君の名は。の紹介:2016年8月26日公開。映画「君の名は。」は新海誠が監督を務めるアニメ映画で前作「言の葉の庭」から3年ぶりの新作。東京に憧れる田舎暮らしの宮水三葉と東京の街で父と暮らす高校生の立花瀧。出会ったこともない2人がある日夢の中でお互いの身体が入れ替わっていることに気付く。戸惑いながらもお互いの生活を体験する2人、しかし、ある日を境にその入れ替わりは無くなってしまう…。主題歌はRADWINPSの『前前前世』。 公開3ヶ月で興行収入200億円を突破、邦画歴代2位の興行収入。中国やタイなど海外でも公開され歴代邦画興行収入トップを達成。「君の名は。」は、JJエイブラムスによるハリウッドでの実写映画化も決定しました。
監督:新海誠 声優:神木隆之介(立花瀧)、上白石萌音(宮水三葉)、長澤まさみ(奥寺ミキ)、市原悦子(一葉/祖母)、成田凌(勅使河原克彦)、悠木碧(名取早耶香)、島崎信長(藤井司)ほか
映画「君の名は。」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「君の名は。」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
「君の名は。」予告編 動画
映画「君の名は。」解説
この解説記事には映画「君の名は。」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「君の名は。」のネタバレあらすじ 1
本屋も、遅くまで開いてるコンビニも、おしゃれなカフェもない岐阜県の山奥、糸守町に住む高校生の宮水三葉。高校生活と自身の家系である神社の巫女をやりながら大都会東京に思いを馳せていた。
ある日、目が覚めると一緒に暮らす祖母と妹の四葉がおかしなことを言っていた。昨日の三葉の様子がおかしかったというのだ。三葉の友人である勅使河原ことテッシーと早耶香もまた同じことを言っていた。よく考えれば三葉自身、昨日のことをあまり覚えていなかった。そして三葉のノートには見覚えのない言葉が書かれていた。「お前は誰だ?」。
何も思い出せないまま夜、三葉は四葉と共に巫女の儀式を行っていた。宮水神社の娘として育った三葉は高校生と巫女という二足の草鞋を履いていた。思春期の女の子には同じ学校の生徒に、儀式である口噛み酒を作る姿を見られるのは耐えがたかった。そのため三葉は思っていた。来世では東京のイケメン男子に生まれたいと。
「君の名は。」のネタバレあらすじ 2
ある日、三葉が目を覚ますといつもと違う光景に戸惑った。見たことのない部屋、空気、そして身体には有るはずものが無く、無いはずのものが有った。見知らぬ男の子の姿になっていたのだ。夢だとは思っていてもあまりにリアルなその夢に三葉は流されるまま身支度をし、迷いながら彼の通っている高校へと辿り着いた。それはかつてから三葉が憧れていた東京での生活だった。そして友達に誘われるまま憧れのカフェへと行き、夜は彼の働いているアルバイトへと行き、いつまで続くのか分からない夢の時間を過ごした。
その頃、東京で暮らしているはずの高校男子・立花瀧もまた見知らぬ土地で目を覚ました。見知らぬ部屋、見知らぬ声、その身体には二つの胸。ついつい胸を触っている所を、突然部屋を開けた小さな女の子に見つかってしまった。それはこの身体の持ち主の妹、四葉だった。
それを機に都会に住む瀧と田舎に住む三葉は度々その身体を入れ替わることとなった。その入れ替えタイミングは決まって寝た後、そして頻度は週に2~3回ほど。この入れ替わりが続いた2人は、これが夢ではなく現実の出来事だと気づき、お互いの行動に約束事を決め、なんとか二人の入れ替わり生活を保とうとした。
「君の名は。」のネタバレあらすじ 3
三葉、瀧、お互いの名前も姿も知りながら会うことは無い二人。戸惑いながらも二人はその生活を楽しんでいた。三葉は東京での生活を満喫したり、瀧のアルバイト先の先輩である奥寺先輩との仲を深める。一方の瀧も田舎での高校生活で一目置かれる存在となり男女問わずモテるようになる。
ある日、三葉に入れ替わっていた瀧は、祖母と四葉と一緒に宮水神社のご神体へ口噛み酒を奉納に行く。その際、祖母から「口噛み酒はあんたらの半分なのだよ」と言われるが意味は分からなかった。
ある朝、瀧のスマホが鳴る。それは奥寺先輩からのメッセージで、その日デートをすることになっていた。それは三葉が瀧に入れ替わったときに立てていた予定だった。1日が終わりデートはイマイチな結果だった。ずっと頭の片隅に三葉のことがあった瀧は、スマホにある三葉の電話番号にかけてみるも繋がることはなかった。三葉はそのデートが気になり、学校を休んで東京へと向かう。
