同級生の男の子に、「自分はここで暮らして良いのかな…」と尋ねます。すずは、これまで自分の存在が周りの人たちを傷つけているのではないかと考えながら生きてきました。しかし幸たちと一緒に過ごし、周りの人たちからも愛され、少しづつではあるけれど傷を癒すことができているすず。家に帰ると幸たちは浴衣を着ています。そして、みんなで花火をして楽しみました。
夏の暑い日、幸はすずを連れて昔よく父親と登った山に登ります。そして頂上で幸は「お父さんのばかー」と叫び、すずは「お母さんのばかー」と叫びました。これからはもっと自分の気持ちをさらけ出すことを約束し、そして「ここにいても良いんだよ」と、幸はすずに伝えました。
それから四姉妹は、色々複雑なことがそれぞれあって敏感になり喧嘩をしたりもするけど、結局お互いの傷を癒せるのはお互いしかいないことに気付きます。そうやって普通の生活をしている間に、自然にそれぞれ持っている傷が治っていくのです。そして家族の気持ちも繋がっていき、すずも突然現れた妹というよりは本当の家族という存在になるのでした。
時間は流れ、二ノ宮おばさんの葬儀がとり行われます。病気で亡くなった二ノ宮おばさんの死を悼む四姉妹。その帰り、海岸に行って押し寄せる波を見て、「父親はダメ人間だったが、優しい人だった」と幸は語ります。「だってこんな素敵な妹を残してくれたんだもん」と父親を思う幸と佳乃、千佳。愛しい妹すずと一緒に、波で戯れるのでした。
以上、『海街diary』のネタバレあらすじと結末でした。
「海街diary」感想・レビュー
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映画 海街diaryは鎌倉で暮らす三姉妹の元に父の訃報が届き、そこで対面した父親の再婚相手の子供を迎え入れ四姉妹の共同生活を描いた映画。『誰も知らない』、『そして父になる』等の是枝浩和が監督・脚本を務め、主演となる四姉妹を綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが演じる。ずっとこの世界に浸っていたいと思ってしまうほど心地のいい空気をまとった映画「海街diary」。正直、観る前は主役の四姉妹の中で好きだと言える女優は夏帆だけで、「夏帆が観れるならいっか」くらいの軽い気持ちで観に行ったわけなんですが、観終わったころには四姉妹全員に心奪われてました。
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四姉妹の関係性の描き方やキャラクター毎の描写が素晴らしく、細かな動作や言葉遣いから、セリフの内容だけでは表しきれないものを表現していたと思うし、その細かな描写の数々によって、この四人の女優が本当に鎌倉に暮らしている本物の姉妹であるかのように感じました。特に今回は長澤まさみが本当に素晴らしかったと思います。天真爛漫な部分と生きてきた経験からくる大人な部分のバランスがとても見事で、ものすごく魅力的な女性として映画「海街ダイアリー」を彩っておりました。それと艶かしいその肢体にもやられました。長澤まさみって、あんなスタイル良かったんですね…。もちろん他の三姉妹もすごく良かった。綾瀬はるかの責任感バリバリのお姉さんぷり、夏帆の色気の欠片もない(長澤まさみと対極にいるような)天真爛漫さ、広瀬すずのこれからが楽しみになるピュアさ、どれもすごく魅力的でした。
それとこの映画 海街diary、基本的に四人一緒のことが多いんだけど、ところどころで四姉妹のうち二人だけになるシーンがあって、そこも見どころだなと感じた。特に印象的だったのは、綾瀬はるかと長澤まさみのシーン。現実の世界では、ライバル関係になるような二人だけに、映画の中のワンシーン以上のものを感じ、背筋がゾワゾワしました。あとは綾瀬はるかと広瀬すずのシーンも印象的と言うか、この二人は長女と四女であると同時に長女と長女の関係でもあるので、映画の肝となる場面が多かったように思いました。 あとこの映画 海街ダイアリーの魅力としては食べ物。この映画、食べ物がとっても美味しそうだった。もうちょっと言うと、食べ物を美味しそうに食べる四姉妹が最高だった。美しい女性が美味しそうにご飯を食べる映画はやっぱり最高だと思います。 -
海街diaryは話としては日本的な風習は正の側面(梅酒つけたりとか、浴衣を着て花火とか)は描けども、負の側面(世間体だ何だと言った習慣)はほとんど描かず、四姉妹とごく限られた周囲だけを描いているように感じました。(唯一世間体を持ち出そうとする樹木希林がすごい嫌な人に見えた。) そのせいか、この映画「海街ダイアリー」から日本的なものはあまり感じませんでした。ただその独特なものがないことによって、普遍的な話になっていると思うし、誰にでも(それこそ世界中の人に)伝わる映画になっているんじゃないかと思いました。この辺について良いか悪いかは別として、是枝監督のリベラルな思想が色濃く出ているのかなって感じはしました。逆に日本に住んでないとわからないという意味では、綾瀬はるかと長澤まさみの共演がそれにあたるんじゃないかなって気もしました。とりあえず映画「海街diary」はマストの一本なのは間違いないと思います。
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佳作。テレビ放送にも十分耐えうるようなエンタメ性ももっているし、それでいて、「家族とは?」「姉妹とは?」という、ある種根本的な箇所に対する問いかけもしっかりできている作品であると思う。
ただ、この作品の一番の楽しみ方として私が推奨したいのは、各女優の鑑賞図鑑として本作を捉える、というものである。もちろん、先に挙げたメッセージ性に焦点をあてても良いのだが、例えば是枝作品の他のもの(「万引き家族」「そして父になる」など)には見劣りするだろう。
それよりも本作、どう考えても四兄弟を演じる女優陣がとにかく素晴らしい。素晴らしく可愛く、素晴らしく美しい。例えば本作の導入は、長澤まさみの肢の接写カットからスタートする。女優美・肉体美という観点からも充分鑑賞に値する。奔放な役の長澤、しっかり者の綾瀬、スポーツ店がしっかりと似合う健康美人の夏帆、学生ライフ真っ只中の広瀬すず。現在の日本女優界のトップレベルの人たちがここまで魅力的であるのかということを嫌というほど感じさせられる作品であるし、それを学ぶ非常に良い機会とすることができる作品である。 -
四姉妹を演じる女優さん四人がとにかく、それぞれ個性的で素晴らしいです。今まで失礼ながら長澤さんの魅力がわからなかったのですが、私は女性でありながら、彼女のスタイルの良さや色気に圧倒されました。海の街鎌倉が舞台と言うことで、お洒落映画の要素もありますし、女性は特に好きなのでは?と思いました。家族ものには弱いのですが、今回もやっぱり込み上げるものがありました。
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特にこの作品は、最後に血のつながりとは、なにかと考えさせられる作品だったと思います。また四姉妹それぞれの悩みを抱えながらも、真っ直ぐ生きる姿勢に勇気をもらいました。こんなに綺麗な四姉妹はいませんが、夢の共演でファンの私は嬉しいかったです。
3姉妹全員懐深すぎです。悪い人がまったく出てこないので安心して見れます。姉妹の中で一番年上だってだけで母の父に対する愚痴を聞かされていた長女は、母のせいで子供時代を奪われた。そして、腹違いの妹の鈴も大人の都合で子供時代を奪われた、長女と共通する部分であったと思ったとき、長女が鈴を高台に連れ出し、ともに大声を上げたところはとても感動した。