しかし東京で出会ったのは、三葉のことを知らない様子の瀧だった。別れ際、三葉は自分の髪に結んでいた組紐を瀧に渡して去っていきます。(2人の過ごしていた時間には3年もの時差があった。2016年の瀧と2013年の三葉、2人は時空を超えて身体の入れ替わりが起こっていたのです)。
二人の入れ替わり現象はそれ以降ぱったりと無くなってしまいます。三葉が学校をさぼった次の日、心配したテッシーが電話を掛け、夜の宮水神社の祭りに誘います。そこでテッシーと早耶香は三葉の衝撃的な姿を見てしまう。いつも三つ編みをしていたその髪をばっさりと切っていたのだ。三葉に何があったのか見当も付かない二人だったが、その夜、糸守町は祭りで盛り上がった。そしてしばらく前から地球に接近すると話題になっていたティアマト彗星が夜空で煌々と輝いていた。
「君の名は。」のネタバレあらすじ 4
体の入れ替わりがなくなった瀧は、ある風景の絵を描き続けていた。それは少し前まで瀧が三葉の身体を通して見ていた景色。まるで心を奪われたかのようにひたすら描き続けていた。
ある日、瀧はその何枚もの絵をカバンに詰め込み、駅へと向かった。あれ以来音沙汰も無くなってしまった三葉を自らの手で探そうと岐阜へ向かおうとしていた。駅で待っていたのは友人の司とバイト先の奥寺先輩。二人は様子のおかしかった瀧を一人には出来ないと付いてくると言い出した。しかし瀧の持つ手がかりは彼の描いた絵だけだった。その絵を頼りに聞いて回るしかなかった。
岐阜の飛騨のどこかではあることは分かっていたが、結局それ以上は何も分からないまま日が暮れようとしていた。しかしたまたま入った高山ラーメンのお店でその絵の風景を知る人物と出会うことになる。ラーメン屋の店主がその絵に写る町の出身だと言うのだ。それは糸守町という場所。しかし、そこは3年前の2013年にティアマト彗星の破片が落下し、糸守町ごと消滅していた。今はもう誰も住んでいないのだと言う。
「君の名は。」のネタバレあらすじ 5
衝撃の事実を知った瀧はすぐにその災害事故に関する資料を調べた。そこには3年前の悲惨な彗星落下事故、そしてその事故による犠牲者の名前が載っていた。500人以上にも及ぶその事故の被害者の中には、勅使河原と早耶香の名前と共に三葉の名前が載っていた…。三葉は3年前に死んでいたのだ。
しかし瀧はほんの2~3週間前に三葉と繋がっていた。どうしても諦めきれない彼は次の日の朝、司と奥寺先輩を残して、一人ある場所へと向かった。そこはかつて瀧が三葉の身体に入れ替わって訪れた宮水神社のご神体がある祠(ほこら)。この世とあの世の境があるという三葉の家系にとって大切な場所だった。
そこで口噛み酒を口にする瀧、これを飲めばまた三葉と会えると思ったのだ。そして立ち上がろうとしたときに足を滑らせてしまう。瀧が目を覚ますと、そこは見覚えのある三葉の部屋だった。そこへすぐに一人の女の子が顔を出す。三葉の妹・四葉だった。瀧は戻ってきたのだ。瀧の目的はただ一つ、三葉と糸守町の人達を助けることだった。今夜は宮水神社の祭りがある、あのティアマト彗星が落ちてくる日だった。
「君の名は。」のネタバレあらすじ 6
糸守町の人たちは、瀧と入れ替わった三葉が逃げろと言っても誰も聞く耳をもたなかった。祖母も父親でさえも。しかし友人達は協力してくれるという。そこである計画を立てた。発電所の爆破、それに伴い緊急放送をかけるのだ。強引な手段だったがやるしかなかった。糸守町の人たちの命が掛かっていたのだ。しかし事は上手く運ばなかった。
こんな時、本物の三葉の言葉なら聞くのだろうか、そう考えた瀧はあの祠を思い出した。今ここに自分がいるのなら、あの祠には瀧の体に入った三葉がいるのでは。テッシー達に計画を進めさせ、祠に向かう瀧。
その時、三葉は再び瀧の身体で目を覚ました。何故自分がこの祠にいるのか分からなかったがそこから出て町を見下ろした時、全てを悟った。そこは瀧のいる三年後の糸守町。町は彗星衝突により跡かたもなかった。そうだ、自分はあの日死んだんだ。その時どこからともなく瀧の声がした。そしてそれに応える三葉の声を瀧は聞いた。二人は違う時代にいた。しかし姿は見えなくともその存在を感じることはできた。
そしてある時間、黄昏時(かたわれ時)、二つの時代が重なるこの時に二人はお互いの姿を認識することができた。短い時間ながらも、たしかにお互いの存在を確認した二人、そして瀧はその想いを三葉に託した。二人はお互いの名前を忘れないようにと、三葉の手に瀧が名前を書き、三葉が瀧の手に名前を書き始めた瞬間に黄昏時(かたわれ時)は終わった。
「君の名は。」のネタバレあらすじ 7
三葉は自らの身体に戻り、瀧の想いを受け継いで糸守町の人達の避難を急いだ。しかし町長を務める父の元へと向かう途中、三葉はつまずき転んでしまう。その時すでに夢で出会った彼(瀧)の名前も思い出せなくなっていた。入れ替わりが終わると相手の記憶がすぐに消えてしまうのだ。たしかに存在する彼の名を、たしかに会った彼の名を。「あなたの名前は?」。
しかし三葉は諦めなかった。ぎゅっと握られたその手には彼の名が書いてある。そこに存在するはずなのだ。しかしその手には名前は書かれていなかった。ただ一言『すきだ』そう書かれていた。三葉は立ち上がり、再び走った。やっと役場についた三葉、町長室には祖母と四葉もいた。その後、糸守町にはティアマト彗星が落下してしまう。そして糸守町は壊滅した。
「君の名は。」の結末
山の上で一晩を過ごし、目を覚ました瀧。しかしなぜそこにいたのかも、なぜ司と奥寺先輩と別れて帰ったのかも覚えていなかった。その日から5年という年月が経ってからも、ある事故のことに妙に惹かれていた。それは8年前に彗星がある町へと落ちたという事故。
その町では奇跡的に彗星が衝突する寸前に町長の指示で避難訓練が行われていて、町の壊滅から住人は被害を免れたという。しかし自分が何を探しているのか、それすらも分からず、ただただ毎日を就職活動に追われていた。
ずっと誰かを探している。そんな気がしてならない瀧はある日、電車の中からその出会いをする。乗り込んだ電車の向かいの電車、そこに一人の女性がいた。その女性もこちらに気づきハッとする。そう、彼女こそ探していた人だった。二人はすぐに電車を降り、お互いを探しあった。そして見つけた。名前は知らない、知るはずの人。「君の名前は?」
以上、映画『君の名は。』のネタバレあらすじと結末でした。
「君の名は。」その後
『君の名は。』のエンディングは、三葉と瀧が電車ですれ違い、次の駅で降りてお互いを探します。そして、とある街中の階段で三葉と瀧が再会しますが、お互いに気にはなっていても誰だか分からない状況で、「君の名前は?」と聞くシーンで映画は終わります。君の名はのその後、後日談などについては映画や原作でも描かれていないため、君の名はのその後に関しては様々な憶測が飛び交っていますが、三葉と瀧はその後付き合って結婚したのではないかなど、視聴者の願望が含まれるものが多くなっていますが、実際には三葉と瀧は結婚もしていませんし、ハッピーエンドにもなっていません。新海誠監督自身も「君の名は。」のその後については、皆さんが想像してくださいと言っています。また、「君の名は。」の後日談や続編の制作は無く、これで一つの物語として完結しているということです。「君の名は。」はハリウッドでの実写映画化も決定していますので、その中で「君の名は。」の後日談やその後が描かれる可能性はあるかもしれません。
「君の名は。」ロケ地・聖地
『君の名は。』の聖地ですが、瀧は東京都、三葉は岐阜県飛騨地方に住んでおり、それぞれの街並みも美しく描かれています。映画『君の名は。』で聖地として登場する糸守町のモデルは岐阜県飛騨市だと言われています。また、監督・新海誠の出身地は長野県ということもあり、劇中の湖のモデルになったのは、長野県の諏訪湖だと言われています。瀧が三葉に会いに糸守町を訪れるシーンはJR飛騨古川駅の実際の風景と全く同じで、駅周辺の住宅などの街並みまで細かく再現されています。その他のシーンでも飛騨が舞台として数々のスポットが登場しています。また、瀧が住んでいる東京では、四ツ谷駅周辺が良く登場します。瀧が奥寺先輩と会うのは四ツ谷駅が多く、JR信濃町駅付近の歩道橋も何度か登場しています。
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「君の名は。」感想・レビュー
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新海誠監督作品。文句なしの星5つ。監督の特色でもある映像の綺麗さ、緻密さでいうと『言の葉の庭』の方が上だと思うが、作品の完成度でいうと完全に本作「君の名は。」の方が上だった。 東京の男子高校生と田舎の女子高校生の入れ替わりから話はスタートする。 よくある展開かなーと思いながら、見ていったのだが全然よくある展開ではない。 2時間弱の映画だが、一度もダレることがなかった。 主演の声優二人は入れ替わりがとてもスムーズで良かった。ほんと上手。 音楽も良かった。正直劇中歌として意味不明な部分もあった。だが、この映画とマッチしていた。 「君の名は。」ラストシーン。多分もう何年も何度も組み紐の女性に視線を奪われていて、その度に何かがあると思っていて、でも、それにどんな意味があるのかを忘れていて、声をかけるのはおかしいと思って逡巡の末にそのまま声をかけずにいたんだろう。その上でのあのラストシーンは、本当に良かった。 二人に幸あれ。
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新海監督の作品は昔から見ている。全体通して見て思ったことは、「新海監督が変わったというよりは、むしろ、社会が新海監督を受け入れたのだ」と言う方がいいと思う。別に新海監督がおもねるようなことをしたわけではない。新海監督は、新海監督だった。全体的な甘さ、中高生のポエムのような言葉、このあたりが変わるわけではない。ストーリーも、各所で指摘されているようにムチャクチャだ。エヴァやシンゴジラのような圧倒的情報量と整理があるわけではない。まどマギのような計算されつくされたストーリーがあるわけではない。物語は破綻しているし、細部は詰められていない。口噛酒を飲んだらタイムリープと入れ替わりができる理由もわからないし、なぜ記憶が消えていくのかいまいちピンとこないし、「え、なんで?」と思うけど、その展開を疾走感でひたすら薙ぎ払っていく。最後、二人の邂逅で終わるのだけど、やっぱり新海作品じゃないかよーと思う展開だった。そしてそれが受け入れられて、この大ヒットになっているんだなと思った。主人公が3年前に消滅した隕石災害の村を見るシーンはよかった。自分の入れ替えわりをしていたヒロインが、実は3年前に災害で死んでしまっていた女性だったとわかるシーン。犠牲者名簿を見て、ヒロインの名前を見つけたシーン。死んだ人は戻ってこない。予告ではポップにただのとりかえばや物語かと思いきや、実は既に死んでしまった人だったという悲劇。そして、その悲劇を避けるために、歴史改変を試みる。インタビューでもあるけど、ここでは明らかに東日本大震災が意識されている。死んだ人は戻ってこない。どうしても東日本大震災になぞらえてしまう。2万人近い死者が出たこの災害と同様、三葉も戻ってこない。 観客にはそれが強くインプットされるのだ。前半のポップな内容からは一転して、どうにか災害を避けられないか、奔走していく様子が描かれる。そして我々は思うのだ、三葉が、助かってほしいと。東日本大震災で死んだ2万人と同じように、本当は戻ってこない。分かっている。現実ではそれはよくわかっている。でも、せめてフィクションの中では助かってほしい。そんな甘い夢を見たい。そして、新海監督の甘さはそれに答えるのだ。真夏の夜の夢。邯鄲の夢。胡蝶の夢。エンターテイメント。みんな助かった、というラストにすることは、企画段階から決めていたと監督はインタビューで答えている。観客と監督の答えが一致して、最後は新海節で終わる。それでいいじゃないか。そういう映画だった。
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映画『君の名は。』は「ほしのこえ」で映画デビュー、「秒速5センチメートル」や「言の葉の庭」など、映像詩とでも言うべき美しいアニメーションを生み出し続ける新海誠の最新作。今回は、東宝の夏休みアニメとして、これまでにない規模の大作になっています。キャラクターデザインは「心が叫びたがっているんだ。」の田中将賀。印象的な主題歌はRADWIMPSが担当しています。映画『君の名は。』は、新海誠の集大成にして最高傑作と言っていいでしょう。新海誠作品ならではの息を呑む程に美しい美術、コンピューター作画ならではの光と陰の演出に3Dカメラアングルによる大胆な構図に、「言の葉の庭」でも見せた美しくも精緻な雨の描写など、ビジュアル面の美しさと完成度は、2Dアニメとしては最高レベル。『君の名は。』は物語の方も、“男女の入れ替わり”と言う「転校生」以来のお馴染みの展開に始まり、音楽に乗せた軽妙な青春コメディ路線を見せて行くけれど、中盤で大きく転換。予想外に壮大な物語を描いて行きます。得意とする映像美と、SF志向を無理なく見合わせたバランスもよく、この物語には圧倒されました。その中で描かれる、これまた新海誠らしいすれ違い――それも時空を超えて、と言うのは――これは「ほしのこえ」以来、新海誠が描いて来たテーマですし、その時間に隔てられた絶望的なすれ違いと届かぬ思いを、気持ちで超えた出会いのシーンの鮮やかさと、その後に訪れるクライマックスのカタストロフを唐突に切った辺りも潔い。そして、その後のエピローグこそ、真のクライマックス。これまた余韻を残してすぱっと切った鮮やかさ。「秒速5センチメートル」以降、PV風と呼ばれる音楽と映像の組み合わせだけど、本作『君の名は。』では完成度が極めて高く、音楽によって展開を早め、あるいは情感を盛り上げる、その手腕はこの種の演出を得意とするハリウッド映画にも引けをとりません。ただ、クライマックスで台詞と歌詞が被る辺りはちょっと気が散った感もありますが…… 映画『君の名は。』で主演の2人の声をあてていたのは、声優としてのキャリアも十分な神木隆之介と、「舞妓はレディ」で言語能力の高さを証明した上白石萌音で、これまた本業の声優並に見事なもの。また、鑑賞後の館内では「このキャストのまま実写で観たい」と言う声も出ていてそれはなるほど、と思いました――まぁ、あの“世界”はアニメじゃないと描けないだろ、とも思ったけど…… あと、奥寺先輩役は長澤まさみなのだけど、声に艶があっていい感じだなぁ…… 映画『君の名は。』はもう、今年のアニメベスト作品はほぼ確定、映画『君の名は。』はアニメ史上でも屈指の傑作ではないでしょうか。
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「君の名は。」は新海誠監督が描き続ける男女の擦れ違いの集大成ここに在りという出来でした。今年の泣ける映画No.1だと思います。主人公の立花瀧と宮水三葉の配役は普通に違和感はなく、それよりも自分は長澤まさみ(奥寺ミキ)に惹かれましたね。こういった姉御キャラはさすがにうまいです。始めの方を見て、ジブリや「時かけ」・「サマーウォーズ」、「あの花」・「心叫」が混ざったような映像だと思いました。制作している人達がそれらに関わっていたので納得でしたが、もう1つ感じたことがありました。それはこれまでの新海誠作品のオマージュ作品ではないのかと。『言の葉の庭』のユキちゃん先生が出たときは「ファンサービスだなぁ」と思っていたのですが、スマホを使ったやりとり、夢を見るという設定、バイトに明け暮れる日々、スケッチに熱心に描きこむ姿、擦れ違って振り返るシーンなどを見ていて、「あぁ~、過去の作品のあのシーンに似てるかも?」と思うことがありました。「自分がやりたいことを全部詰め込んでほしい」と言われた監督がそれを実行した感じが存分に伝わってきましたね。そして、「君の名は。」ではこれまでと違う新海誠を感じました。1.笑いやユーモアが盛り込まれたこと 2.映像美よりストーリー性を追求したこと 3.ハッピーエンドであること。1は過去の作品でほとんど見られず、シリアスな主人公が多かったので、新鮮でした。 2はストーリーは長編でもあったためか、これまでのような主人公の心情を深くえぐったようなことはせず、わかりやすいストーリーに終始していたと思います。物語のキーになる言葉やアイテムがあったのも特徴でしたね。 そして3はこれまでとはっきりとした違いでした。おそらく本作「君の名は。」は大衆に受け入れられる為の作品を創り上げたのだと思います。新海誠監督による日本のアニメ映画監督としての地位を確立するために。キャラデザを人気の田中将賀にしたのも、音楽をRADWIMPSにしたのも、声優を俳優にしたのも突き詰めるとそこに行きつくと思います。「君の名は。」は大ヒット間違いなしで、それを見事に実現することができたわけです。素晴らしいですね。「君の名は。」はTVシリーズにしても楽しめると思ったので、1年後ぐらいにTVシリーズとして追加映像も踏まえて実現してほしいですね。
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中盤から終盤にかけて何度も泣かされました。タオル持っていっておいて良かった。感想を一言で言うと「切ない」 基本的には多くの人が語っているように大林監督の「転校生」×細田監督の「時をかける少女」って感じです。男女入れ代わりと時間、距離の隔たりの男女の恋。個人的には、最初のモノローグは折原みとの「夢みるように、愛したい」の世界観だな、と思いました。こういう笑いと切なさの混在する作品大好きです。不変のテーマを現代風にアレンジし、ファンタジックな要素も神社と彗星を使って自然に感じられるよう構成されていました。時をかける少女や夢みるように~と違って、切ないまま終わらないのも満足感がありました。(2作品はその切なさが堪らないのだけれども)そして伏線回収がスッキリ。プロローグ的な部分が、後半に繋がってくるので、全部見たあとにもう一度確認のために見たくなります。複数回鑑賞を狙った上手い作り。絵柄は噂通りとても綺麗。写実的な風景によるリアリティーと、崩した人物によるコミカルさのバランスが良かった。作画監督は「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」を手掛けた方で、キャラデザが「あの花~」の方ということで、さすがの一言。 プロデューサーは「電車男」や「バクマン」の人。文字情報が画面に沢山出てくる演出が似てました。テンポの良さも。飽きさせない展開、現代の日常にプラスファンタジー、王道のテーマでとても良いエンターテイメント作品となっていて面白かったけど、万人受けするのかは少し疑問。低年齢のこどもはこれ見てどの程度感情移入できるのか。楽しめるのか?青春から遠ざかったアラフォーはノスタルジックに浸れるところが最高でしたが。ポスト宮崎ポスト細田という記事も見ましたが、興行収入100億円突破も、強力なリピーターの力があるので、ジブリ作品とはまた違うところにある作品だと思います。初期ジブリは年齢問わずの作品。世界観も方向性も違う。何だかんだ言っても、10年前に時をかける少女を観たときの衝撃再び、の満足いくアニメ作品でした。
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今まで映画の文脈においてはシーケンシャルに、時制の上ではパラレルな関係であった二人が、場所を乗り越え、時空を超え、初めて出会うあの瞬間こそは、身悶えするほどロマンティックに刺激的だ。そして耽美だ。と、僕は思う。この映画が面白い理由は主に2点。
① メインディッシュオンリーのフルコース型である
② 川村元気のプロデュース力恐るべし、である
この映画に感動しなかった人はきっとこんな人。
③ そもそも「セカイ系」インポテンツである
④ いわゆる青春から完全に卒業しており、今生きる世界が現実的であるため、脚本の粗が許せない人である
① メインディッシュだらけのフルコース型である
現代映画らしく速い展開で、日本人が大好きな複数のテーマを扱う。これがこの映画の最大の魅力であると思う。 映画序盤は、男女入替モノ。そこから『時をかける少女』などの時代タームワープモノ(僕は同時に『ある日どこかで』(1980)なんかを思い出したりしました)。『ディープインパクト』などのような隕石落下モノ。ノスタルジーモノ。成長モノ。『サマーウォーズ』のようなチーム作戦モノ。 それぞれ1要素でもあればそれだけで1本の映画になってしまうようなメインディッシュクラスのテーマを、観客が飽きないよう速い展開でささっと提示してくるので、観ていて飽きないどころかハイテンションのまま120分を駆け抜けます。 僕はそれがこの映画の面白さの根幹だと思うのです。刺激物ばかり見過ぎて脳が破壊される感じに近い。肉料理だらけのフルコース? 基本的には、主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性を描いたいわゆる「セカイ系」です。 上手いなーと思うのが、セカイが崩壊した後、おそらくその対義語の部類であろう「社会」に、主人公のベクトルが向かう。 それは日本で生きている20代の社会人であればその大半が経験した脱皮。(さらにはポスト311の文脈も絡み、観客は一層リアリティを感じるのだと思う) セカイが青春真っ最中の少年少女しか見ることができない彼らの特権であるならば、この映画の着地は青春からの脱却であり、20代~30代以上からも熱烈に支持される切なさを描いているような気がします。これだけ幅広い層から支持されると、社会現象になりますわな。
② 川村元気のプロデュース力恐るべし、である
この映画の前提にあるのが、言わずもがな映像美だと思います。冒頭のシーンから印象的に美しい。 作画監督は安藤雅司。この辺は僕のような一見さんではなく、通の方、もしくは実際のご鑑賞をおすすめします。 あとはRADWIMPS。この人たちの曲をまともに聞いたことなかったので、鑑賞前からかなりの不安がありました。実は。 オープニングテーマや途中の掛け合いのシーンで流れるギターロックを聞いて、曲の自己主張具合が鼻につきました。正直。 しかし後半は、歌詞と映画の内容がシンクロするクライマックスは「ああ、これがしたかったのね」という納得のコラボ。 いわゆるMV的とも捉えられるくらい曲が中心に据えられる。BGMではなく、まるで脚本かかれている演者のよう。 好みではないが、多くの人を虜にする魅力は感じました。 ここまでではないにしろ、EDが印象的だったなーと思い出したのが『バクマン。』。このプロデューサーは川村元気。やはり恐るべし。
③ そもそも「セカイ系」インポテンツである
セカイ系に対し、そもそも不干渉の人は多い気がしています。特に30代以上。 若者の中二病加減に嫌悪感を示す人もいれば、④の人もいる。これは人それぞれ。というか好みの問題じゃ。
④ いわゆる青春から完全に卒業しており、今生きる世界が現実的であるため、脚本の粗が許せない人である
「現実はこんなにキラキラしてないよ」と思ってしまう人。そんなこと言いだしたらすべての映画の卓袱台をひっくり返しているようですが、この作品はアニメだけあって、超キラキラしている。ひたすらキレイ言です(これ実写でやったらきついぜ)。 セカイから社会に落ち着く分、セカイからひきずっているキラキラと、今僕たちが生きている社会の厳しい現実の間のギャップに違和感を覚える人も多いのでは? そこに疑念を覚えてしまうと、①のフルコースであるが故の矛盾、脚本の祖語、粗を許せないのはすげーわかる気がする。 セカイと社会を含めたこの映画の世界観に全て受け入れられるのであれば、細かい脚本の粗は気にならない。むしろよくこれだけの壮大なてんこ盛りを120分に収めたね。って感じ。 -
日常生活では味わうことのできないタイムスリップという体験をすることができる作品です。
若かりしころの青春時代を思い出して温かい気持ちになることができます。
また、そんじょそこらのアニメと比較しますとグラフィックがとてもきれいで、その点だけでも十分に楽しむことができる作品です。 -
映画館の予告で映像が素敵だなとは思っていましたが、まさかここまでヒットすることになるとは、その時は夢にも思いませんでしたね。よくある男女の入れ替わりものと高を括っていたのですが、タイムスリップを織り交ぜて先が読めない展開にしたのは、新海監督の素晴らしいセンスでしょう。いい歳のおじさんまできゅんとさせてしまうこの作品。とってもおススメです。ちなみに久々に映画館で二度も観た作品になりました(その後飛行機の中で観たから計三回か・・・?)
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個人的事情で映画は見ていません。テレビ初放送とありましたので見ることができました。ノーカット版とはなっていませんでしたので映画より短いので映画を見た方には的外れの感想でしょうがご容赦を。皆さんが賞賛されるように面白い作品でした。見終わって、なぜこの現象が起きたのか、なぜ隕石が3回同じところにおちたのか、、、、。とても気になりました。そこで自分なりに想像してみました。ここからは市原さんの声で想像しています。むかーし、むかし、人間の時間で2400年前、人間が八百万の神と呼ぶものにちかい存在がありました。性格の悪い彗星がゴミをポイ捨て、糸守へ落ちました。糸守が注意すると無視して行ってしまいました。これをファーストインパクトと呼びます。糸守はそれからクレーターを湖に変えました。そこに人間が住み着きました。しばらくして彗星が逆恨みしていて次に通る時にまたポイ捨てしてやる、と言っていることを知り合いから教えてもらいました。糸守には隕石の軌道を変える事は出来ません。人間を守るために神主の娘が生まれる前にミトコンドリアの遺伝子を時間軸を移動できる能力を持つようにしました。1200年前、政治は神のお告げで行われていました。セカンドインパクトの日、巫女が突然、男言葉で「我は神なり、これより天空より地上に降り立つなり、離れて我を待て」、神主は住民を移動させました。隕石の落ちた所は御神体となりました。それからは神降臨の日としてお祭りが行われるようになりました。それから1195年、神主には政治力は有りません。存在は妻を医療の不備で失った神主に町長選で医療改革を訴えさせた。5年後、巫女の話を聞いた町長(元、民族学者、神主)は御神体の天井画(昔、調査に入っている)、由来の記録の失われた祝詞から祭の由来と隕石の落下を確信し住民の避難を命令した。(存在の力で友人、町長が巫女の言葉を信じやすくなっていた。)そしてサードインパクト。その後彗星は体重の減少で軌道が変化して2度と糸守に会う事は無かった。めでたし、めでたし。この神話を元にアニメが創られたそうです。 いかがでしょうか?
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聖地巡礼も流行った一大ムーブメントを起こした作品でしたね。都会と田舎の高校生が夢の中で入れ替わりながら進むストーリーと美麗なグラフィックが話題でしたが、その美麗な映像を忘れさせれてくれる程、中盤〜終盤にかけてはストーリーが急展開。物語にのめり込んでしまいました。隣で嫁さんは号泣。想像してたよりも面白かったですね。
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ヒットしてからやっと観に行くことができました。
2人が入れ替わる、それだけ予告では知っていましたが、想像以上に奥深い話で、あんなに感動してしまうと思いませんでした。
旦那は横で号泣。
時空を超えた作品はやっぱり面白い! -
体が入れ替わるということは前情報で知っていましたが、具体的にどういった話なのだろうと興味を持っていました。主題歌の歌詞に「前世から僕は君を探していた」とあるので、てっきり前世がかかわってくると思っていたのですが、それもよい意味でのミスリードとなりました。最終的に2人が出会うのだろうということは予想がついていましたが、「まさかこんな話だったとは」と良い意味で期待を裏切られる。アニメ化してもっと長い話を見たいと思いましたね。
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超リアリストの俺には、このようなイリュージョンの羅列のような映画は無理だと思った。
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涙が止まりませんでした。「瀧君、瀧君、瀧君・・・」と何度も彼の名前を呼びながら、糸守の町民たちを避難させるために走る三葉。途中で転んでしまい、とうとう彼の名前も思い出せなくなっていしまいます。彼の名前を思いだそうと手のひらを見ると、そこには「すきだ」の文字が。その瞬間がグッときました。瀧君が一番に伝えたかったのは名前なんかよりも三葉のことを好きだという気持ちだった。瀧君はこの気持ちを三葉に一番伝えたかったんだと、胸がきゅーんとなりました。このシーンは何度見ても感動してしまいます。最後に電車ですれ違うシーン。瀧くんと三葉がすれ違いざまに目が合うシーンでは私も一緒にハッとしてしまいました。(映画の中に入り込んでました)それぞれ反対方向に進む電車。お互いに次の駅で降り、走り出します。お願い、急いで!二人とも走って走って!こっちだよ!!と画面に向かって叫びそうになりました。やっと二人が出会って「君の名は。。。」と互いに呼ぶ。最後の最後までドキドキが止まりませんでした!
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本っ当におもしろかった。おもしろすぎて十回ぐらい見た。続きが見たくなった。
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作中にキーアイテムとして、三葉が身に着けている組み紐が登場する。それは彼女が祖母から伝えられている伝統工芸であると同時に、組んでいかれる糸そのものが、人と人が関わる事で連綿と紡いでゆかれる歴史を可視的に表しているように思える。またその組み紐は、三年ずれて入れ替わっている三葉と瀧を繋ぐアイテムとして、三葉は髪を結うのに使い、瀧はブレスレットのように手首に巻いているなど、印象的に描かれている。
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この作品を無理って人がいるのもわかる。自意識ライジングのセカイ系でツッコミどころ満載だし。設定が破綻してるとか言いなさんな。印象派なんだからさ。
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すっごい良く出来てると思うけど、観終わった後に空虚な気持ちになってしまいました。
というのもあまりにご都合主義過ぎるから。
よくお話のウソはひとつだけというが、今作は三葉の不思議な力という点だけであるべき。
まず東京の見知らぬ瀧くんを選んだ理由が全くない。(東京のイケメンなら誰でも良かった?)
瀧くんが転んで三葉に入れ替わった所にもロジックもルールも何もない。
ただご都合でそうしたかっただけ。
いやこれらは絶対に理屈付けが必要な部分でしょう。
こうなってくると「魔法の力で全て解決」でも同じやんと。
なんか自分の好きな映画は細かな矛盾点とかで叩かれまくるのにこの映画だけ皆甘々評価で楽しんでるのがなぁ…
ビューティフルドリーマーみたいに理屈のない後出しルールで話が進んでく感じ。
皆さん一般的な実写映画を酷評するほど賢いんでしょう??
漫画的な人間描写とやたらリアルな世界観もちぐはぐだし、映画先進国の欧米でウケてないのも分かる。 -
一つだけどうしても気になることがあります。最後三つ葉と瀧が再開するシーンの三つ葉は瀧よりも3歳年上ということでしょうか?
この映画のポイントはやはり新海誠監督特有の鮮やかな画面に尽きると思います。「かたわれ時」の空の複雑な色や、空から降ってくる彗星、夏の山を引き立たせるすがすがしい青空……どれをとっても見事です。
ストーリーは王道ですが、考察できるようなポイントが多くあるので、好きな人は好きな内容だと思います。
RADWINPSの音楽が物語に合わせて流れるので、感情を刺激されます。ロマンチックで感動したい時におすすめです!